映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「飲めば都」北村薫

2014年01月09日 | 本(その他)
読むほどに、酔うほどに・・・

飲めば都 (新潮文庫)
北村 薫
新潮社


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人生の大切なことは、本とお酒に教わった
―日々読み、日々飲み、
本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。
新入社員時代の仕事の失敗、
先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、
小説と作家への深い愛情…。
本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は?
本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。


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お酒大好きの女性文芸編集者、小酒井都のストーリーです。
ワーキングガール小説とは言いますが、
そこがやはり北村薫氏の筆ですから、文体も落語を思わせる歯切れの良さ。
そこに文学や言葉に関わる様々な薀蓄とユーモアが漂います。
そしてもちろん恋愛模様もあり、楽しい! 
眉毛のある猫を描く版画家というのも登場しますが、
つまりこの本のカバー表紙の猫、
すなわち大野隆司さん描くところの猫がモデルのわけですね!
確かに、これはいい! 


そして私が最も強く感じたのは、本巻の解説で豊崎由美氏がおっしゃっていますが、
著者はどうしてこんなにも女心をわかっていらっしゃるのか、ということです。
覆面作家としてデビューした当時、
北村薫=女性説がささやかれたというのも有名な話ですが、
それも無理のないこと。
本作で、今をもっても、その女性心理の鋭い捉え方は健在ということを証明しましたね。
本作には他にも働く女性がたくさん登場しますが、
それぞれに個性的でしっかり生きていて、皆大好きです。
女性も一生の仕事を持ちながら結婚し家庭を築いていく。
そういうことが、当たり前になってきたなあ・・・という感慨もあります。
うれしいですね。
私もちょっと一杯やりたくなってしまいました。
親しい人とともに美味しいものを食べて飲んで笑って・・・、
それができる人生はまあ、幸せと言っていいのじゃないかな?


「飲めば都」北村薫 新潮文庫
満足度★★★★☆