めくるめくイマジネーション
* * * * * * * *
恩田陸さんの短編集ですが、とにかく一つ一つに全く別個の発想、それぞれの世界観があって、
このめくるめくイマジネーションに圧倒されてしまいます。
いつも私たちを独特の不可思議な世界に引き込んでくれる著者の真骨頂といえましょう。
私のお気に入りをいくつかご紹介しましょう。
「夕飯は7時」
仲の良い3兄弟が登場します。
兄と僕と妹。
この三人、不思議な力を持っています。
自分たちの良く知らない言葉を聞くと、
その言葉のイメージが実体になって目の前に現れてしまう。
たとえば僕がニュースで「けんせつにゅうさつ」という言葉を聞くと・・・
テーブルの真ん中から白い頭がするっと飛び出してきた。
頭はサッカーボールくらい。
牛乳のような白さで、のっぺりとしていて、ひんやりしている。・・・
同じ言葉でもお兄さんはまた違うイメージを招くし、
妹のはもっととんでもなくて危険でさえある。
出現してしまったイメージを消す方法は、それをイメージした本人がくしゃみをすること。
いやはや・・・、毎日が楽しくて、そして大変そうだ・・・。
「隙間」
これはホラー系ですね。
隙間が怖くてたまらない男の物語。
彼は何故か幼い頃から、ものの隙間が恐ろしく感じられてしょうがない。
誰かがそこから覗いているような・・・。
また、その隙間に白い指がかかっていて、
今にも何者かがそこから飛び出して来そうな気配を感じてしまい・・・。
一体彼の恐怖はどこから来るのでしょう・・・?
「かたつむり注意報」
まるで夢の中の風景のように幻想的シーンが登場します。
巨大なかたつむりが、夜、群れをなして街を通り過ぎる。
夜が明けると、彼らの通った跡は虹のように光り輝いていて、雨上がりの匂いがする。
ある空襲の夜にも彼らはやって来て・・・。
「エンドマークまでご一緒に」
ある朝、フレッド君が目をさますなり、オーケストラの大音響が流れ出します。
彼はベッドから起きて歌い出す。
♪なぜなんだろう どうしてなんだろう
いつもと同じ太陽なのに 今日は何だかいつもとちがう・・・♪
歌いながら身支度を調え、バスに乗って仕事へ。
・・・そうです、何故か突然この日、彼はミュージカルの主役になっている。
この世界では、周囲の人はミュージカルにつきあうのがお約束らしい。
バスの乗客は見てみないふり。
職場の同僚は、迷惑そうにしながらも、
バックコーラスをつとめたり、ダンスをしてみたり・・。
まさに、あの、不思議なミュージカル世界が展開していきます。
実生活にミュージカルが出現したら確かに変!
でも、その皮肉さが実に楽しく面白い。
何だか曲やダンスのしぐさが目に浮かぶようです。
私はこの本の中ではこれが一番のお気に入り。
「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
これは時の流れを俯瞰する壮大な年代記。
地上の鉄路を巨大な王国が疾走します。
ヒトが巨大な箱を発見し、住み着き、
突如それが走り始め、止まることを知らず、
王国が築かれ、そして衰退し誰もいなくなってしまう。
それでも疾走し続ける王国。
これは何かの象徴なのか・・・と、思います。
けれどどこにもその答えはありません。
そのままのイメージを楽しむもよし。
深読みして答えを探るもよし。
・・この「王国」は止めどなく自転し公転し続ける「地球」なのではないか・・・などと。
重厚で、圧倒される雰囲気漂う一作。
他にもいろいろ興味が尽きない作品が目白押し。
きっとこの中で皆さんのお気に入りが探せると思います。
満足度★★★★☆
いのちのパレード (実業之日本社文庫) | |
恩田 陸 | |
実業之日本社 |
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恩田陸さんの短編集ですが、とにかく一つ一つに全く別個の発想、それぞれの世界観があって、
このめくるめくイマジネーションに圧倒されてしまいます。
いつも私たちを独特の不可思議な世界に引き込んでくれる著者の真骨頂といえましょう。
私のお気に入りをいくつかご紹介しましょう。
「夕飯は7時」
仲の良い3兄弟が登場します。
兄と僕と妹。
この三人、不思議な力を持っています。
自分たちの良く知らない言葉を聞くと、
その言葉のイメージが実体になって目の前に現れてしまう。
たとえば僕がニュースで「けんせつにゅうさつ」という言葉を聞くと・・・
テーブルの真ん中から白い頭がするっと飛び出してきた。
頭はサッカーボールくらい。
牛乳のような白さで、のっぺりとしていて、ひんやりしている。・・・
同じ言葉でもお兄さんはまた違うイメージを招くし、
妹のはもっととんでもなくて危険でさえある。
出現してしまったイメージを消す方法は、それをイメージした本人がくしゃみをすること。
いやはや・・・、毎日が楽しくて、そして大変そうだ・・・。
「隙間」
これはホラー系ですね。
隙間が怖くてたまらない男の物語。
彼は何故か幼い頃から、ものの隙間が恐ろしく感じられてしょうがない。
誰かがそこから覗いているような・・・。
また、その隙間に白い指がかかっていて、
今にも何者かがそこから飛び出して来そうな気配を感じてしまい・・・。
一体彼の恐怖はどこから来るのでしょう・・・?
「かたつむり注意報」
まるで夢の中の風景のように幻想的シーンが登場します。
巨大なかたつむりが、夜、群れをなして街を通り過ぎる。
夜が明けると、彼らの通った跡は虹のように光り輝いていて、雨上がりの匂いがする。
ある空襲の夜にも彼らはやって来て・・・。
「エンドマークまでご一緒に」
ある朝、フレッド君が目をさますなり、オーケストラの大音響が流れ出します。
彼はベッドから起きて歌い出す。
♪なぜなんだろう どうしてなんだろう
いつもと同じ太陽なのに 今日は何だかいつもとちがう・・・♪
歌いながら身支度を調え、バスに乗って仕事へ。
・・・そうです、何故か突然この日、彼はミュージカルの主役になっている。
この世界では、周囲の人はミュージカルにつきあうのがお約束らしい。
バスの乗客は見てみないふり。
職場の同僚は、迷惑そうにしながらも、
バックコーラスをつとめたり、ダンスをしてみたり・・。
まさに、あの、不思議なミュージカル世界が展開していきます。
実生活にミュージカルが出現したら確かに変!
でも、その皮肉さが実に楽しく面白い。
何だか曲やダンスのしぐさが目に浮かぶようです。
私はこの本の中ではこれが一番のお気に入り。
「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
これは時の流れを俯瞰する壮大な年代記。
地上の鉄路を巨大な王国が疾走します。
ヒトが巨大な箱を発見し、住み着き、
突如それが走り始め、止まることを知らず、
王国が築かれ、そして衰退し誰もいなくなってしまう。
それでも疾走し続ける王国。
これは何かの象徴なのか・・・と、思います。
けれどどこにもその答えはありません。
そのままのイメージを楽しむもよし。
深読みして答えを探るもよし。
・・この「王国」は止めどなく自転し公転し続ける「地球」なのではないか・・・などと。
重厚で、圧倒される雰囲気漂う一作。
他にもいろいろ興味が尽きない作品が目白押し。
きっとこの中で皆さんのお気に入りが探せると思います。
満足度★★★★☆