現代の私たちにとっても“異邦人”の大日本帝国人

* * * * * * * *
米国人ドン・ジョーンズによる実録「タッポーチョ『敵ながら天晴』大場隊の勇戦512日」
を映画化したものです。
太平洋サイパン島。
米軍の圧倒的大軍により、日本軍は壊滅。
しかし、敗残兵を集め、最後まで戦い抵抗を続けた47名の兵士たち。
それを率いたのが大場大尉。
クリント・イーストウッド監督の「硫黄島」二部作を思わせますが、
米軍の部分の描写は英語で米監督チェリン・グラックにより、
そして日本軍部分の描写が日本語、日本の平山秀幸監督により撮影されたとのこと。
アメリカ人から見た大場大尉。
最後まで戦い抜く姿勢、
敗残兵や民間人をまとめる統率力、
そして祖国日本への忠誠、
こういうところがアメリカ人からは敬意に値するとみられたようです。
米軍の将校は、何故日本人は捕虜にならず自決をするのかと、
日本に留学経験のある兵に問います。
彼は将棋のコマを取り出して説明する。
これは、日本のチェスに似たゲームのコマだけれども、
このコマは敵に囚われると捕虜になるだけではない。
今度は相手方の大将に忠誠を誓い、敵方について闘わなければならない。
しかし、彼らは天皇への忠誠がとても強いので、
敵方につくくらいならば自ら死を選ぶのだ、と。
・・・へえ、そうなのか。
と、日本人が納得してどうするのさ、というところですが。
つまりは、私とて、戦後の民主教育を受けた身ですので、
この「自決」の心理が実感としては解らない。
戦前の日本人の心は、もう私たちにとっては“異邦人”のもののようです。
大場大尉の激昂しない物静かな態度、
そしてそれこそ狐のように狡猾であくまでも闘おうとする姿勢、
そういう部分は確かに尊敬に値する。
けれど、後半、既に日本は降伏し終戦となってもなお、
それを信じられないでいるところは、正直いらいらさせられます。
日本の歌を流したり、ビラを撒いたり、
実際にそういうことがあったのは知っていますし、
それを信じることが出来ず、疑心暗鬼に駆られるところも、良く理解できます。
でもなおあえて言わせてもらえば、この有様は、フォックスではない。
たとえば主人に忠実な犬が、主人以外のものの手から餌を受け付けずに衰弱死してしまう、
そんな愚直な滑稽さを思ってしまう。
そのような人の教育しかできなかったのが、
当時の最大の過ちなのではないかと思います。
だから今の教育がよいかと言えば、それはまた別の問題ですけどね・・・。
けれど、少なくとも彼は絶望に駆られて自決もしなかったし、
人にそれを強いたりもしませんでした。
それだけでも、充分に偉大と見るべきなのかな。
余談ですが、子供の頃夏休み中によくTVのワイドショーで
「子供に戦争体験を語る」みたいな企画をやっていました。
小学生の私は、子供らしくもなく(?)結構真剣に見ていたものです。
そんな中で覚えているのが、このサイパン島で生き残ったご婦人の体験談。
後に「バンザイクリフ」と呼ばれる断崖の上から、
民間人たちが天皇陛下バンザイと叫びながら海へ飛び込んで自殺したのですね。
その方も、もう少しで飛び込むところだった。
けれどその寸前、遥か下方の岩に打ち付ける波の間に、
子供の赤い下駄が一つ浮かんでいるのが見えたそうなのです。
ものすごい高度の崖ですから、
実際にはほんのかすかな赤い点でしかなかったのかもしれません。
けれどそのとき、おそらく彼女にはそれがクローズアップして見えた。
それを見たとたん、涙が次から次からあふれ出て、
もう飛び込むことが出来なくなってしまった、というのです。
私も、子供心にその赤い下駄のイメージが焼き付いてしまったようで、
未だに覚えているのです。
さて、しかし、もし万が一日本でも戦争が始まったとして、
私たちは一体何に忠誠を誓って命をかけようとするのでしょう。
そういう心の芯になるものが、無くて幸せなのか、
いや、それがあった方が強いようにも思える。
・・・そんな事態にならないことを祈るだけですかね。
なんとも軟弱な結論でした。

竹野内豊は、この役によく合っていましたね。
元々地理の教師であったという大場大尉。
そういうイメージにはぴったりです。
ただやっぱり、この方のどこがすごいのか???
というのはわかりにくい・・・。
これは役者の責任ではないように思いますが。
むしろ特筆すべきなのは唐沢寿明の堀内一等兵。
スキンヘッドに派手な入れ墨。
このヤクザ男、本人が一番楽しんだように見受けられます。
まあ、いいんじゃないでしょうか。
「太平洋の奇跡/フォックスと呼ばれた男」
2011年/日本/128分
監督:平山秀幸・チェリン・グラック
出演:竹野内豊、唐沢寿明、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、阿部サダヲ

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米国人ドン・ジョーンズによる実録「タッポーチョ『敵ながら天晴』大場隊の勇戦512日」
を映画化したものです。
太平洋サイパン島。
米軍の圧倒的大軍により、日本軍は壊滅。
しかし、敗残兵を集め、最後まで戦い抵抗を続けた47名の兵士たち。
それを率いたのが大場大尉。
クリント・イーストウッド監督の「硫黄島」二部作を思わせますが、
米軍の部分の描写は英語で米監督チェリン・グラックにより、
そして日本軍部分の描写が日本語、日本の平山秀幸監督により撮影されたとのこと。
アメリカ人から見た大場大尉。
最後まで戦い抜く姿勢、
敗残兵や民間人をまとめる統率力、
そして祖国日本への忠誠、
こういうところがアメリカ人からは敬意に値するとみられたようです。
米軍の将校は、何故日本人は捕虜にならず自決をするのかと、
日本に留学経験のある兵に問います。
彼は将棋のコマを取り出して説明する。
これは、日本のチェスに似たゲームのコマだけれども、
このコマは敵に囚われると捕虜になるだけではない。
今度は相手方の大将に忠誠を誓い、敵方について闘わなければならない。
しかし、彼らは天皇への忠誠がとても強いので、
敵方につくくらいならば自ら死を選ぶのだ、と。
・・・へえ、そうなのか。
と、日本人が納得してどうするのさ、というところですが。
つまりは、私とて、戦後の民主教育を受けた身ですので、
この「自決」の心理が実感としては解らない。
戦前の日本人の心は、もう私たちにとっては“異邦人”のもののようです。
大場大尉の激昂しない物静かな態度、
そしてそれこそ狐のように狡猾であくまでも闘おうとする姿勢、
そういう部分は確かに尊敬に値する。
けれど、後半、既に日本は降伏し終戦となってもなお、
それを信じられないでいるところは、正直いらいらさせられます。
日本の歌を流したり、ビラを撒いたり、
実際にそういうことがあったのは知っていますし、
それを信じることが出来ず、疑心暗鬼に駆られるところも、良く理解できます。
でもなおあえて言わせてもらえば、この有様は、フォックスではない。
たとえば主人に忠実な犬が、主人以外のものの手から餌を受け付けずに衰弱死してしまう、
そんな愚直な滑稽さを思ってしまう。
そのような人の教育しかできなかったのが、
当時の最大の過ちなのではないかと思います。
だから今の教育がよいかと言えば、それはまた別の問題ですけどね・・・。
けれど、少なくとも彼は絶望に駆られて自決もしなかったし、
人にそれを強いたりもしませんでした。
それだけでも、充分に偉大と見るべきなのかな。
余談ですが、子供の頃夏休み中によくTVのワイドショーで
「子供に戦争体験を語る」みたいな企画をやっていました。
小学生の私は、子供らしくもなく(?)結構真剣に見ていたものです。
そんな中で覚えているのが、このサイパン島で生き残ったご婦人の体験談。
後に「バンザイクリフ」と呼ばれる断崖の上から、
民間人たちが天皇陛下バンザイと叫びながら海へ飛び込んで自殺したのですね。
その方も、もう少しで飛び込むところだった。
けれどその寸前、遥か下方の岩に打ち付ける波の間に、
子供の赤い下駄が一つ浮かんでいるのが見えたそうなのです。
ものすごい高度の崖ですから、
実際にはほんのかすかな赤い点でしかなかったのかもしれません。
けれどそのとき、おそらく彼女にはそれがクローズアップして見えた。
それを見たとたん、涙が次から次からあふれ出て、
もう飛び込むことが出来なくなってしまった、というのです。
私も、子供心にその赤い下駄のイメージが焼き付いてしまったようで、
未だに覚えているのです。
さて、しかし、もし万が一日本でも戦争が始まったとして、
私たちは一体何に忠誠を誓って命をかけようとするのでしょう。
そういう心の芯になるものが、無くて幸せなのか、
いや、それがあった方が強いようにも思える。
・・・そんな事態にならないことを祈るだけですかね。
なんとも軟弱な結論でした。

竹野内豊は、この役によく合っていましたね。
元々地理の教師であったという大場大尉。
そういうイメージにはぴったりです。
ただやっぱり、この方のどこがすごいのか???
というのはわかりにくい・・・。
これは役者の責任ではないように思いますが。
むしろ特筆すべきなのは唐沢寿明の堀内一等兵。
スキンヘッドに派手な入れ墨。
このヤクザ男、本人が一番楽しんだように見受けられます。
まあ、いいんじゃないでしょうか。
「太平洋の奇跡/フォックスと呼ばれた男」
2011年/日本/128分
監督:平山秀幸・チェリン・グラック
出演:竹野内豊、唐沢寿明、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、阿部サダヲ