至高のワインをつくるもの・・・環境、汗、涙、そしてインスピレーション
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/7b/c54ec48f5d3418751c81e41c7dee7b32.jpg)
* * * * * * * *
う~ん、この作品の解釈に若干戸惑っています。
フランス、ブルゴーニュ地方。
ワイン作りにとりつかれた男、ソブラン・ジョドーの物語。
時は19世紀。
彼は元々は葡萄作りの農夫です。
その彼が至高のワイン作りに一生を捧げる。
彼は資金作りのためにナポレオンのモスクワ遠征に参加したりしますが、
これがもうロシアに負けたのではなく、寒さに負けたという、悲惨な戦争だったのですが・・・。
まあ、そんなあたりが時代を感じさせて、興味深いです。
さてさて、こういうリアル話だけなら、非常に納得できますよね。
ところが実はこの作品、ちょっとファンタジーめいている。
なんと天使が登場します。
真っ白い大きな羽を持つ天使ザス(ギャスパー・ウリエル)。
ソブランはこの天使に天啓を受けて、自分の葡萄、自分のワインを作り始めるのです。
この天使とは毎年同じ夜に同じ場所で出会うことを約束する。
自分は天使に見込まれたラッキーな男。これで成功間違いなし。
・・・ついそう思ってしまいますよね。
けれどこの天使、始めに葡萄の苗を授け、若干葡萄造りのアドバイスをくれる以外は
何の助けもしてくれません。
厳寒のロシアで死にかけたときも、幼い娘が病気で命を失ったときも、
何の力にもなってはくれなかった。
しかし、神というのは得てしてそういうものですね。
見守るだけ。
ヒトの喜びも苦しみも、それがあなたたちの営みの証なのだから・・・といわんばかりだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/50/07de643bde711f4271a2b4428e3e3168.jpg)
・・・ところが、この作品では、ザスは実は堕天使だった、というのです。
堕天使???
さあ、もうここで行き詰まってしまいます。
キリスト教的知識がほとんどない私、「堕天使」と、言葉は聞いたことはあるものの、
その正しい意味が解っていない。
こういうときは、Wikipediaといきますか・・・。
堕天使(だてんし)とは、もともとは旧約聖書、偽典にある天使の身でありながら高慢、嫉妬、自由意志などの理由でヤハウェ・エロヒム(主なる神)に反逆し、結果天界を追放、つまり堕天された者のことを指す。
堕天使は悪魔と同一視される。堕落した天使が悪魔になったのである。これがキリスト教の教理としての立場である。
比較宗教学では意味は違ってくる。堕天使は前述したように天使の身でありながら、ヤハウェに反逆し天界を追放された存在という直接的な意味を持っており、一方の悪魔はヤハウェに反逆したもの、人を悪の道へ導く者、地獄に存在する者というヤハウェへのアンチテーゼ自体を示したような意味を持つ。
ふむふむ、それで、彼が堕天使だと聞いたときに、
ソブランは「悪魔」といって、だまされたと怒るわけですね。
けれど、堕天使=悪魔と決まったものでもないらしい。
つまりは神に逆らうという意味ではなく、自由意志で天界から離れたものもいる、
ということで、まさにザスはこういうパターンだと理解できるわけです。
・・・が、彼はワイン通なだけではなくて実は怪しい趣味も持っているので・・・、
それが天界を追われた理由とも思えます。
けれど彼は結局自分が無力で、ソブランのために何もしてあげられないことに
実は忸怩たる思いがあったというわけなのか。
それで、最後の決断をするということなんですね。
何となく解ってきました。
(すみません、勝手に自問自答しております・・・)
とにもかくにも、ワインの出来というのは
その土壌、気候、天候、作り手の思い・・・様々な要素が重なり合い、
時に奇跡の様なものが出来上がる。
まるで神のインスピレーションのような・・・。
そういう意味で、この天使の登場が生きてくるということなのでしょう。
天使に見守られつつ、しかし苦労はすべて自分が背負い、
ソブランはこのワイナリーを叔父から引き継いだオーロラと手を組み、
上質なワインを作り上げていく。
ワインの味とはつまり作り手の味そのもの。
喜び、悲しみ、恐れ、野望、成功、喪失・・・
至高のワインとは、これらがすべて詰まっているもの・・・。
いつまでも若い姿のままの天使ザスと
次第に年齢を重ねてゆくソブランの対比もいいですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/53/f00670a6a158558de09e41d569501a2d.jpg)
私的には、結局その天使ザスは
ソブランの心の中にだけ現れ、一生を添い遂げた幻だった
・・・と言う結論に持って行きたいところなのですが、
しかし、ザスは他の人にも姿を見られているんですねえ・・・。
ホントにいるんですよねえ。
このあたりのスジが納得できるようなできないような・・・、
ということで、やっぱり結局うまく消化できないでいるわけです。
地に足をつけ、ヒトと共に生身の限りある命を生きようとする、
そういう天使の物語。
そう理解すればいいのかな。
さて、この作品、ザスが登場したところですぐに、あるコミック作品を思い出しました。
川原泉さんの「美貌の果実」という作品です。
甲州、親子で小さなワイナリーを営んでいる一家のお話。
ここではその葡萄の樹の精が登場します。
羽はついていませんが、やはり美形。
慎ましくもお気楽(ここがいかにも川原さん)に葡萄とワイン作りに励むここの母子に、
これまでお世話になったお礼として、農園のお手伝いをするんですね。
けれどその樹齢100年の葡萄の精は、もう命が尽きかけている・・・。
こんなおとぼけた絵にもかかわらず、ほろりとさせられまして、私の大好きな一作であります。
ワイン作りとそのスピリチュアルな物語・・・とすれば、
やっぱりこちらのコミックの方がいいなあ・・・と思った次第。
2009年/ニュージーランド・フランス/126分
監督:ニキ・カーロ
原作:エリザベス・ノックス
出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ベラ・ファーミガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/7b/c54ec48f5d3418751c81e41c7dee7b32.jpg)
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う~ん、この作品の解釈に若干戸惑っています。
フランス、ブルゴーニュ地方。
ワイン作りにとりつかれた男、ソブラン・ジョドーの物語。
時は19世紀。
彼は元々は葡萄作りの農夫です。
その彼が至高のワイン作りに一生を捧げる。
彼は資金作りのためにナポレオンのモスクワ遠征に参加したりしますが、
これがもうロシアに負けたのではなく、寒さに負けたという、悲惨な戦争だったのですが・・・。
まあ、そんなあたりが時代を感じさせて、興味深いです。
さてさて、こういうリアル話だけなら、非常に納得できますよね。
ところが実はこの作品、ちょっとファンタジーめいている。
なんと天使が登場します。
真っ白い大きな羽を持つ天使ザス(ギャスパー・ウリエル)。
ソブランはこの天使に天啓を受けて、自分の葡萄、自分のワインを作り始めるのです。
この天使とは毎年同じ夜に同じ場所で出会うことを約束する。
自分は天使に見込まれたラッキーな男。これで成功間違いなし。
・・・ついそう思ってしまいますよね。
けれどこの天使、始めに葡萄の苗を授け、若干葡萄造りのアドバイスをくれる以外は
何の助けもしてくれません。
厳寒のロシアで死にかけたときも、幼い娘が病気で命を失ったときも、
何の力にもなってはくれなかった。
しかし、神というのは得てしてそういうものですね。
見守るだけ。
ヒトの喜びも苦しみも、それがあなたたちの営みの証なのだから・・・といわんばかりだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/50/07de643bde711f4271a2b4428e3e3168.jpg)
・・・ところが、この作品では、ザスは実は堕天使だった、というのです。
堕天使???
さあ、もうここで行き詰まってしまいます。
キリスト教的知識がほとんどない私、「堕天使」と、言葉は聞いたことはあるものの、
その正しい意味が解っていない。
こういうときは、Wikipediaといきますか・・・。
堕天使(だてんし)とは、もともとは旧約聖書、偽典にある天使の身でありながら高慢、嫉妬、自由意志などの理由でヤハウェ・エロヒム(主なる神)に反逆し、結果天界を追放、つまり堕天された者のことを指す。
堕天使は悪魔と同一視される。堕落した天使が悪魔になったのである。これがキリスト教の教理としての立場である。
比較宗教学では意味は違ってくる。堕天使は前述したように天使の身でありながら、ヤハウェに反逆し天界を追放された存在という直接的な意味を持っており、一方の悪魔はヤハウェに反逆したもの、人を悪の道へ導く者、地獄に存在する者というヤハウェへのアンチテーゼ自体を示したような意味を持つ。
ふむふむ、それで、彼が堕天使だと聞いたときに、
ソブランは「悪魔」といって、だまされたと怒るわけですね。
けれど、堕天使=悪魔と決まったものでもないらしい。
つまりは神に逆らうという意味ではなく、自由意志で天界から離れたものもいる、
ということで、まさにザスはこういうパターンだと理解できるわけです。
・・・が、彼はワイン通なだけではなくて実は怪しい趣味も持っているので・・・、
それが天界を追われた理由とも思えます。
けれど彼は結局自分が無力で、ソブランのために何もしてあげられないことに
実は忸怩たる思いがあったというわけなのか。
それで、最後の決断をするということなんですね。
何となく解ってきました。
(すみません、勝手に自問自答しております・・・)
とにもかくにも、ワインの出来というのは
その土壌、気候、天候、作り手の思い・・・様々な要素が重なり合い、
時に奇跡の様なものが出来上がる。
まるで神のインスピレーションのような・・・。
そういう意味で、この天使の登場が生きてくるということなのでしょう。
天使に見守られつつ、しかし苦労はすべて自分が背負い、
ソブランはこのワイナリーを叔父から引き継いだオーロラと手を組み、
上質なワインを作り上げていく。
ワインの味とはつまり作り手の味そのもの。
喜び、悲しみ、恐れ、野望、成功、喪失・・・
至高のワインとは、これらがすべて詰まっているもの・・・。
いつまでも若い姿のままの天使ザスと
次第に年齢を重ねてゆくソブランの対比もいいですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/53/f00670a6a158558de09e41d569501a2d.jpg)
私的には、結局その天使ザスは
ソブランの心の中にだけ現れ、一生を添い遂げた幻だった
・・・と言う結論に持って行きたいところなのですが、
しかし、ザスは他の人にも姿を見られているんですねえ・・・。
ホントにいるんですよねえ。
このあたりのスジが納得できるようなできないような・・・、
ということで、やっぱり結局うまく消化できないでいるわけです。
地に足をつけ、ヒトと共に生身の限りある命を生きようとする、
そういう天使の物語。
そう理解すればいいのかな。
さて、この作品、ザスが登場したところですぐに、あるコミック作品を思い出しました。
川原泉さんの「美貌の果実」という作品です。
甲州、親子で小さなワイナリーを営んでいる一家のお話。
ここではその葡萄の樹の精が登場します。
羽はついていませんが、やはり美形。
慎ましくもお気楽(ここがいかにも川原さん)に葡萄とワイン作りに励むここの母子に、
これまでお世話になったお礼として、農園のお手伝いをするんですね。
けれどその樹齢100年の葡萄の精は、もう命が尽きかけている・・・。
こんなおとぼけた絵にもかかわらず、ほろりとさせられまして、私の大好きな一作であります。
ワイン作りとそのスピリチュアルな物語・・・とすれば、
やっぱりこちらのコミックの方がいいなあ・・・と思った次第。
![]() | 美貌の果実 (花とゆめCOMICS) |
川原 泉 | |
白泉社 |
2009年/ニュージーランド・フランス/126分
監督:ニキ・カーロ
原作:エリザベス・ノックス
出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ベラ・ファーミガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ