映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕が星になるまえに

2014年01月16日 | 映画(は行)
大自然の中で自分の死と向き合う時



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今人気急上昇中のベネディクト・カンバーバッチ初主演作品
・・・ということでなければ、この地味な作品、
日本では日の目を見なかったかもしれません。



末期ガンに冒された青年ジェームズ(ベネディクト・カンバーバッチ)が、
3人の親友と共に「世界で一番好きな場所」へ旅をする物語です。
それは車の旅ではなくて、ウェールズの大自然の中をゆく
トレッキング&キャンプの非常にゆっくりとした旅。
しかし、ジェームズの体力はもうほとんど尽きかけているため、
カートに乗せたり、おぶったり、困難な道行でもあります。
途中、アクシデントでテントを燃やしてしまったり、
カートを失ってしまったり、
ほとんど遭難のような状況で目的地のパラファンドル湾にたどり着きます。
そこでジェームズは、ある決意を皆に打ち明けるのです。



おそらく学生時代ぐらいから付き合いのある、仲の良い4人組だったのでしょうね。
はじめのうちははしゃぎ回り、まるで小学生のキャンプのようだったのですが・・・。
大自然の中を行くと、次第に心の鎧も消え失せて、
本音がむき出しになっていくようです。
互いの今現在の人生の有り様を非難し、罵り合ってしまうことも・・・。
ついイライラと仲間を批判するジェームズに対して、
「そういうおまえは今まで何をしていたんだ」
とまで、つい言ってしまう。
けれども互いの本音をさらけ出したあとに、
それぞれの抱える痛みの共感が戻ってきます。



ジェームズの、自分だけに未来がないという悲しみ、憎しみ、無念・・・
そういうものがひしひしと伝わってきます。
いや、これ本当に演技なのですよね。
どう見ても実際の末期ガン、
余命いくばくもない青年そのものに思えてしまう。
そして彼らを見守る友人たちの心境も・・・。
非常にクオリティの高いドキュメンタリー風作品だと思います。

「僕が星になるまえに」
2010年/イギリス/92分
監督:ハッティ・ダルトン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、J・J・フィールド、トム・バーク、アダム・ロバートソン
自分を見つめる旅度★★★★☆
満足度★★★★☆