映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

喜望峰の風に乗せて

2019年01月14日 | 映画(か行)

海の男の感動ドラマではありません。念のため。

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「実話に基づく海洋冒険ドラマ」と何かの紹介文にあったのですが、ウソウソ。
これを「冒険ドラマ」といってしまうのは違うと思うのです。
少なくとも海の男の感動ドラマでは、ない。

1968年イギリス。
ヨットによる単独無寄港世界一周を競う、ゴールデン・グローブレースが開催されることになりました。
華々しい経歴を持つセーラーたちが参加する中、
航海計器の会社を経営するビジネスマン、
ドナルド・クロウハースト(コリン・ファース)が、名乗りを上げます。
彼は自身の設計したヨットで航海に乗り出しますが・・・。



クロウハーストは、会社の経営状況が悪く、賞金を稼ぎたい思いがあったのです。
成功すれば会社の宣伝にもなります。
ところが彼はこれまで趣味で近海を航海したことはあっても
外洋に乗り出した経験はなかったのです。
船を作る資金はスポンサーを見つけてどうにか工面できました。
しかし、もしこのレースをやり遂げられず途中棄権などした場合には
彼の会社もその他の資産もすべて投げ出すという契約・・・。



レースは一斉に出発するのではなく、参加者各々のタイミングで出発し、
世界一周して戻ってくるまでの期間の長さで成績を決めるのです。
資金もそこそこ、準備期間もほとんどない状態で、クロウハーストの出発は遅れに遅れるのですが、
スポンサーからせっつかれて、やめるわけにも行きません。
ついに出発の日。
しかしそこには旅立ちの高揚感は全く見られないのです。
結局船は欠陥だらけのポンコツ。
不安ばかりがクロウハーストの胸を占める・・・。



海洋冒険ドラマかと思っていた私は、すっかり予想を裏切られた展開になってしまいましたが、
この暗澹たる心の迷路をゆくドラマにはそれなりに引き寄せられました。
1968年という時代性がミソの話でもありますね。
今ならGPSで、船の位置など自分より先に当局の人が知ることすらできる・・・。

つまりは人間の強さではなく、弱さを描くドラマでした。
実話を基にしているというところが妙に納得させられます。


<ディノスシネマズにて>
「喜望峰の風に乗せて」
2017年/イギリス/101分
監督:ジェームズ・マーシュー
出演:コリン・ファース、レイチェル・ワイズ、デビッド・シューリス、ケン・ストット
迷走度★★★★☆
満足度★★★☆☆