映画と本の『たんぽぽ館』

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「カレンダー・ボーイ」 小路幸也

2011年02月19日 | 本(その他)
子供時代にタイムスリップ! 過去は変えられるか

カレンダーボーイ (ポプラ文庫)
小路 幸也
ポプラ社


            * * * * * * * *

体は小学生、心は大人・・・、
どこかのアニメの主人公ではありませんが、
この物語、40代中年の男性二人が意識だけ小学生の頃に逆戻り、
一日交代に現代の大人の世界と過去の子供時代を過ごすというストーリーです。
小路幸也さんには珍しく、SF? 
いえ、ストーリーの設定はSF的ではありますが、
これはやはり家族と友情の物語なのでしょう。


38年前札幌に住んでいた幼なじみの二人。
現在は東京で同じ大学の事務局長と教授として勤務している。
ある日目覚めると突然意識だけが38年前、
5年生の子供の頃の自分に入り込んでいる。
何故突然こんなことに・・・と考えてみると、思い当たる一つの事件。
それはその38年前、1968年に起こった大きな事件、3億円強奪事件。
彼らと同級生で仲のよかった女の子が、
その事件に巻き込まれたらしい父親と道連れに一家心中で亡くなってしまった。
自分たちはこの事件を阻止するために、タイムスリップしたのではないか。
そのような使命感に駆られ、行動を起こす彼ら・・・。
さて、彼らは「過去」を変えることが出来るのか?


38年前、彼らの小学生時代の札幌。
私にも非常に懐かしく、興味深く読みました。

けれども、これは作品としてはどうなのでしょう。
最大クライマックスのはずの3億円事件時の顛末など、
彼らの回想で、実にあっさり記述されているだけで、拍子抜け。
アイデア倒れで、シチュエーションを活かしきれていないように感じました。
彼ら同様、意識だけタイムスリップした人物が他にも出てくるのですが、
その人の事情の説明も尻切れトンボです。
お定まりのハッピーエンドではなく、ややもの悲しく終わる当たりで
ようやく少々面目が保てた感じ。
リアルな日常の中の心の機微。
そうした作品の方が著者の特質は生かせそうです。

「カレンダー・ボーイ」小路幸也 ポプラ文庫 680円
満足度★★☆☆☆