無駄に繊細な筆致
* * * * * * * * * *
世界は苦手なもので溢れているけれど、今日もなんとか暮らしています。
読むとどうでもいい気分になって酒でも飲んで眠りたくなる、脱力系エッセイ集。
居酒屋の店内で迷子になり、
電話でカジュアルに300万の借金を申し込まれ、
ゴミ分別の複雑さに途方に暮れる……。
キミコさん(趣味・昼酒)の「苦手」に溢れた日常を、
無駄に繊細な筆致で描きます。
* * * * * * * * * *
なぜでしょう、正直、くだらないとは思いつつ・・・、
なぜか書店の店頭で見かけると、手に取らずにはいられない、
麻薬のように私をひきつけて止まず、止められないキミコ本・・・。
一見ダラダラとした日常をそのまま記述したように見えて、
文章の表現、構成等にはセンスのキラメキを隠し持っています。
そしてまた、自己保身のかけらもない思い切りの良い自虐ネタにも、
敬意を表したくなってしまうのです。
札幌在住の親近感ということもありますが、大好きです!キミコさま。
さて、本巻は著者の苦手な物について書かれたエッセイ。
共感を呼ぶものもあれば、え?そうなの?というものもあり、
けれどそれはそれでまたおかしい。
私がすごく「あるある」と思ったのは、
キミコさんが洋画を見て、登場人物が皆同じ顔に見えて区別がつかなくて困る、
というところ。
いつも必ずというわけではないのですが、
誰が誰やらわからないのでストーリーもこんぐらかって最期までなんだかよくわからない、
ということが私にもあります。
あ、それで今気づいたのですが、
私が政治・経済ネタの映画が苦手なのはそのせいがあるのかも・・・。
多くの場合こういう作品は皆スーツを着てきちんとした髪の男性が多く登場します。
くるくる巻き毛の長髪とか、無精髭の人なんかあまり出てこない。
とはいえ、最近私は、以前よりは混同率は下がっていると思います。
というのは、好きな俳優さんが増えたから。
さすがに好きな俳優さんなら、どこでどんな役をしていてもわかります。
キミコさんによれば、登場人物は男女、老人と子供、太った人・痩せた人、ハゲとフサフサ、
これだけで表現せよ、と。
確かに、それならわかりやすい。
逆に西洋の方は東洋人がみな同じ顔にみえるということを聞いたことがあります。
最近TVニュースを見て思ったのですが、
西洋の方には朴槿恵大統領も小池都知事も同じに見えるのではないかなあ・・・なんて。
余談が多くなりすぎました。
エッセイといっても、あるところではほとんど小説仕立てになっているところもあります。
例えば「冤罪の行方」。
ある家の定年退職した男性が、つれづれに庭造りをはじめた。
ところがいつも白く大きな猫が庭を荒らしに来る。
近所のウワサによれば、それは裏の家の猫であるらしい。
しかし小市民である彼には、文句を言いに行くことができない。
時折庭で「裏のカンダ家には困ったものだ・・・」と妻や知人に愚痴を言うのみ。
常とは異なるこのストーリーの行方はいかに!と気をもむところなのですが、
そこが著者の上手いところなんですよねえ。
ちゃんと話は彼女のもとにつながっていきます。
なかなか切ないです。
この本の紹介文「無駄に繊細な筆致」、
なるほど、上手いことを言うなあ・・・
「苦手図鑑」北大路公子 角川文庫
満足度★★★★☆
![]() | 苦手図鑑 (角川文庫) |
北大路 公子 | |
KADOKAWA |
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世界は苦手なもので溢れているけれど、今日もなんとか暮らしています。
読むとどうでもいい気分になって酒でも飲んで眠りたくなる、脱力系エッセイ集。
居酒屋の店内で迷子になり、
電話でカジュアルに300万の借金を申し込まれ、
ゴミ分別の複雑さに途方に暮れる……。
キミコさん(趣味・昼酒)の「苦手」に溢れた日常を、
無駄に繊細な筆致で描きます。
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なぜでしょう、正直、くだらないとは思いつつ・・・、
なぜか書店の店頭で見かけると、手に取らずにはいられない、
麻薬のように私をひきつけて止まず、止められないキミコ本・・・。
一見ダラダラとした日常をそのまま記述したように見えて、
文章の表現、構成等にはセンスのキラメキを隠し持っています。
そしてまた、自己保身のかけらもない思い切りの良い自虐ネタにも、
敬意を表したくなってしまうのです。
札幌在住の親近感ということもありますが、大好きです!キミコさま。
さて、本巻は著者の苦手な物について書かれたエッセイ。
共感を呼ぶものもあれば、え?そうなの?というものもあり、
けれどそれはそれでまたおかしい。
私がすごく「あるある」と思ったのは、
キミコさんが洋画を見て、登場人物が皆同じ顔に見えて区別がつかなくて困る、
というところ。
いつも必ずというわけではないのですが、
誰が誰やらわからないのでストーリーもこんぐらかって最期までなんだかよくわからない、
ということが私にもあります。
あ、それで今気づいたのですが、
私が政治・経済ネタの映画が苦手なのはそのせいがあるのかも・・・。
多くの場合こういう作品は皆スーツを着てきちんとした髪の男性が多く登場します。
くるくる巻き毛の長髪とか、無精髭の人なんかあまり出てこない。
とはいえ、最近私は、以前よりは混同率は下がっていると思います。
というのは、好きな俳優さんが増えたから。
さすがに好きな俳優さんなら、どこでどんな役をしていてもわかります。
キミコさんによれば、登場人物は男女、老人と子供、太った人・痩せた人、ハゲとフサフサ、
これだけで表現せよ、と。
確かに、それならわかりやすい。
逆に西洋の方は東洋人がみな同じ顔にみえるということを聞いたことがあります。
最近TVニュースを見て思ったのですが、
西洋の方には朴槿恵大統領も小池都知事も同じに見えるのではないかなあ・・・なんて。
余談が多くなりすぎました。
エッセイといっても、あるところではほとんど小説仕立てになっているところもあります。
例えば「冤罪の行方」。
ある家の定年退職した男性が、つれづれに庭造りをはじめた。
ところがいつも白く大きな猫が庭を荒らしに来る。
近所のウワサによれば、それは裏の家の猫であるらしい。
しかし小市民である彼には、文句を言いに行くことができない。
時折庭で「裏のカンダ家には困ったものだ・・・」と妻や知人に愚痴を言うのみ。
常とは異なるこのストーリーの行方はいかに!と気をもむところなのですが、
そこが著者の上手いところなんですよねえ。
ちゃんと話は彼女のもとにつながっていきます。
なかなか切ないです。
この本の紹介文「無駄に繊細な筆致」、
なるほど、上手いことを言うなあ・・・
「苦手図鑑」北大路公子 角川文庫
満足度★★★★☆