映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パートナーズ

2010年11月17日 | 映画(は行)
様々な人の手と愛情を受けて犬は成長する



            * * * * * * * *

似たような作品を見たような気がしながらも、犬好きなので、つい見てしまいます。
盲導犬チエに関わるパピーウォーカーや訓練士、そしてユーザーの物語。


剛は盲導犬訓練士を目指す青年。
彼が訓練士になろうとした動機は、一生食いっぱぐれのない資格を持ちたいと思ったから。
それまで彼は冷凍倉庫の荷物運びをしていたのです。
しかし働いても働いても給料は安く、未来が見えない。
同僚は事故で障害者となったあげく自殺してしまった。
剛はワーキングプア脱出のため、一大決心をして訓練生になったのです。
ところが他の訓練生たちは、犬が好きだからとか、障害者の役に立ちたいからなど、
明確に夢を持ってやって来ている。
そんな中で、浮いてしまった剛。

ここのところがなかなか今日的で、いいと思いました。
こういう動機の職業選択もアリですよね。
要は、動機ではなくてその後の成果だ。
実際に前職でむなしさを感じ、捨て身で前進してきた剛は強いですよ。
真摯に学んで、力をつけてゆく。
しかし、教官は言います。
「技術だけでは、いつか行き詰まる・・・」

・・・やがて、剛は実際に行き詰まってしまうことになります。
剛の受け持ったチエという名の犬は、
2ヶ月から1歳になるまで、パピーウォーカーの家で育てられました。
そこの美羽(みう)という女の子が、とてもチエをかわいがっていたのです。
剛は美羽を訪ねて、「どうしたら犬に好かれるのだろうか?」と聞くのですが・・・。
その答えは、実際にご覧になってくださいね。
これは犬に限らず、ヒトにもいえることなのかも知れません。


盲導犬の試験にパスしたチエは、
ライブ中に事故で失明した真琴というロックシンガーのパートナーになります。
二人(一人と一匹?)の訓練の様子も見物ですよ・・・。

子犬のチエが盲導犬として成長していくまでに、
様々な人の手と愛情をいっぱいに受けて行く様子が、温かく描かれています。

しかし、美羽の両親の複雑そうな事情とか、
飼い主がいなくて処分される犬たちの事情、
ワーキングプアについて、
そして、剛と真琴の想い・・・。
いろいろと欲張って詰め込みすぎたきらいがあります。
もう少し盲導犬としての訓練に焦点を当てて、
その苦労がメインの作品に仕立てても良かったのかなあと思います。


まあいずれにしても、この手の作品は、
犬のかわいさ・けなげさでほとんど合格点になってしまうんですけどね・・・。

小学生の女の子がつけた名前にしては「チエ」とは古風な・・・と思ったのですが、
ネタ晴らしをすれば、これは「チェ・ゲバラ」の「チエ」なんです。
美羽ちゃんのお父さんの尊敬する人物で、家にその写真が飾ってある。
「チェ」は「君よ」と呼びかける時の言葉。
そう聞けばなるほど、しゃれた名前なんですね。
この美羽役の近藤里沙ちゃんは名子役です。
彼女の熱い演技に、ずいぶん泣かされました。
ラブラドール・レトリーバー。
飼ってみたいです・・・。

2010年/日本/119分
監督:下村優
出演:浅利陽介、大塚ちひろ、村田雄浩、川上麻衣子、近藤里沙