映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「オケ老人!」 荒木源

2011年02月15日 | 本(その他)
クラシック&サスペンス!?

オケ老人! (小学館文庫)
荒木 源
小学館


              * * * * * * * *

あの「ちょんまげぷりん」の著者、荒木源さんの作品です。
平均年齢おそらく世界最高のアマチュアオーケストラ「梅が岡交響楽団」。
高校教師の中島は、間違えてそこに入団してしまいます。
何しろメンバー同様、演奏もよれよれぼろぼろのオーケストラ。
再若手の中島はバイオリンをやりたいのに、
指揮者をやらされ、指導を任される始末。
すぐにも止めたいのにいい出すことが出来ずにずるずる付き合ううち、
次第に皆が上達して・・・と、そういうところは何となく想像がつきますよね。
ところがです。
この物語、こういうのどかな光景と同時進行で、
なぜかロシアのスパイが登場し、危険な雰囲気を漂わせます。
思いもよらないこの取り合わせ。
一体どのようにつながっていくのか、興味津々、つい引き込まれてしまいます。


登場人物がとても魅力的。
中島は学生時代にオーケストラでバイオリンをやっていたので、
またやってみたいと思うのです。
本当に入りたかったのはアマチュアでもレベルの高い梅が岡フィル。
その後願いかなってそちらへの入団も果たすのですが、
なんとそこは団員同士の競争をあおる、実に陰険なところだった。
必死の練習にもかかわらず、中島はそこから落ちこぼれて・・・と、
まず中島自身の悪戦苦闘がしっかり書き込まれています。
中島の力で老人オケを引っ張り上げるのではない。
皆共にいろいろな事件を乗り越えながら成長していくところが、何とも心地よいですね。
そして中島の恋の行方は・・・?

また、最後の最後、
最大のサスペンスと最大のオーケストラの盛り上がりを同時に持ってくる。
いやはや、実に良く練られたストーリーなのです。
感服。
これはきっとどなたにも楽しめるオススメ作品です。


この作品、「ちょんまげ・・・」よりもむしろ映画向きなのではないかと思いました。
というのは音楽シーンがあるからです。
もちろん音楽描写もしっかりしていますが、
こちらの音楽の知識の方が心許ないですからね・・・。
実際の音入り映像で見れば、おもしろさ倍増間違いなし!

「オケ老人!」荒木源 小学館文庫 695円
満足度★★★★★