映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ピアノの森

2010年11月06日 | 映画(は行)
山猿みたいな少年の紡ぎ出す音



          * * * * * * * *

以前から見たかったアニメです。

ピアニストの父親を持つ雨宮修平が、祖母の暮らす街にやって来ました。
そこには大きな森があって、何故かグランドピアノが一台おいてある。
ふと鍵盤をたたいてみるけれど音が出ない。
ところが彼と同級生の一ノ瀬海が、いとも軽々と音を出し、美しいメロディを奏でる。
この海は、ピアノを誰に習ったわけでもない。
小さい頃からここへ来ては気ままに音を出して遊んでいた。

天賦の才、というのでしょうね。
神が与えたとしか思えないその才能。
粗野で山猿みたいなこの少年の紡ぎ出すピアノの音が、私たちの心の奥まで響き渡る。


一方雨宮君は、努力家です。
父をピアニストに持ってしまった宿命で、
幼い頃からイヤでもピアノに向かわねばならなかった。
楽しいというよりはイヤで逃げ出したかったことも多かったでしょう。
でも彼は自分の努力の結果を信じている。
その彼が、なんの苦もなく楽しげにピアノを弾く海と出会う。
でも、彼は大人ですよね。
海をすばらしいと思う反面、自分のなかにある何か暗く重い感情にも気がついている。
天衣無縫な少年も好きですが、こういうふうにきちんと自分を律する少年も好きです。

ところがこの野放図な海少年は、コンクールの課題曲に苦戦。
指導者であるもと天才ピアニストのピアノとそっくりな弾き方になってしまう。
自分のピアノを弾きなさい、と、先生は言うけれども・・・。
海の自分のピアノとは・・・?
あの森のピアノに違いないのです。
さあ本番。
海は森のピアノを奏でることができるのでしょうか。


同じコンクールで緊張しきっている少女のエピソードも秀逸。
彼女のおかげで海くん自身の心も解放されていきますね。
いい物語でした。

ピアノの森 [スタンダード・エディション] [DVD]
上戸 彩.神木隆之介.池脇千鶴.福田麻由子.宮迫博之
VAP,INC(VAP)(D)



2007年/日本
監督:小島正幸
原作:一色まこと
声:上戸彩、神木隆之介、池脇千鶴、福田麻由子