いや応なく正月!そりゃ孫が来るからねぇ。それなりに正月ぶらないわけにゃいかんのさ。
こっちは、ウィスキーで屠蘇代わりにしようと、味噌汁に海苔餅頬張って雑煮ってことにしようと、手抜きにゃ一向後ろめたさもないんだが、さすがに、これから長い人生をたどって行く孫娘を前にすれば、それなりの伝統儀式?は用意してあげたい。って、言っても、ほとんどは神さんの守備範囲だったが。お節料理でこっちが担当したのは、ごまめと棒鱈の煮物くらい、一応、参加したくらいのささやかな貢献だった。
だったら、せめて、夕食には新たなる体験を!
一家団欒ってくれば、鍋料理。すき焼き?ちり鍋?鶏の水炊き?ありきたりだろ。いっくらキムチが漬けたてだからって、正月からキムチ鍋はない。うーん、鍋で珍しいものってないか?
そうだ、切りたんぽてのはどうだろう?
もちろん、たんぽは手作りだぜ、米作ってんだからな。炊いたご飯をすりこ木でどかどかつぶして半殺しにする。それを丸棒なまとい付かせるんだが、専用の棒なんてあるわけない。ええいっ、いいのさ、菜箸の長い奴で大丈夫。ごはんはいったん固結びにした後、楕円形からロケット形に伸ばして行き、その尻から箸を突っ通す。よおし、これで崩れなくなった。
焼くのは、本来なら囲炉裏だし、我が家にもあるのだが、ここ数年蓋をして覆いを掛けてある。これ登場させるは大いに面倒。だいち、薪ストーブあるし。
ガンガンと火を熾したら、専用焼き物器にたんぽを乗せて突っ込む。
すぐに焦げるんじゃないか、箸が燃えるんじゃないか、網にこびり付くんじゃないか、なんて心配は一切無用だった。ほれほれほれ、見事な自家製切りたんぽの仕上がりだぜ。
別に煮たてた鶏出汁にセリ、ニンジン、ネギ、キノコ類をたくさん入れて、さぁ、みんな位置に付いてぇぇぇ・・・
切りたんぽを入れたら、味が染みてごはんが溶けないうちさっと取り出し、熱々をいただく。この繰り返し!土鍋いっぱいの鍋が見る見るうちに空になった。ふー、みんな満腹!みんな満足!
よしよし、これでよい!これで、孫たちへの責任?を果たせたってもんだ。どこまで記憶に残るかは知らないが、しばらくはこの鍋団らん、心を温かく保つことだろうぜ。