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この作品は、産経児童出版文化賞受賞作。
つまり、児童文学として出版されたものなんですね。
私自身は、そのようなくくりは、全く気になりませんが、
でも、普段はあまりそういう本の売り場には行きません。
ですから、児童用図書の棚に並んでいたら、まず、手には取らない本も、
こうして文庫で出されると、目に付いて読むことができるのはうれしいですね。
死んだはずのぼくの魂が漂っていると、
いきなり天使が
「おめでとうございます、抽選に当たりました!」。
なにごとかと思えば、再挑戦のチャンスが与えられたという。
自殺を図った少年の体にホームステイし、
自分の罪を思い出すように、というのです。
ふたたび人の世に舞い戻った僕は、
真(まこと)として、しばしの間生きることになるのですが・・・。
真は自殺を図り、一度死亡宣告まで受けたのですが、
そこにぼくの魂が入り込んで息を吹き返す。
家族は父母と兄。
生き返った真を見てみな大感激、
一見良い家族に思えます。
どうして真は自殺をしなければならなかったのか・・・、
少しずつ、その理由がわかってきますが、
それと同時に、おそらく真が気づかなかったようなことも見えてくるのですね。
それぞれの家族が、どれだけ自分を思っていてくれるのか。
学校に友人などなく、孤独と思っていたけれど、
実は気にかけてくれている人がいる。
暗く沈んだ色、あるいは無色
・・・そんな風に見えていた周りの世界が、
実はそれぞれの色を発していて、とてもカラフル!
そういうことに気づいていきます。
ぼくは思うのです。
違う、このカラフルな世界を見るべきなのは真であって、僕ではない。
何とか、真にこのことを教えたい・・・。
ひねりの効いたラストは、まあ、予想の範疇でしたが、
なんだか、心が浮き立って幸せ感たっぷり。
真が自殺に追い込まれた背景が、
やや深みに欠ける感はありますが、楽しく読めました。
満足度★★★★☆