映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

麦子さんと

2014年01月10日 | 映画(ま行)
残念な・・・



* * * * * * * * * *

声優になることが夢の麦子(堀北真希)は、
パチンコ店に務める兄(松田龍平)と二人暮らし。
ある日、まだ幼いころに家を出たきり音信不通だった母・彩子(余貴美子)が現れ、
同居することになってしまいます。
麦子は母の記憶すらも殆どなく、
いまさら母親だといわれても冗談じゃない、と反発を隠せません。
 
・・・しかしまもなく、母は病で亡くなってしまいます。
納骨のために母の田舎を訪れた麦子は、
思いがけず町の人達に大歓迎を受けます。
麦子は母の若いころにそっくりで、
その母はアイドル歌手を目指して東京へ出て行ったというのです。



本作、監督は8年ほども前から構想を練っていたというのですが、
公開が今頃になってしまったのは、いかにもタイミングが悪かったですね。
アイドルになりたかった母・・・。
あまりにも「あまちゃん」にかぶってしまいました。
むろん、それがテーマの作品というわけではありませんが、
もう少し早ければ、この意外性はもう少し脚光を浴びたと思うのですが・・・。
残念なことですねえ・・・。


麦子は、母の思いを少しもわかろうとしなかった。
けれども人にはいろいろな事情もあって、やむにやまれぬこともある。
母がどのようにこれまで生きてきたのか。
そういうことを知れば母の思いと自分の思いが重なってくるのでしょう。

ですが東京へ出てきてどんな苦労が母にあったのか、
そういうところが描かれていなかったのがちょっと残念です。
母の故郷の描写も、「あまちゃん」のあの強烈な地方色を見てしまうと
物足りなく感じられてしまう・・・。
もしや、麦子の父はタクシー運転手だったとか・・・。
(あー、だからこんな連想を呼んでしまうところが、やはり時期が悪い!!)



麦子が、自分の中にくすぶっていた思いを、
ついイライラして、親身になってくれるミチル(麻生裕美)にぶつけてしまうシーンがります。
そこへ、いつも浮かれていて頼りになんかなりそうもない人が
「まるで、子供だな」と、たしなめる。
それが温水洋一さんなんですけどね、ちょっとカッコ良かったです。
麦子はずっと母親とは暮らしていなかったので、
こんなふうに本音をぶつけて喧嘩する相手がいなかったのか、とも思えます。
いずれにしても、ここでようやく麦子は大人へ向けて一歩前進。
良いシーンでした。


アニメ声優を目指すという麦子のために、
ほんの少し冒頭にアニメシーンも入っていますが、
それをもう少し随所に活かしても良かったように思います。
堀北真希さんの赤いスイトピーも少しでいいから聞きたかったな・・・。

「麦子さんと」
2013年/日本/95分
監督:吉田恵輔
出演:堀北真希、松田龍平、余貴美子、麻生裕美、ガダルカナル・タカ、温水洋一

可愛らしさ★★★★☆
満足度★★★☆☆

「飲めば都」北村薫

2014年01月09日 | 本(その他)
読むほどに、酔うほどに・・・

飲めば都 (新潮文庫)
北村 薫
新潮社


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人生の大切なことは、本とお酒に教わった
―日々読み、日々飲み、
本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。
新入社員時代の仕事の失敗、
先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、
小説と作家への深い愛情…。
本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は?
本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。


* * * * * * * * * *


お酒大好きの女性文芸編集者、小酒井都のストーリーです。
ワーキングガール小説とは言いますが、
そこがやはり北村薫氏の筆ですから、文体も落語を思わせる歯切れの良さ。
そこに文学や言葉に関わる様々な薀蓄とユーモアが漂います。
そしてもちろん恋愛模様もあり、楽しい! 
眉毛のある猫を描く版画家というのも登場しますが、
つまりこの本のカバー表紙の猫、
すなわち大野隆司さん描くところの猫がモデルのわけですね!
確かに、これはいい! 


そして私が最も強く感じたのは、本巻の解説で豊崎由美氏がおっしゃっていますが、
著者はどうしてこんなにも女心をわかっていらっしゃるのか、ということです。
覆面作家としてデビューした当時、
北村薫=女性説がささやかれたというのも有名な話ですが、
それも無理のないこと。
本作で、今をもっても、その女性心理の鋭い捉え方は健在ということを証明しましたね。
本作には他にも働く女性がたくさん登場しますが、
それぞれに個性的でしっかり生きていて、皆大好きです。
女性も一生の仕事を持ちながら結婚し家庭を築いていく。
そういうことが、当たり前になってきたなあ・・・という感慨もあります。
うれしいですね。
私もちょっと一杯やりたくなってしまいました。
親しい人とともに美味しいものを食べて飲んで笑って・・・、
それができる人生はまあ、幸せと言っていいのじゃないかな?


「飲めば都」北村薫 新潮文庫
満足度★★★★☆


マジック・マイク

2014年01月08日 | 映画(ま行)
「夜に生きるバンパイア」以外の人を忘れないで



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男性ストリッパーの物語・・・。
この題材、多分若いころならパスだったような気がするのですが、
全然イヤじゃない今、
確実に我が身のおばさん化が進んでいるような・・・。
まあ、いいか。
本作、チャニング・テイタムが
実際に若いころこのような店で働いていたという体験を元にしたそうです。



マイク(チャニング・テイタム)は、
男たちが夜ごと華やかなストリップショーを繰り広げるクラブの花型スター。
ある時、まだ若いアダム(アレックス・ペティファー)という青年を見出し、
彼をストリッパーとして育てることにします。
それと同時にアダムの姉ブルックとも知り合いますが、
彼女はいたってまともな勤め人。
弟がストリッパーということに戸惑いを見せますが、
それも一つの職業であると理解し、容認。
マイクは彼女と話をするうちに、次第に自分の人生を見つめなおすようになります。




私達が本作に共感できるのはこの姉の存在が大きいですね。
「夜に生きるバンパイア以外の人のことも忘れないで」
と彼女は言います。
これこそが、実のところは多くの人の感覚なのではないでしょうか。
確かに盛り上がり華やかな商売だけれど、
その反面に広がる闇の正体も次第に見えてきます。
オーダーメイドの家具店を開きたい。
マイクが本当にやりたいのはそういうことなのですが、
今の商売では信用がなく、銀行から融資を受けることもできません。



でも本作は職業の差別の話ではありません。
クラブの経営もいい。
だけどそのためにはこのクラブのオーナー(マシュー・マコノヒー)のような
計算高さと言うかしたたかさ、その覚悟が必要なのだろうな。
つまりは、マイクはまだストリップに対しても「本気」ではなかったのだと思います。
約30歳。
人生をやり直すにはまだまだ十分。
一方アダムはこのショービジネスに更にのめり込んでいくようですが、
そこが19歳という若さゆえなんですね。
それはそれでよし。



ところで本作、アレックス・ペティファーを見たくて選んだ作品だったと思うのですが、
それよりも、マシュー・マコノヒーがすごかったですね~。
セクシー度抜群。
そして実は食えない嫌なヤツだったりするのですが、
その存在感がスゴイ。
私は今後別の作品でこの方を見ても本作を思い出してしまいそうで、怖い。


「マジック・マイク」
2012年/アメリカ/110分
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:チャニング・テイタム、アレックス・ペティファー、マシュー・マコノヒー、コディ・ホーン、オリビア・マン
セクシー度★★★★★
満足度★★★★☆

ブリングリング

2014年01月06日 | 映画(は行)
高級ブランドのドレスや靴でも、心のうつろは埋まらない



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アメリカ、ハリウッドで2008年~2009年、
実際にあったティーンエイジャーによる窃盗事件を元にしています。



セレブが邸宅を構える高級住宅地。
セレブの華やかな生活に憧れる少女、ニッキーら5人組が
いたずら半分にセレブの豪邸へ忍び込み、ブランド品を盗み出すのです。
彼女たちに罪の意識はほとんどなく、
何度も繰り返しては、クラブに集まる友人たちにありのままを自慢話として話したりする。
しかし、そこまで繰り返ば、
さすがに防犯カメラに写ったり、人の口から伝わったり・・・、
警察の捜査が進みます・・・。


このあまりにもあっけらかんとして悪びれない少女たちに、
気持ちは暗澹としてきます。
本作は、「こんな悪いことをしてはいけませんよ」という作品ではありません。
このような犯罪(本人たちは犯罪とは思っていないようですが)を犯す少女たちの
心の空虚さを描き出しているのです。

高価な装飾品や高級ブランド、
彼女らはこれを生きるために盗むのではない。
もちろん貧しい人に与えるためでもなく、
セレブへの抵抗でもない。
ただ自分達の空虚な欲望のため。
彼女たちがどれだけステキなドレスやバッグや靴を盗んで身につけても、
決して満足は得られないだろうと思えるのです。
彼女たちが満たされないのは、ドレスやアクセサリがないからではないのですね。
他にやりたいことも将来へ向けての夢も何もないから。
う~ん、自分が同じ年代の時にそんなものがあったかどうか、
と問われればそれはあやしいのですが・・・。
時代的なこともあるのでしょう。
私達の世代はまだ、「未来」に期待することができたのですが、
今の子どもたちは・・・。
豊かすぎるがゆえに、心の中の大事な何かが育っていないような気がする・・・。
あまりにも空虚で、かわいそうになってしまうくらいです。



クラブで必死に何度もお互いに写真を撮り合っている彼女たち。
そうしてSNSで自己の存在をPRしなければ、
自分自身も忘れられ、消えてしまう気がするのでしょうか。
インターネットでセレブの家の場所やスケジュールの情報を簡単に検索できてしまうことも問題。
こうしたICTの発達が、私達の心の有り様に影を落としているような気がしてならない。
かくいう私のこの文章すらもその恩恵を受けているわけではありますが・・・。
今はICTを誰もが本当に有効活用するようになるまでの過渡期だと思いたいです。
有効活用するというよりも、そう、それに振り回されず普通に人と連絡を取るための道具。
いや、今もそうであるはずなんですが・・・。



それにしても、玄関マットの下に鍵を置いてあったり、
窓に鍵がかかっていなかったり、
セレブなら当然ホームセキュリティ万全と思えるのですが、
そうでなかったり・・・
あまりにもずさんなのも問題ではありますね。
本作、実際に被害にあったパリス・ヒルトンが自宅をロケ地として提供したそうです。
そして又、これは私のやっかみかも知れませんが、
あのように高級ブランドのドレスやら靴やらバッグやらがこれみよがしに並んでいたら、
少しぐらい分けてもらってもいいじゃん、
という気にならないほうがおかしいかも、とは思います。
あるところにはある。
しかし、ないところにはない。
一体“セレブ”という人たちは
なぜに“セレブ”なんだろう。
全然理解できていない庶民の私です。



ちなみに題名の「ブリングリング」とは
「キラキラした奴ら」くらいの意味だそうです。
本作中もこのグループ中の黒一点の男の子マークが一番心配性(というかマトモ?)。
やはり今時の男女はこんなふうらしい。


「ブリングリング」
2013/アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ/90分
監督:ソフィア・コッポラ
原作:ナンシー・ジョー・セールズ
出演:エマ・ワトソン、レスリー・マン、タイッサ・ファーミガ、クレア・ジュリアン、イズラエル・ブルサール、ケイティ・チャン

キラキラ度★★★★☆
空虚さ★★★★☆
満足度★★★☆☆

「死層 上・下」パトリシア・コーンウェル 

2014年01月05日 | 本(ミステリ)
なんてハードでスリリングなスカーペッタの一日

死層(上) (講談社文庫 こ 33-37)
池田 真紀子
講談社


死層(下) (講談社文庫 こ 33-38)
池田 真紀子
講談社



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スカーペッタのもとに、カナダの化石発掘現場で撮影したと思しき、
耳の断片を写した謎の画像メールが寄せられた。
一方、ボストンでは女性の変死体が発見される。
被害者はマリーノのツイッターのフォロワーだった。
疑惑をかけられたマリーノを救えるのか。
二つの事件に関連はあるのか。
スカーペッタが動く。(上)

カナダとボストンで発生した奇怪な事件。
これら二つの事件の被害者と、不自然な死に方をした男が、
一本の線となってつながった。
さらに、マリーノが罠に落ち、
スカーペッタも行動をスパイされていたことが判明する。
殺人に愉悦する恐るべき真犯人に、スカーペッタが迫る! 
「検屍官」シリーズ第20弾。(下)


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お楽しみの検屍官シリーズ新刊です。
本作上巻では、スカーペッタの非常に多忙かつ悲惨な一日が展開します。

○事件性のある謎のメールが送られてきた。

○海中に浮かぶ死体を引き上げる。(損傷をおそれ、自ら背負って・・・)

○その死体の初歩段階的状態確認。

○とある裁判で証言をする。上記の仕事のため大遅刻をし、過大な罰金を課せられる。
 おまけに事件の内容とは全く関わらないと思われるベントンとの不倫まで持ちだされ、うちのめされる。

○しばらく禁酒をしていたマリーノがまた飲み始め、
 ツイッターを始めたおかげで、殺人の疑惑を受けたことを知る。

○彼女と仕事を組んでいるルークという若い男性とのことをベントンに疑われる。
 おまけにそのベントンにまとわりつく女が・・・。

○猫を拾う。

うーん、なんてハードでスリリングな一日。
自分の年齢を自覚し、
なおかつ若い男性を求めてしまうおのれの内面に狼狽するスカーペッタ。
そのようなことはお見通しのように彼女を観察するベントン。
私としては、こんなふうに微妙な場面にくすぐられました。
結婚してさえも安住の地ではない男女の愛・・・。
う~む、大変です。


事件の方はカナダ・ボストンともう一つ、不自然な死に方をした男、
更にはあのスカーペッタがうちのめされた裁判の事件が一つの線でつながる、
という部分が、大変面白くはあるのですが、
都合良すぎと思わなくもない。
微妙・・・。
まあ、それは読後感で、
読み進むうちは確かに驚きの連続。
スリリングでした!


それにしてもこの本、文庫(350ページ程度)なのに一冊1210円。
高すぎ・・・。


「死層 上・下」パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
満足度★★★★☆

マン・オブ・スティール

2014年01月04日 | 映画(ま行)
脇役で高められるクラーク・ケントの存在感



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本作、アメコミヒーローの映画とは思えないスタイリッシュな予告編を見ましたが、
あの、「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン製作ということで納得したものでした。
スーパーマン・ビギニング、
つまりあの、「スーパーマン」誕生の物語です。


クリプトン星崩壊寸前に、父母によって宇宙船に乗せられ、
地球へ送り出されたカル=エル。
彼は地球で養父母によりクラーク・ケント(ヘンリー・カビル)として育てられました。
彼の持つ特殊能力は封印していたほうがよいとの父(ケビン・コスナー)の教えにより、
できるだけ目立たないようにしていた彼。

しかしある時、クリプトン星を再興させようというゾッド将軍が、
地球を乗っ取りにやってくる。


スピーディで派手なアクション満載。
今までの「スーパーマン」のイメージを突き破るスピード感は、さすがに“今様”です。
でも、私としてはそういうシーンは、スゴイとは思うものの、
あまり長く続くと退屈に感じてしまいます。
本作に限ったわけではありません。
せっかく巨額を投じたところを申し訳ないのですが・・・。
男性はお好きなのでしょうね・・・。
こういう感想は“女”ならではなのかな?





けれども、本作で私がいいと思ったのは、彼を取り巻く人々。
実の父がラッセル・クロウ。
養父母がケビン・コスナーにダイアン・レイン。
クラークの心情を察し彼を見守る新聞記者にエイミー・アダムス、
と超豪華キャスト。
それが完璧に功を奏していまして、
おのれの力を持て余し、周囲と馴染めず孤独な青年を導く役柄を見事に演じています。
それぞれにしっかりとした自分の生き方と愛情を持った上で彼を支えていく。
そういうところがチープではなくて、重みを持って描かれていて、
思わず私は涙してしまいました・・・。
アクションの凄さだけでは感動は生まれない。
こうした人と人との絆を描くからこそ感動は生まれるのだなあ・・・。



マン・オブ・スティール ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産) [DVD]
ヘンリー・カビル,エイミー・アダムス,マイケル・シャノン,ケビン・コスナー,ダイアン・レイン
ワーナー・ホーム・ビデオ


「マン・オブ・スティール」
2013年/アメリカ/143分
監督:ザック・スナイダー
製作:クリストファー・ノーラン他
出演:ヘンリー・カビル、エイミー・アダムス、マイケル・シャノン、ケビン・コスナー、ダイアン・レイン、ラッセル・クロウ
スピード感★★★★★
主人公への愛度★★★★★
満足度★★★★☆

ハンガー・ゲーム2

2014年01月02日 | 映画(は行)
ストーリー性を堪能


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ハンガー・ゲームの第一作は、「殺人ゲーム」だなんて・・・と、
さして見る意欲がわかずに劇場では観ていません。
ところが後にDVDで観たところ、これが意外と面白かったのですね。
確かに、「バトルロワイヤル」なみに少年少女が殺しあうわけですが、
主人公が心優しく勇気ある少女、ということで、
なかなか魅力的でした。
さて、というわけで、この続編は劇場で観たのですが、
これが単なる二番煎じではなくて、
より大きくストーリーの膨らみを見せていて、引きつけられました。

→第一作「ハンガー・ゲーム」はこちら



独裁国家、パネムでのストーリー。
12の地区から選ばれた少年少女が最後の一人になるまで命をかけて戦うという「ハンガー・ゲーム」。 
先の大会で生きのびたカットニス(ジェニファー・ローレンス)の勇気ある行動が、
民衆に希望を与え、国家へ向けた革命の火種となっていきます。
このことをよく思わないスノー大統領(ドナルド・サザーランド)は、
今度の第75回ハンガー・ゲームでカットニスを抹殺しようとします。
すなわち、第75回大会は歴代ゲームの勝者24名を出場者とし、
グランドチャンピオン・バトルとするのです。
さて、カットニスとピーター(ジョシュ・ハッチャーソン)の運命は・・・!



今作、実際のバトルが始まる前段階にも、じっくり時間をかけています。
生き残ったカットニスとピーターが賞金を得、満ち足りているかといえばそうではなく、
死闘のトラウマに悩まされ、やりたくもない凱旋ツアーに駆り出される。
しかし二人が各地で見たのは
虐げられ、唯々諾々とパネム国の言いなりにならなければならない人々の姿。
そしてまた、人々が、カットニスを希望の象徴とし始めていること・・・。
そんな時に、再びあのゲームに出場せよという・・・。
勝者は一生安泰のはずではなかったのか・・・。
この思いは他の歴代の勝者たちにとっても同じなのです。
ここを読みきれなかったところが、スノーの敗因かもしれません。
今度のゲームはこの殺人ゲームをくぐり抜けてきた強者ばかり。
しかも、プルターク(フィリップ・シーモア・ホフマン)という新手のゲームメーカーは
ゲームの会場に仕掛けまで施し、
殺人者以外にも次から次へと“危険”を送り出してくる。

本作は出場者同士の闘いというよりも、
彼らと独裁者との対立という構造に変わっていくのです。
そして、思いがけないラストがそのまま、
明らかに“つづく”のエンディング。
なんだかボー然とさせられるところも心憎い。



もともと、無駄な(?)戦闘シーンが好きではないので、
本作はストーリー性を十分堪能することができて、私としては満足です。
それにしても、勇気がある強い女子。
心優しい男子。
やっぱり近頃はどこでもこんなふう?



「ハンガー・ゲーム2」
2013年/アメリカ/147分
監督:フランシス・ローレンス
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウッディ・ハレルソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ドナルド・サザーランド

ドキドキ感★★★★☆
満足度★★★★☆

「隅の風景」 恩田陸

2014年01月01日 | 本(エッセイ)
旅=インスピレーションの元

隅の風景 (新潮文庫)
恩田 陸
新潮社


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ビールを楽しんだプラハ、巡礼者が行き交うスペイン、高所恐怖症と闘った韓国…。
それぞれの土地に広がる、見たことのなかった風景たちを写真に収め、
心に刻みながら、作家は新しい小説の予感を探す―。
稀有な感性で捉えた情景を描き出す旅エッセイは、
もう一つの恩田陸ワールド。
さらに、過去の小説作品のヒントを得た舞台を明かす
「ゲニウス=ロキ覚書」を書き下ろし収録。


* * * * * * * * * *

恩田陸さんの旅のエッセイ集です。
何処へ行っても彼女の旅につきものは、ビールと食べ物。
彼女は仕事が忙しく、そんなに長い日程を組めないという事情がありながら、
徹夜明けで列車に飛び乗ってはまずビール。
要所要所の見学も意欲的ですが、
その夜も遅くまで飲み明かし、食べ明かし・・・
いやいや、よく体が持つものです。
お元気そうで何より。
飛行機が苦手なので列車の旅が多いということで・・・
でも列車で飲みたくなるのはわかります。
日常を離れて、旅の高揚感で飲むビールは又格別なのですよね!
それはよくわかります!


本作の旅先は、
英国、チェコスロバキア、スペイン、韓国、中国・・・と、
外国も多いのですが、
日本国内も郡上八幡、日光、熊本、奈良などもあり、バラエティにとんでいます。
そうした場所で彼女がインスピレーションを得て、想像をふくらませていく。
旅は彼女の創作の元でもあるのですね。


私の好きな、スペインの巡礼路、サンティアゴへの道の話はとても興味深く読みました。
残念ながら日程はそう長くとれないので、
要所を車でまわったとのことですが、羨ましく思いました。
そうか、全部歩かなくてもそういう手があるのか・・・などと思ったりして。
いやしかし、やはり一歩一歩歩くことに意義があるのですけどね。


法隆寺が怖いと彼女は言います。
特に夢殿の周りをぐるりと回ると、
自分の反対側を誰かが歩いているような気がする、と。
うーん、そんなこと考えたこともなかったですが、
これぞ作家・恩田陸の感性なのですね。
納得。

「隅の風景」恩田陸 新潮文庫
満足度★★★☆☆


2014年 あけましておめでとうございます

2014年01月01日 | インターバル
午年・・・



あけましておめでとうございます。
この馬のように、みなさまの本年が
跳躍の年となりますように。

私は今年もまた、たくさんの映画と本に触れて
ワクワクした時間を過ごしたいと思います。
ゆったりと読書の時間を取れないのが悩みといえば悩みなのですが・・・
やりたいことがたくさんあるというのも
ある意味幸せなのかもしれません。

羊毛フェルト手芸も、近頃新作のペースが落ちたかな?
まあ、ボチボチやります。
西島秀俊さん出演作探索もまだ続けられそうです!

どうぞ今年もよろしくお願い致します。