映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

夜明け

2019年01月21日 | 映画(や行)

耐えがたい思いの中にいた二人

* * * * * * * * * *

是枝裕和、西川美和が立ち上げた制作者集団「分福」に所属し、
是枝・西川作品で監督助手を務めた広瀬奈々子監督のデビュー作。
おまけに柳楽優弥さん主演ということで、まあこれは外せません。

川岸で倒れていた青年を助け、自宅に連れ帰った哲郎(小林薫)。
青年(柳楽優弥)は自らをシンイチと名乗りましたが、
自分の身の上やこの町に来た理由などを語ろうとしません。
哲郎もあえて詮索しようとせず、行くあてのなさそうな青年をこの家に置くことにします。
そして哲郎は自らの経営する木工所でシンイチに技術を教え、
シンイチは周囲にも受け入れられていきます。
ところでシンイチはある秘密を抱えており、シンイチというのも、実は本名ではありません。
また一方、哲郎もつらい過去を持っていたのです。
二人は互いの過去を埋め合うように、
まるで家族のような生活にやすらぎを得ようとするのですが・・・。

柳楽優弥さんのひたすら寡黙で何を考えているのかわからない感じ、
久々に「誰も知らない」のときのあの少年のイメージと繋がります。
けど私はもっとふてぶてしい感じの彼のほうが好きですけどね・・・。



互いの傷をなめ合うようなエセ親子の関係がハッピーエンドとなるはずがありません。
ただ、そこで癒やされた部分は確かにあるのだろうな。
こんな偽の親子関係をつなごうとあがくのが哲郎の方で、
無理だと思うのがシンイチの方。
これがやはり年齢の差なのだろうと思います。
青年はそして、自ら歩み始めることであらたな「夜明け」を迎えるわけですよね。

 

う~ん、全体を通して悪くはないのだけれど、何かパンチ不足のような気がします。
今の柳楽優弥さんが活かされていません・・・。
あ、しいて言えばつい笑ってしまうような場面もあればよかったのかも。
終始暗いもんなあ・・・。

<シネマフロンティアにて>
「夜明け」
2019年/日本/113分
監督・脚本:広瀬奈々子
出演:柳楽優弥、YOUNG DAIS、小林薫、鈴木常吉、堀内敬子