映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「星籠の海 上・下」島田荘司

2014年01月13日 | 本(ミステリ)
鞆の浦、星籠の秘密

星籠の海 上
島田 荘司
講談社


星籠の海 下
島田 荘司
講談社


* * * * * * * * * *

瀬戸内海、松山沖に浮かぶ興居島の湾に、連続して死体が流れ着く―
奇妙な事件の調査を依頼された御手洗潔は、石岡和己とともに瀬戸内へ。
解決への鍵を求めて訪れた場所は、
古代より栄えた「潮待ちの港」、鞆の町を擁する広島県の福山市だった。
しかし、御手洗たちの到着直後に発生した死体遺棄事件にはじまり、
鞆もまた不穏な気配を漂わせていた。
これは瀬戸内を揺るがす一大事の兆しなのか!?
古からの港町に拡がる不穏な団体の影―
怪事件の続く「時計仕掛けの海」に、御手洗潔が挑む!
圧倒的な面白さ!
ミステリー界の最先端に立つ巨匠が放つ渾身の一撃!(上)


複数の死亡事件の背後に見え隠れする、ある団体の影―疑惑の究明に動きながら、
御手洗潔は事件関係者の大学助教授とともに、
幕末に老中首座を務めた福山藩主阿部正弘と、
かつて瀬戸内を制した水軍の秘密に迫っていく。
そこに、鞆に暮らす革職人一家が襲われる凄惨な事件が発生。
これを糸口に、御手洗の推理で炙り出される事件の全容。
そして「潮待ちの港」の歴史に秘された奇跡とは―!?
御手洗潔、国内編最終章。(下)


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待ってました! 
久しぶりに御手洗潔と石岡くんのコンビ登場。
瀬戸内海を舞台に、事件は戦国時代や幕末にも関連し、
非常に読み応えのあるミステリとなっています。


広島県の福山市、鞆(とも)の町が主な舞台となりますが、
この鞆の浦は古代から海上交通の拠点として栄えたところ。
というのも、瀬戸内海の潮の流れに関係するのですね。
その潮の流れを熟知していたの村上水軍で、
そのために織田信長が毛利氏を攻めあぐんだ・・・。
信長が持っていたという巨大な鉄の船。
それを破るために考案されたと思われる村上水軍の武器=星籠(せいろう)。
そしてそれがまた、幕末、ペリーが乗ってきた黒船に対抗するために
その資料が掘り起こされたのでは・・・と、
展開する歴史ミステリ、
私的にはここが一番面白かった。
歴史は、つまり科学だなあ・・・などと1人納得してしまいました。
いつもこんなふうに、歴史や科学を説いてくれる島田荘司マジック
だから好きなのです!!


また本作は、それとは別に、
オウム真理教まがいのカルト宗教組織の危険性を訴えるストーリーでもあります。
国際的にも勢力を伸ばしているその教祖の正体は、
そして本当の狙いは・・・。


更には、
演劇俳優を目指して上京するも、夢敗れる男女。

福島から転居してこの地に来たけれども周りの子と馴染めず、
虐めにあっている少年、そしてその少年に手を差し伸べようとする男。

様々な人々の思いや行動が錯綜。
けれどそれが最後にしっかりと収束してゆく。
さしもの御手洗も最後の最後に諦めの心境に達した時に起きる奇跡。
なんとも劇的で感動に満ちています。
鞆の浦の風景も素晴らしいようですね。
そういえば一昨年私は広島へ行ったのですが、
そこへは寄りませんでした。
う~ん、残念。
この本を読んでいれば絶対に寄ったと思うのですが・・・
まあ、いつかのお楽しみということにしましょう。

「星籠の海 上・下」島田荘司 講談社
(Kindle版にて)
満足度★★★★★