青春探偵物語
ストリート・キッズ (創元推理文庫) | |
Don Winslow,東江 一紀 | |
東京創元社 |
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1976年5月。
8月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、
行方不明のわが娘を捜し出してほしいと言ってきた。
期限は大会まで。
ニールにとっての、長く切ない夏が始まった…。
プロの探偵に稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、
ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する。
個性きらめく新鮮な探偵物語、ここに開幕。
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やはりまだドン・ウィンズロウ&東江一紀を読みたくて、この本を手に取りました。
これはなんと、ドン・ウィンズロウのデビュー作。
あの「犬の力」の麻薬カルテルの話からすると、
コミカルで、あれ程の殺伐さもないので楽しく読めました。
ただし、ドキドキハラハラさせられるのは同じです。
「ストリート・キッズ」は言うまでもなく帰る家のない子供たちのことですが、
本作の主人公ニール・ケアリーは、ねぐらになる家がないわけではなく、
心休まる家庭がなかったのです。
父親はおらず、母親は麻薬中毒で何日も戻らないこともあります。
食べ物もお金もない状況で、ニールはスリなどをして稼ぐしかなかった。
そんな少年を拾ったのが探偵のジョー・グレアム。
ニールを放って置けないと思った彼は、
ニールにしっかりとした生活習慣とプロの探偵としての技術を叩き込みます。
この辺のことも詳しく描かれていて、なかなか面白いのです。
そして成長し、大学院で英文学を学びつつ探偵業をしているニールのもとに飛び込んできた依頼。
上院議員のあばずれ娘が行方不明のため、
彼女を探し出して、連れ帰ってほしいというのです。
どうやらロンドンにいるらしいということくらいしかわからない。
ニールは不本意ながらロンドンへ・・・。
そこで出会うのも、気のいいやつやら危ないやつやら、
いろいろそれぞれでなんとも楽しい。
いえ、一番楽しいのはニールとグレアムの会話なんですけどね。
お互いに減らず口の応酬。
しかしそれは互いを親しく思い信頼しあっているからこそ、というのはすぐに分かります。
ケンカもメカにもからきし弱いニールですが、
その頭脳と勇気で難関を切り抜けていく。
誠に胸のすく冒険物語。
このシリーズは他にも4冊出ていまして、ボチボチと読んでいこうかと思います。
「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズロウ 東江一紀訳 創元推理文庫
★★★★☆