映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

デイアンドナイト

2020年04月23日 | 映画(た行)

正義とその影

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山田孝之さんプロデュース、阿部進之介さん企画・原案・主演という異色作。

父の死の知らせを受け、実家へ戻ってきた明石(阿部進之介)。
父は、大手企業の不正を告発したために、逆に周囲から追い詰められて自殺してしまったのです。
困惑する明石に手を差し伸べたのは、父に世話になったという北村(安藤政信)。
北村は児童養護施設のオーナーであり、しかし、夜には全く別の顔を持っているのです。
子どもたちを生かすためには犯罪も厭わないという北村の考えに、
明石も惹かれるものがあり、彼の仕事を手伝うようになります。
しかし、次第に明石の中の善悪の境界線が崩壊していき・・・。

「善と悪」はどこで区別されるのか? 
境界があるとするならそれはどこに?
こうしたことがテーマとなりますが、作り手のこのテーマのこだわりには非常に力がこもっています。
ひしひしとそれを感じ取れるので、思わず見るのにも力が入ります。

そもそもは父が「正義」を行ったはずなのに、逆に周囲から責められ悪者扱いされてしまう。
北村は児童養護施設で多くの子どもたちの幸せのために尽くすことを自身の喜びとしている。
しかし、その資金のために、夜は闇の世界に身を投じている。
明石は、父の復讐も含め、やはり大手企業のリコール隠しを明るみに出そうとしますが
それでも周囲の反発は大きい。
その大手企業で成り立っている町なので、彼らにとっては
明石の動きを封じることこそが正義というわけです。
それぞれの正義を貫くために暴力が必要になり、最後にはそれが殺人へとつながってしまう。
それでもやはりそれは「正義」なのだろうか・・・。
明石は、最後の一線を踏みとどまることができるのか・・・?

 

デイアンドナイト。
昼と夜。
正義と、その影。
ずっしりとテーマが迫る作品でした。



清原果耶さんは、施設に預けられている少女。
高校を出た後は東京に出て父親を探したいと思っているのですが、
実はこの父親と北村には重大な関わりがあって・・・、というあたりも見所です。
彼女の透明な少女性がやはりいいなあ・・・。

<WOWOW視聴にて>
「デイアンドナイト」
2019年/日本/134分
監督:藤井道人
プロデュース:山田孝之
企画・原案:阿部進之介
出演:阿部進之介、安藤政信、清原果耶、小西真奈美、田中哲司

テーマ性★★★★★
満足度★★★★.5