映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フィリップ、きみを愛してる!

2011年02月01日 | 映画(は行)
可笑しくもあり、悲しくもあり・・・そして胸をうたれる



             * * * * * * * *

ゲイの男性の物語・・・、なのですが
これは実話を元にしているということで、
そう聞かなければ、
こんな奇想天外の話があるわけない!!と、切り捨ててしまうところです。
まさに、フィクションよりもフィクションっぽいストーリー。


主人公スティーブ(ジム・キャリー)は警察官でした。
でもある時交通事故で瀕死の重傷を負い、人生を見つめ直すのです。
もう、自分を偽るのはやめよう。
ありのままの自分でいよう。
そこで、妻に自分がゲイであることを告げ、警察も辞めて家を出る。
さてそこで何をするか。
・・・それが詐欺なんですねえ・・・。

この実在のスティーブン・ラッセルという方、
IQ169という並外れた知能の持ち主なんですね。
この知能を生かしちゃったんです・・・、生かすべきでない方向に。
クレジットカード詐欺、
高級腕時計の窃盗・転売、
弁護士詐称、
大企業に潜り込んで億単位の巨額を横領・・・いやはや、あきれるばかりです。
そんなことで刑務所に入っていたある時、運命の出会いがあるのです。
それがフィリップ(ユアン・マクレガー)。
二人はたちまち相思相愛に・・・。

いえ、笑っちゃいけないところなんですが。
ところがフィリップは意外とまともな道徳観念の持ち主。
スティーブのウソで固めた生き方が嫌で仕方がない。
お金なんかいらないから、もうウソをつくのは止めて・・・。
そう言うのだけれどスティーブは止められない。
とうとうフィリップまで共犯を問われて二人とも刑務所に逆戻り。
獄舎は別々です。

そんな時、フィリップの元にスティーブがエイズで瀕死の状態だとの噂が入る。
スティーブはやせ衰え、
もう余命も幾ばくもないように見受けられる・・・
獄中の身で、会うこともかなわないけれど、
電話でフィリップは必死に語りかける。
「ウソばかりの君だけど・・・やはり愛している。生涯で君だけだ・・・。」
ほろりと来ます・・・。
そうか、ジム・キャリーだけど結局こういうシリアスな物語だったのか
・・・と、思いきや・・・!!
思わぬどんでん返しにびっくり!!
まさに命がけのウソなのですが、
それもフィリップへの愛ゆえのこと。
これが普通の男女の物語ならそう驚かないかも知れない。
でも男同士というところが、おかしくもあり悲しくもあり・・・。
そして、その愛の偉大な力を思うときに、
男同士の愛も男女の愛も同じだなあ・・・と、気づくわけです。
奇妙でめちゃくちゃでありながら、
ふと胸を打たれてしまいます。


ジム・キャリーは真剣な顔をしていれば超絶にカッコいい

スティーブン・ラッセル氏は今もご存命で、服役中とのこと。
いやはや、すごい人です。完敗。

フィリップ、きみを愛してる! [DVD]
ジム・キャリー,ユアン・マクレガー
Happinet(SB)(D)


「フィリップ、きみを愛してる!」
2009年/フランス/97分
監督・脚本:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
制作総指揮:リック・ベッソン
出演:ジム・キャリー、ユアン・マクレガー、レスリー・マン、ロドリゴ・サントロ