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「カラスの教科書」 松原始

2016年12月28日 | 本(解説)
身近だけどよく知らないカラスについて

カラスの教科書 (講談社文庫)
松原 始
講談社


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ゴミを漁り、カアカアとうるさがられるカラス。
走る車にクルミの殻を割らせ、マヨネーズを好む。
賢いと言われながらとかく忌み嫌われがちな真っ黒けの鳥の生態をつぶさに観察すると、
驚くことばかり。
日々、カラスを追いかける気鋭の動物行動学者がこの愛すべき存在に迫る、
目からウロコのカラスの入門書!


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動物行動学者さんによる「カラスの教科書」。
確かにとても身近だけれど、あまり良く知らないカラスのことを
きちんと知りたくなりました。


実は今年の春のこと。
とある川べりの公園に和歌の書かれた碑が幾つかあるのに気づいて、
じっくり読んでいたのです。
すると、その一つの上にカラスが止まってじーっとこちらを見ています。
ちょうどこちらの顔の高さと同じくらいの位置で、
見ているというよりも睨まれている、ガンつけられている、という感じ。
負けじと私も睨み返したのですが・・・
しかし、負けました。
内心、「なんでこんなところでカラスとにらめっこしてるんだろ、私」
という思いもあり、馬鹿らしくなって、背中を向けて歩き始めると・・・、
後ろから私の頭の横をかすめて飛んできました。
それも2度。
きっとその近くの木に巣があって、幼鳥もいたのだろうと思います。
時期的にもそういう時期でした。
ここの公園ではよく人がカラスに襲われると聞いたこともあるので、
ついに私もやられてしまったわけです。


さて、本巻にはそんな時の対処法も書かれていました。
カラスが人を襲うのはこんな風にヒナを育てているときのみ。
カラスだって自分よりずっと大きい人間が本当は怖いので、
この時期以外は襲ったりはしない。
そして、ほとんどは後ろからかすめ飛ぶだけ。
そのときに、足で頭を蹴るようなこともあるけれど、怪我をするほどではない。
あのくちばしで人をつついたりはしないということです。
だってそうするとカラスだって飛び続けることができないから、自分も怪我をしてしまいます。
襲われたと思って逃げようとして、慌てて転んでけがをすることのほうが多いそうです。
こんな時期のカラスを見かけたらあまり近寄らないほうが良いわけですが、
そうも行きませんよね。
いつもの通り道に勝手にカラスが巣を作っちゃうわけですから。
だから私のように、明らかにカラスが威嚇しているとわかったときには、
すぐに立ち去るのがいいそうですが、
無防備に背中を見せてしまうのではなく、
時々後ろを振り返って「見てるぞ!」とわかるようにするといいのだとか。
う~ん、私もあのときはにらめっこしたままそーっと後ずさりしながら立ち去ればよかった・・・と、
今更ながら思う次第。
熊と出会ったときも目をそらすな、といいますもんねえ・・・。


それから、ひとくちに「カラス」と言いますが
私たちの身の回りにいるのは「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」。
その見た目の違いくらいは私も知っていたのですが、
本巻でその住み分けとか鳴き方、歩き方、色々と違うことがわかりました。
こういうことを知ると、家の近所のカラスにも妙に親近感を持ってしまいます。
あ、君はハシブトくん。
あんたはハシボソさんだねえ・・・、
なるほど~、などとひとりごちてしまうこの頃。


「カラスの教科書」松原始 講談社文庫
満足度★★★★☆