神がかりが薄れてゆく・・・
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レベレーション(啓示)(4) (モーニング KC) |
山岸 凉子 | |
講談社 |
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フランスの王位継承をめぐるイギリスとの百年戦争のただなか。
「フランスへ行け。王を助けよ」との啓示をうけたジャネットことジャンヌ・ダルクは
イギリス軍に包囲されたオルレアンの解放。
王太子の戴冠を果たすため、ランスを目指すことを進言する。
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さて、レベレーション、待望の新刊ではありますが・・・。
ジャンヌはついにオルレアンを開放。
そして、次にランスを目指すことになりますが・・・。
なんだか、次第に登場人物も増えるし、それぞれの思惑が何が何やら分かりづらくなってきます。
おまけに、ジャンヌは当初の何をやっても良い方に転がるという勢いは失せて、
次第に陰りを見せ始める。
こういう流れ、なんだか大河ドラマ「西郷どん」と同じだわー、と思ってしまいました。
まだ無名のうちの主人公のことはさしたる記録がないので、
著者の想像の翼を大きく膨らますことができます。
しかし、その人物が有名になってくると記録も多い。
そうすると物語は史実を追うことが精一杯になってきて、
いかにも登場人物の動きが窮屈になってきてしまうのですね。
「西郷どん」が終盤どんどんつまらなくなってきたのはそんなわけだったと思うし、
本作もどうも同じ匂いがする・・・。
人々にあれだけ熱狂的に祭り上げながら、最後は反逆者扱いで悲惨な末路・・・
というのも同じですもんねえ・・・。
ジャンヌは確かに「ランス」を目指せという神の声を聞いた。
でもその後、神の声が聞こえなくなってしまうのです。
だから本当はそこまでにしておけばよかったのかも・・・。
でも彼女は次にパリを目指すことにしてしまった・・・。
しかし、男どもがどうにもこうにものらりくらりと、戦いたくない様子・・・。
一人血気にはやるのはジャンヌのみって、
通常の「戦争」に対しての男女の位置が逆転しているように思える。
不思議です。
もしかするとこの時代、死傷者を増やさないために
あえてのらりくらりとするのが通常の「戦争」だったのでは?
その常識を打ち破り、怒涛の攻めをするジャンヌが勝ったのはある意味当然で。
ま、そのようなことを考えるとちょっと面白くはありますが・・・。
神がかりが次第にとけて、ただのヒトになっていくジャンヌを
この先見なければならないのかと思うと辛いです・・・。
「レベレーション4」山岸凉子 講談社モーニングKC
満足度★★.5