映画と本の『たんぽぽ館』

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こころに剣士を

2016年12月27日 | 映画(か行)
これぞ「剣士」の心意気



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エストニアが舞台の、実話に基づく物語です。


エストニアは2次大戦中はドイツに、大戦末期からはソ連の占領下にありました。
その、1950年代初頭、エストニアの田舎町ハープサルに、青年エンデルがやってきます。
彼は元フェンシングのスター選手。
そして、以前ドイツ軍に従軍していたために、ソ連の秘密警察から追われる立場にあります。
しばらく身を隠すためにこの町にやってきて、小学校教師の職を得ます。
そしてそこで、課外活動としてフェンシングを教えることになるのです。
子どもが苦手、というより、どう扱っていいかわからないエンデル。
これまで子どもと接することがあまりなかったのでしょう。
それでも、子どもたちの熱心さと純真さに触れるうちに、
彼も心動かされていきます。

そんなある日、子どもたちが、レニングラードで開催される全国大会に出たいと言い出します。
わざわざ、レニングラードから身を隠すためにここへ来ているのに・・・。
彼には大変危険です。
「大会にはまだ出られない」と彼は子どもたちに告げますが・・・。



結局、エンデルは子どもたちの熱意に負け、
身の危険を犯してレニングラードへ行くわけですが、
この心意気こそが「剣士」なのですね。
始めのうち、葦や木の枝で剣を作り、後には中古の装備を得て、
かと思えば大会では電気剣を使用することになっていて、慌ててみたり。
中央から見れば正に、田舎者でしょう。
そんな子どもたちの活躍もまた、胸がすきます。



それから、当時のソ連の体制というのがまた、きついですね。
子どもたちの多くの父親は、ソ連に強制連行されてしまっていて、不在なのです。
そしてまた、フェンシングの部活存続についての多数決を取るときに、
反体制的な意見を述べたものが、後に秘密警察により連行されてしまったりする。
こんな中では本当の意見なんかいうことはできません・・・。

美しいエストニアの風景の中で、こんな歴史があったことを改めて知りました。
重い内容ではありますが、
ともかく子どもたちのキラキラした瞳と明るい表情に救われます。
おすすめの作品です。



「こころに剣士を」
2015年/フィンランド・エストニア・ドイツ/99分
監督:クラウス・ハロ
出演:マルト・アバンディ、ウルスラ・ラタセップ、リーサ・コッペル、レンビット・ウルフサク、ヨーナス・コック
歴史発掘度★★★★★
子どもたちの熱意★★★★☆
満足度★★★★☆