映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

2019年01月09日 | 映画(か行)

大泉洋さん以外は考えられない

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私が本作の原作本を読んだのはずいぶん昔です。
「今頃になって映画化かよ。」っていいたいくらい。
でも札幌が舞台で大泉洋さんが鹿野さん役と聞けば、
いやいや、全然ノープロブレム。
よくやってくれました!と態度を一変させていただきます。

筋ジストロフィーを患いながら、自らの夢や欲に素直に生きようと決意し、
ボランティアに支えられながら暮らしている鹿野(大泉洋)。
医学生の田中(三浦春馬)がボランティアの一人として鹿野のもとに通うようになります。
そして、田中が付き合っている彼女・美咲(高畑充希)も、見学気分でここにやってきます。
美咲は一時、鹿野のわがままぶりにキレたりもしたのですが、
やがて、わがままではあるけれどどこか憎めない鹿野に惹かれる気持ちもあり、
ボランティアとして力になっていくのです。
やがて、鹿野は自発呼吸が難しくなり、人工呼吸機をつけなければならなくなりますが・・・。
またそんな中で、自分の進路について考え直す岐路に立つ田中・美咲・・・。

重いテーマではありますが、これが大泉洋さんの持ち味と相まって、
おかしみがあり、見ごたえのある作品となっています。
ちょっと他の人の配役は考えられないですね。



鹿野さんは人から助けられるだけの存在のように見えながら、
やがてこの若い二人の心の支えになっていきます。
夜中に「バナナが食べたい」と言い出すわがままぶり。
けれど、健常者だって突然夜中にポテチが食べたくなってコンビニに走ることくらいあるはず。
(少なくても、私はないけど・・・)。
当たり前のことを当たり前にして生きようとする。
あくまでも病院ではなく自宅で。
そうしたあり方を貫く生き様が、
いつか周囲の人達に「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」って言っている気がします。

実話をもとにしている本作は、舞台もそのまま札幌。
札幌人の私には馴染み深い光景がいくつも出てきて、嬉しい限り。
北大構内、旭山公園、三角山の見える公園、勤医協の病院・・・。
いや~、ホントにご当地作品だわー。



上映館はあさイチ上映でも満席。
年配の方も多かったです。
そして、鹿野さんが倒れるようなシーンでは「あ、あ~」という
ため息のような悲鳴のような声があちこちから上がります。
なんだかほっこりした共感に包まれているようで・・・、さすが大泉洋さんのご当地作品。
他の映画とは雰囲気が違う、と感じた私でした。

<シネマフロンティアにて>

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」
2018年/日本/120分
監督:前田哲
原作:渡辺一史
出演:大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、竜雷太、綾戸智恵
生き方を考える度★★★★☆
ご当地度★★★★★
満足度★★★★.5