映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ベルサイユの子

2010年11月24日 | 映画(は行)
守るべきものができたとき



             * * * * * * * *

パリ郊外、世界遺産ベルサイユ宮殿の外れの森。
かつてマリーアントワネットが贅沢の限りを尽くしたベルサイユの地に、
今はホームレスが多く住み着いているのだそうです・・・。
このストーリーでは、その森に住み着いている一人の男、ダミアンが
ひょんなことから5歳の男の子エンゾと暮らすようになります。
やはり住むところのないエンゾとその母親は、
道に迷ってダミアンのところに来たのですが、
翌朝、エンゾを残して母親がいなくなってしまった。
彼女は彼女できちんと生活を立て直して、
いつかエンゾを迎えに来ようと思ったわけなのですが。
捨て子を押しつけられたと思ったダミアンは始め怒り狂いますが、
しかし、この小さな子を放り出すわけにも行かない。
やむなく一緒に暮らすようになるのですが、
飢えや寒さをやっとしのぐような生活のなかで、
次第に二人の絆は本当の父子のように強まっていくのです。


社会になじめず、束縛を嫌うダミアン。
だからこそ、こんな所で気ままに暮らしていたわけですが、
守るべきものが出来たことで彼は変わって行く。
疎遠になっていた父を頼り、仕事を得、
戸籍もないエンゾの親権を得る手続きを経て、エンゾを学校へ入れる。

やれば出来るんじゃん。
考えてみるとエンゾの母親もそうなんですね。
一人ではたぶん立ち直ろうという気にもならなかったかも知れない。
けれど、守るべきものが出来たときに、人は優しく強くなれるのです。

ただし、ダミアンの自由への希求は
家庭の安穏よりもやはり強いのです・・・。
そういう生まれ持った性質なんでしょうね。
義務感にかられて縛り付けられない、
風のようにさらりとしたその風合いは
嫌いじゃないなあ・・・
まあ、彼が一人で背負わなくてもなんとかなるという状況もあったわけですが。


エンゾ役の子がまた、本当にかわいいんですもんね。
無垢であり、けなげ。
子犬を見ると誰もがほおずりしたくなっちゃいますが、まさにそういう雰囲気があります。


さて、このダミアンを演じたギョーム・ドパルデュー。
2008年10月に37歳の若さで亡くなっています。
ステキな方なのに・・・。
惜しいです。
他の出演作品も見てみたくなりました。

ベルサイユの子 [DVD]
ギョーム・ドパルデュー,マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ,ジュディット・シュムラ,オーレ・アッティカ,パトリック・デカン
アミューズソフトエンタテインメント


2008年/フランス/113分
監督・脚本:ピエール・ショレール
出演:ギョーム・ドパルデュー、マックス・ベセット・ド・マルグレ-ヴ、ジュディット・シュムラ、オーレ・アッティカ