映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マザーウォーター

2010年11月09日 | 映画(ま行)
水と命の輝き



            * * * * * * * *

「かもめ食堂」、「メガネ」、「プール」でお馴染みのプロジェクト、
人と場所の関係をゆったりと描いていく作品です。
(そういえば「プール」はまだみていない・・・!)


今回の舞台は、豊かに水の流れる京都。
ウィスキーしか置かないバーを営むセツコ(小林聡美)。
コーヒー店のタカコ(小泉今日子)。
お豆腐屋さんのハツミ(市川実日子)。
この京都に生きる3人の女性を中心に、日常の生活が描かれていきます。
舞台は京都ながら、観光名所やお寺などは一切出てきません。
まさに生活の場としての京都。
時は桜開く春。



この3人をつなぐ役目がマコト(もたいまさこ)さんですね。
例によって彼女は言葉少なにゆったり、まったりとマイペースで一日を過ごします。
お仕事は散歩(?)。
何も事件は起こりません。
赤ちゃんが行方不明になったり、誰かが病気になったりもしない。
淡々とした毎日と少々の会話。

でも、ただ倦怠に沈んでいるわけではないのです。
変わりばえのない日常ながら、それぞれが前を向いて生活し、
ほんのちょっぴり変化しながら生きている。
瑞々しい春の風景。
川の流れ。
そして何よりもここに赤ん坊を配したのが効を奏しています。
この古都で、どれだけの人々の命が受け継がれてきたのでしょう。
そして今もまた、小さな命が芽生え、育ってゆく。
母なる水に包まれた命の萌芽。
赤ん坊の前で私たちがつい笑顔になってしまうのは、
その小さな命がまぶしいから。
こんなに全体にゆったりのんびりしながらも、
水と命の輝きに満ちて生命を感じさせる・・というのは
やはり京都という土地のなせる技か。
桜の舞い散る川縁でお昼寝・・・。
それもよし。
う~ん、癒されます。
(でも、これで彼女たちのお店はちゃんと成り立っているのだろうかと、
ちょっと心配になったりして・・・。)



ところでこの作品も、食べ物はフードスタイリスト飯島奈美さんが担当していまして、
どれもこれもおいしそうで、よだれが出てきます。
何しろただのお豆腐に醤油をかけたのが、特上のご馳走に見える。
やってみたいですねえ、お豆腐屋さんの店先に腰掛けて・・・。
あの大きな氷が一つだけのウィスキーの水割りというのも心惹かれます。
空豆のかき揚げや、卵サンド・・・。
この映画、空腹でみるとすごくつらいですよー。

2010年/日本
監督:松本佳奈
脚本:白木朋子、たかのいちこ
出演:小林聡美、小泉今日子、市川実日子、もたいまさこ、加瀬亮