映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「声に出して笑える日本語」 立川談四楼

2009年06月12日 | 本(エッセイ)
声に出して笑える日本語 (光文社知恵の森文庫)
立川 談四楼
光文社

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著者は、立川談四門下の落語家。
文章も歯切れがあってうまいですね。
この本は、著者が日常の生活の中で見聞きした
言葉にまつわる面白い話が満載。
始めの方の、言い間違いシリーズがまずおかしい。

「海のモズク」
「供養」を「キョウヨウ」
「曲者」を「マガリモノ」
「金字塔」を「カネジトウ」
・・・まあ、これらは言い間違いというよりは、完全に本人の覚え違いですね。
どれも公共の電波に乗って、
日本中津々浦々に流れてしまったものだそうな。

しかし、こういうのは自分自身にもありそうで、手放しには笑えない。
私、つい最近まで、
「大団円」を「ダイエンダン」だと思い込んでいましたから・・・。


こんな話もありますよ。
東京のTVスタジオからニューヨークのMさんを呼び出す。
「ニューヨークのMさん。」
Mさんが映るが、音声がつながっていないらしい。
「Mさん、聞こえますかー」
だから、聞こえてないんですよね。
なんとMさんは髪にカーラーが3個ばかり巻いてあり、
手鏡を持ち、パフで頬をたたいている。
「失礼しました。音声がつながっていないようです。」
必死で言いつくろう東京のキャスター。
まあ、時々こんな光景はありますね。
確かに。
しかし、ここで著者は言うのです。
なぜ、
「Mさんの化粧風景をお届けしました」
と、言えないのだろう、と。
なるほど、これならユーモアたっぷりで、
視聴者もニヤリですね。
多分、アメリカのキャスターならそういいますね。
日本人のユーモアセンスのなさが、こういうところでわかります。


さてそれで、一番私が気に入ったのは、この本の冒頭にある「ズンドコ」。
悲惨な事件を伝えた女性キャスターが
まとめのコメントとして言ったそうです。
「ご遺族は今、悲しみのズンドコに沈んでいます・・・」
「どん底」と言いたかったのですね。
しかし、「ズンドコ」は妙におかしい。
悲しみのズンドコ・・・。
絶望のズンドコ・・・。
でも、これってなかなかいいと思うのです。
例えば、いやなことがあって、落ち込んでしまったときに。
この言葉を思い出すのです。
絶望のズンドコ・・・。
なんだか、気持ちがふとゆるんで、
深刻に落ち込んでいるのがばかばかしくなりそうです。
だから、皆様、この言葉を覚えておくといいと思いますよ!

通勤バスの中で、1人ニヤニヤしながらこの本を読みふけっていた私でした。

満足度★★★★☆