昭和を振り返る
* * * * * * * * * * * *
小津安二郎監督作品。
ちょうどWOWOWで特集を組んでいたので、いくつかみてみましょうか、と。
あまり研究的に映画を見たりしない私なので、
恥ずかしながら小津作品、ほとんど見たことがありません。
地方出身の商社マン、佐竹茂吉(佐分利信)。
お見合いで結婚したのは上流階級の妙子(小暮実千代)。
2人は何かしっくりこないまま結婚して7・8年になります。
内緒で遊び歩く妻にも、夫は無関心。
お嬢様育ちの妙子はどこか田舎くささの残る茂吉が気に入らず、
鈍感だと思っているのです。
そんなある日、お見合いがイヤですっぽかしてしまった
姪・節子(津島恵子)のことについて、茂吉は言う。
「無理に結婚させても、自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ」と。
どこかうまくいっていない自分たちの関係をズバリと言われて、
妙子は傷ついてしまうのですね。
彼女は夫に口も聞かなくなり、ついには黙って神戸の友人のところに遊びに行ってしまう。
ところが、茂吉は急に海外出張が決まり、妙子に電報を打つのですが・・・。
見合い結婚でしっくりいかないままの夫婦。
それでも共に生活することでいつか2人の心は寄り添っていた・・・。
心のわだかまりを解きほぐすのはお茶漬けの味・・・。
そんな夫婦の機微を描く作品であります。
でも本作で面白いのは、この時代背景。
1952年。
私も生まれる前です・・・。
高層ビルなどなく、路面電車の電線が張り巡らされている東京の空。
お見合い結婚は当たり前ながら、若き姪の節子はそれに反発。
女性が近寄らないパチンコや競輪に飛びつく。
新しい時代の象徴みたいな子。
当時の人々の概ねの考え方がうかがえて非常に興味深い。
でも私が気に入らないのは、この家、
というか登場人物たちがあまりにも裕福であるということ。
この佐竹家、住み込みの女中さんがいて、
妙子はほとんど台所に入ったこともないようなのです。
そしてその台所にはなんと冷蔵庫がある!!
私の家で初めて冷蔵庫を買ったのは、私が小学生の頃ではないかしらん。
ましてや、昭和20年代で電気冷蔵庫があるなんて、
庶民には遠く高嶺の花であったはず。
思い立てば、夫にウソをついてではあっても温泉に出かけてしまえるというリッチさ。
実際、家にいてもすることがないのだから、遊びに行くしかないですけどね。
当時本作を見た一般庶民は、夫婦の感情がどうこうよりも、
このリッチな生活にため息が出たのではないかなあ・・・
と思ってしまった次第。
あ、でも一つ興味深いセリフが。
妙子が夫のことを「亀」に例えて言います。
「妻は家で甲羅を干している亀しか見ていない。
でも亀は外ではうさぎと競争したり、浦島太郎を乗せたり、
意外と頑張っている。」
そもそも、女性が外に働きに行くという選択肢もない時代
だからこそのセリフかも知れないけれど、まあ、言いたいことは伝わります。
色々と考えるべきところの多い作品なのでした。
<WOWOW視聴にて>
「お茶漬の味」
1952年/日本/115分
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
出演:佐分利信、小暮実千代、三宅邦子、津島恵子、鶴田浩二、笠智衆
時代性★★★★★
満足度★★★.5
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます