題名ほどコミカルな話ではありません・・・
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マダムとメイドが登場する話・・・ということで
少し古い時代を想像していましたが、いやいや、しっかり“今”の話です。
パリに越してきた裕福なアメリカ人夫婦、アン(トニ・コレット)とボブ(ハーベイ・カイテル)。
セレブな友人を自宅のディナーに招待。
ところが手違いで出席者が不吉な13人になってしまったのです。
そのため、アンは急遽スペイン人のメイド、マリア(ロッシ・デ・パルマ)を
14人目の出席者に仕立て上げます。
決してしゃべりすぎないようにと念を押して。
ところがマリアは下品なジョークを繰り出してしまい、しかしそれが皆には大受けしてしまったのです。
すっかりマリアを気に入ってしまった英国紳士は、マリアに求愛しますが・・・。
ややこしいのはこの家の小説家である息子が面白がって、
この紳士に
「マリアはさる高貴な家の出だが身分を隠して来ている。」
などとインチキを吹き込むのです。
だから彼はマリアに
「私はあなたの秘密を知っているけれども、全然気にしない。」
といいます。
彼が自分をメイドだと知っていると思ったマリアは、
後ろめたさもなく恋にのめり込んでいきますが・・・。
本作、この勘違いの恋模様がテーマかと思えば実はそうではなく、
そうしたメイドを見るマダム、アンの心持ちがテーマといっていいでしょう。
アンは、顔もスタイルもイマイチの、しかもメイドがモテてしまったことに
嫉妬し、腹を立てているのです。
というのも、すでに夫の愛は自分にはないし、他の誰も自分を愛してくれはしない。
孤独の暗い淵にいる彼女は、遠まわしに、
フィギアスケートをしているマリアの娘への援助を打ち切られたくなければ
男と別れるように言ったりもします。
嫉妬のために、ついには最も醜い本性を現さなければならなくなるアン。
しかし、その結末もまた、シビアなものなのでした・・・。
このコミカルな題名につられてみると、
ちょっと肩透かしを食いそうな作品なので、ご注意。
けれど、
「私がメイドなのはスペインからの移民だからだ。」
というマリアの啖呵と最後の決断は小気味よかったです。
そうですよ、金持ちが偉いのか!!
あんたは金持ちの男の妻というだけじゃないの!!
結局そういう自身の立場の寄辺なさに、アンも心の奥では気づいていたのかもしれないですね・・・。
<ディノスシネマズにて>
「マダムのおかしな晩餐会」
2016年/フランス/91分
監督:アマンダ・ステール
出演:トニ・コレット、ハーベイ・カイテル、ロッシ・デ・パルマ、マイケル・スマイリー、トム・ヒューズ
勘違い度★★★☆☆
満足度★★★☆☆
ところで、この映画館ディノスシネマズ札幌の入っているビルが
老朽化のため取り壊しが決まったとのニュースがありました。
今すぐではないにせよ、ここの映画館がなくなってしまうのはとても残念です。
ずいぶんお世話になったので。
このあとどうなってしまうのかとても心配です。
結構マイナーな作品も上映しているところなので、
ここがなければ札幌の映画事情は悲惨なものになってしまいます。
状況を見守りたいです・・・。