映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ハロルドが笑う その日まで

2016年12月11日 | 映画(は行)
切なくもユーモラス



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ノルウェーの街で40年以上家具店を営み
クオリティの高い家具にこだわり続けてきたハロルド。
ある日、店の目の前にチェーンIKEAの店舗がオープンし、ハロルドの店は閉店に追い込まれてしまいます。
おまけに認知症の妻もあっけなく亡くなってしまい、
ハロルドはすべてがIKEAのせいのように思われ、怒りをつのらせます。
そこで、IKEA創業者カンプラードへの復讐を決意。
スウェーデンのエルムフルトへ行き、カンプラードを誘拐しようとします。



・・・といえば妙にシリアスな復讐物語のように思えるかもしれませんが、
そうではなく、とてもゆるい、切なくもユーモラスな作品なのです。
途中で、孤独な少女エバも計画に加わったりもしますが、結局は行き当たりばったり。
たまたまカンプラードの方からやって来るという展開には笑ってしまうほかありません。
そしてまた、ハロルドも本気で身代金が欲しいとか、殺してしまおうとか思っているわけでもなく、
あっさりカンプラードを誘拐してしまったことに、逆に戸惑ってもいる。


カンプラード自身も、大衆向けに安価な家具を手軽に買えるようにしたい、
そういう思いで、これまで頑張ってきたのでしょう。
そうして、大きなチェーン店となり莫大な財産を持つようにもなった。
しかし今、孤独で老いた姿を晒しているのです。
そんな彼といるうちに、次第にハロルドも憑き物が落ちたようになっていくのです。



なんとも味がありますねえ・・・。
エバの、老人二人との距離感がいいなあ・・・と思いました。
接近しすぎず、突き放しもせず、甘えるべきところでは甘える。
彼女自身の実は厳しい立場も、ハロルドを冷静にさせた要素の一つなのかもしれません。
でも、彼女はまだ若いから、きっとなんとかなるだろう、
そういう希望をもまた、ハロルドはもらったのでしょうね。
ノルウェーの、言葉少なでおかしみのある切ないストーリー。
好きです。


ハロルドが笑う その日まで [DVD]
ビョルン・スンクェスト,ビヨルン・グラナート,ファンニ・ケッテル,グレテ・セリウス,ヴィダル・マグヌッセン
TCエンタテインメント


「ハロルドが笑う その日まで」
2014年/ノルウェー/88分
監督・脚本:グンナル・ビケネ
出演:ビョルン・スンクェスト、ビョルン・グラナート、ファンニ・ケッテル
切ないおかしみ度★★★★★
満足度★★★★☆