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「迷子の王様 君たちに明日はない5」 垣根涼介

2016年12月09日 | 本(その他)
真介の明日は?

迷子の王様: 君たちに明日はない5 (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社


* * * * * * * * * *

「会社を辞めて、これからどうするつもりなんですか?」
リストラ面接官として村上真介が今回対峙するのは―
鼻っ柱の強い美容部員、
台湾に身売りした家電メーカーのエース研究員、
ペースを狂わせる不思議ちゃん書店員。
そして最後にクビを切られるのは、なんと真介自身!?
変わりゆく時代を見据え、働くこと=生きることの意義を探す人々を応援する
人気シリーズ、旅立ちの全四話。


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大好きな「君たちに明日はない」シリーズの第5弾。
しかし本の帯には「人気シリーズ、ついに完結!」との文字が・・・。
えーっ、もう終わっちゃうの・・・と思いつつ。


最後には真介自身がクビ!という、意外な展開を見せます。
まあ、実際にはクビというよりも、
社長が会社をたたむことにする、ということなのですが・・・。
となると、その後真介はどういう方向へ進むのか、
というところがとても気になるところなのですが、
一応の方向性をもたせながらも、まだ含みがある、というような終わらせ方、
悪くはないですね。
このシリーズの方の初めの方は、真介と恋人の陽子さんのいちゃつくシーンが多かったような気がするのですが、
最近は、まあ、相変わらず仲はいいですが、ラブラブなシーンがなくなっているのがちょっとさみしい。


本巻の中で、私がいいなあ、と思ったのは「さざなみの王国」の、佐久間香織。
彼女は極度の人見知りで、真介との面談に現れたときも緊張しまくり。
ただただ、相手の言葉に頷くばかりで、ほとんど自分からは言葉を発しない。
けれども、何かすごく一生懸命なことは感じられて、憎めない。
こんな彼女は、書店に勤務しているのですが、この仕事が嫌ではない。
いえ、この仕事というよりも「本」が好きなんですね。
あ、だから私は余計に親しみを感じてしまうのかもしれませんが。
彼女は、仕事を「修行」だと考えているのです。
人付き合いが苦手な自分に対しての修行。
人を押しのけたりするのがキライな彼女は、
結局今勤めている書店を退職することになるのですが、
その後選んだ道は、なるほどと納得の行くものでした。


本当に、職業というのは結局その人の人生ですね。
「儲けることができる」ことよりも、「自分が誰かのために何かできる」ことが大事で、
収入は後からついてくる(そう、多くはないでしょうけれど)というような部分もありまして、
いいなあ・・・と思いました。
なんだか、一旦退職したからといって、ボケボケしていては申し訳ないような気がしてきた・・・。

「迷子の王様 君たちに明日はない5」垣根涼介 新潮文庫
満足度★★★★★