映画と本の『たんぽぽ館』

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ミレニアム3/眠れる女と狂卓の騎士

2010年11月12日 | 映画(ま行)
自分を害する者への武装



             * * * * * * * *

いよいよミレニアムの第3部。
前回瀕死の重傷を負ったリスベットは、
ひとまず病院へ収容され、傷を癒します。
しかし、傷が癒えた後、リスベットはザラチェンコの殺人未遂ということで逮捕され、
取り調べを受けることになるのですね。

そもそもはこのザラチェンコ、元ソ連のスパイで、
スウェーデンへ亡命。
その亡命を機密扱いにし、彼を利用したグループ“班”が、
この度の最終の巨大な敵となるのであります。
“班”は、ザラチェンコのことを表沙汰にしたくないばかりに、
リスベットを精神病院に送り込んだわけです。
そして今回もまた、彼女を精神病扱いにし、社会から永遠に切り離してしまおうと画策する。
息詰まる法廷の場へと進んでいきます。



許し難し!! 精神外科医のテレボリアン。
なんだかんだといっても私たちは権威に弱い。
医学者として地位も名誉もある人物の言う言葉と、
怪しげなファッションをした粗暴な小娘の言葉と、
どちらを信じるかと言われたら・・・。
真実を見極める自信はないですね・・・。
しかし、彼女には捨て身の証拠映像がある。
紳士面した後見人ビュルマンや、医師テレボリアンの化けの皮が剥がれていく。
いや~、胸がすきますね。こうこなくっちゃ。


私、この3部になってようやく気がついたのですが、
リスベットのパンクファッションやメイクは、
別に反体制とか反秩序ではなく、
実際に自分を害する者に対しての武装なんですね。
戦闘態勢に入るための。
誰も自分を守ってくれない・・・そういう中で育ってきた彼女は、
こうして社会全体を敵とみなし、武装するしかなかった。
でも、彼女は独りぼっちと思っているかも知れないけれど、
この度どれだけの人が彼女のために尽くしたことか。
ミカエルはもちろんですが、
彼女の主治医や、ミレニアムの編集者たち、ハッカー仲間。
・・・もう、武装しなくてもいいんですよね。

さて、難関の法廷シーンも終えてホッとしたところでもう終わりかと思いかけたのですが、
あ、まてよ、
そういえばあの金髪の巨人がまだいるんじゃありませんか!!
思い出したらさっそく、そのシーンが来た!
リスベットに迫る危機!!


実際このように私たちを楽しませてくれるツボがたっぷりの作品でした。
著者がご存命なら、リスベットとミカエルの新たな事件への挑戦がみられたかもしれません。
返す返すも残念です・・・。



          →ミレニアム1          
→ミレニアム2

2009年/スウェーデン
監督:ダニエル・アルフレッドソン
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ニクビスト