ママは私を捨てたんじゃない。リリィの愛をさがす旅
* * * * * * * *
1964年。夏。
14歳のリリィ。
彼女は幼い頃、自分のせいで母親を亡くしています。
家出していた母が家に一時戻ったときに、父ともみ合いになり、
そのとき、幼い彼女が母に渡そうとした銃が暴発してしまったのです。
母親を亡くしただけでも痛手なのに、
過失とはいえ自分の手で母を殺めてしまった・・・、
このことは、彼女の大きな心の傷となって残っているのです。
そんなことがあったためか、彼女は父親ともうまく行っていない。
娘に対してすっかり心が冷えた父親は、
「お前の母親は、お前を捨てて出て行った。
あの日は、荷物を取りに来ただけ」、と告げるのです。
ほとんど母親の記憶がないリリィは、
しかし、「母親は自分を愛していた、父の言うことはでたらめ」
・・・そう信じたい。
ある日、彼女はわずかに残された母の手がかりを頼りに、
ティブロンという町へ向けて家出をします。
さて、このストーリーの舞台がこの年代というのにはわけがあります。
このストーリーは、黒人への人種差別をもう一つのテーマとしているのです。
この頃、公民権法が制定され、ようやく黒人にも選挙権が与えられた。
様々な差別も法により禁止され始めたのです。
ところが、法律ができたというだけで、
特にこのアメリカ南部では相変わらず、黒人への偏見や差別が根強くある。
それにはまた、公民権法によって更に黒人が白人の憎しみを買ってしまった、
という側面もあるようです。
リリィの家の黒人家政婦ロザリンは、
選挙人名簿の登録に行こうとして、暴漢に襲われてしまいました。
リリィは、このロザリンと家出を決行します。
さて、たどりついた場所はボートライト家。
黒人の三姉妹が住んでいました。
長女のオーガストは養蜂家。
ミツバチを飼い、はちみつを売って生活しています。
オーガストは素性のはっきりしないこの二人を快く受け入れ、
リリィに養蜂を手伝うように言います。
このオーガストが、クイーン・ラティファ。
なんと、先日「ラスト・ホリデイ」で、見たばかりなんですよ。
まったく意図したわけではないのに、同じ俳優を連続してみてしまう・・・、
こういうこと、時々あるんですよね。
不思議です。
この映画では、このクイーン・ラティファが、
素晴らしく存在感がありまして、
どっしりと包容力があり、そばにいるだけで安心できる。
なるほど、結局「ラスト・ホリデイ」も、最後はそういう役どころでした。
彼女自身に、そういう雰囲気があるんですね。
ある日、リリィは黒人の男の子と映画を見に行きます。
映画館の入り口が、白人用と黒人用に分かれていて、もちろん席も別々。
でも、リリィは一緒に黒人席へ行って映画を見ていました。
ところがそれを見た白人たちは、彼を攻め立て、乱暴しようとする。
全く、理不尽な差別です。
64年といえば、すでに私も生まれていて、そう昔ではない。
(え?相当昔ですって?)
こんな時でも、まだこんな風だったんですね・・・。
だから、このたびのオバマ大統領の就任に、
黒人の、特に年配の方が、感きわまった様子をしていたのが、
実感として、分かる気がしますね。
リリィはこの黒人家族の中で、自分の居場所を見つけ、
自分も家族の一員となっていくのです。
少女の成長と人種差別問題を軸にした、情感たっぷりの秀作です。
ところで、ダコタ・ファニングは久し振りでした。
このごろあまり見ていないので、もう、子役生命も終わりなのか
・・・などと心配しておりました。
10歳くらいのいかにも「子ども」時代もいいのですが、
14歳。
これくらいの、子どもから大人への微妙な変化の年代。
こういう一瞬が、映画として残るなんて、
なんてラッキーなんでしょう。
あと2年もすれば、
また別のダコタ・ファニングに変身するのだろうと思います。
そのとき、ぜひ、また会いたいと思います。
2008年/アメリカ・カナダ/110分
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
出演:ダコタ・ファニング、ジェニファー・ハドソン、アリシア・キーズ、クイーンラティファ
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1964年。夏。
14歳のリリィ。
彼女は幼い頃、自分のせいで母親を亡くしています。
家出していた母が家に一時戻ったときに、父ともみ合いになり、
そのとき、幼い彼女が母に渡そうとした銃が暴発してしまったのです。
母親を亡くしただけでも痛手なのに、
過失とはいえ自分の手で母を殺めてしまった・・・、
このことは、彼女の大きな心の傷となって残っているのです。
そんなことがあったためか、彼女は父親ともうまく行っていない。
娘に対してすっかり心が冷えた父親は、
「お前の母親は、お前を捨てて出て行った。
あの日は、荷物を取りに来ただけ」、と告げるのです。
ほとんど母親の記憶がないリリィは、
しかし、「母親は自分を愛していた、父の言うことはでたらめ」
・・・そう信じたい。
ある日、彼女はわずかに残された母の手がかりを頼りに、
ティブロンという町へ向けて家出をします。
さて、このストーリーの舞台がこの年代というのにはわけがあります。
このストーリーは、黒人への人種差別をもう一つのテーマとしているのです。
この頃、公民権法が制定され、ようやく黒人にも選挙権が与えられた。
様々な差別も法により禁止され始めたのです。
ところが、法律ができたというだけで、
特にこのアメリカ南部では相変わらず、黒人への偏見や差別が根強くある。
それにはまた、公民権法によって更に黒人が白人の憎しみを買ってしまった、
という側面もあるようです。
リリィの家の黒人家政婦ロザリンは、
選挙人名簿の登録に行こうとして、暴漢に襲われてしまいました。
リリィは、このロザリンと家出を決行します。
さて、たどりついた場所はボートライト家。
黒人の三姉妹が住んでいました。
長女のオーガストは養蜂家。
ミツバチを飼い、はちみつを売って生活しています。
オーガストは素性のはっきりしないこの二人を快く受け入れ、
リリィに養蜂を手伝うように言います。
このオーガストが、クイーン・ラティファ。
なんと、先日「ラスト・ホリデイ」で、見たばかりなんですよ。
まったく意図したわけではないのに、同じ俳優を連続してみてしまう・・・、
こういうこと、時々あるんですよね。
不思議です。
この映画では、このクイーン・ラティファが、
素晴らしく存在感がありまして、
どっしりと包容力があり、そばにいるだけで安心できる。
なるほど、結局「ラスト・ホリデイ」も、最後はそういう役どころでした。
彼女自身に、そういう雰囲気があるんですね。
ある日、リリィは黒人の男の子と映画を見に行きます。
映画館の入り口が、白人用と黒人用に分かれていて、もちろん席も別々。
でも、リリィは一緒に黒人席へ行って映画を見ていました。
ところがそれを見た白人たちは、彼を攻め立て、乱暴しようとする。
全く、理不尽な差別です。
64年といえば、すでに私も生まれていて、そう昔ではない。
(え?相当昔ですって?)
こんな時でも、まだこんな風だったんですね・・・。
だから、このたびのオバマ大統領の就任に、
黒人の、特に年配の方が、感きわまった様子をしていたのが、
実感として、分かる気がしますね。
リリィはこの黒人家族の中で、自分の居場所を見つけ、
自分も家族の一員となっていくのです。
少女の成長と人種差別問題を軸にした、情感たっぷりの秀作です。
ところで、ダコタ・ファニングは久し振りでした。
このごろあまり見ていないので、もう、子役生命も終わりなのか
・・・などと心配しておりました。
10歳くらいのいかにも「子ども」時代もいいのですが、
14歳。
これくらいの、子どもから大人への微妙な変化の年代。
こういう一瞬が、映画として残るなんて、
なんてラッキーなんでしょう。
あと2年もすれば、
また別のダコタ・ファニングに変身するのだろうと思います。
そのとき、ぜひ、また会いたいと思います。

2008年/アメリカ・カナダ/110分
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
出演:ダコタ・ファニング、ジェニファー・ハドソン、アリシア・キーズ、クイーンラティファ