NHKはちょくちょくこんなの作るよなぁ。乱歩原作の『黒蜥蜴』。乱歩、好きなんだ、制作部。あるいは、今年、乱歩没後or生後・・年とか、ミレニアムイヤーなのか?
乱歩を懲りもせず取り上げてる、ってことだけじゃない。その料理の仕方が原作を突き抜けて突拍子ない。乱歩短編集じゃ、満島ひかりが明智小五郎!って意表を突いてたよな。作りも一癖二癖、捻りに捻ってほとんどマニアックだ。
さらに、今回放映の『黒蜥蜴』!12月29日放送、あっ、いつも通り録画で1週間遅れで見たが、これはもう、脚色とかの域からぶっ飛んでた。原作を借りつつ、まったく別の物語をおっ広げてくれたぜ。
ここからは、おおいにネタバ!だ。
最初はいかにも乱歩作品へのリスペクト込めて、それらしい作りでスタート。しかし、予告通り大富豪の娘が誘拐されたあたりから、まったく別次元のお話が展開する。いやいや、その前でも、明智の有力な助手に小林少年ともう一人AIの少女ってのが登場し、明智の窮地を救うなんて、今風の仕掛けもあるが、話しはさらに大きく踏み外して行く。黒蜥蜴はなぜ娘をさらったのか?世の美しいものを集めたい!なんてオタク的犯罪じゃなかった。
黒蜥蜴とその一味はすべて大富豪の野心によって作り出されたクローン人間だった!!!おおーっ!
しかも、彼らは開発途中で生まれた欠陥品?薬剤の投与なしに生き続けられない。一時はひとまとめに抹消される運命にあった。従順、言いなりの境遇を暴力的に突き破って、彼らを生み出したものたちへの復讐と、人間同等に生き続けられる欠陥の修復目指して、稀代の宝石と娘を奪取したのだった。その娘だけは、欠陥を免れた完成品であったから、彼女を徹底的に解体しDNA解析することで自分たちも真っ当なクローン人間に到達しようとのたくらみだ。宝石にはクローン技術の基本デザインが組み込まれている。
まぁ、ここまでだって、かなりの破天荒!自由気ままな作り替えなんだが、クローン人間の復讐ってのは、俺も以前脚本に書いたことあるから、自慢じゃないが、って自慢するんだが、早い段階で見抜いてたな。娘は、大富豪がかつて亡くした幼き娘から作ったものだってことも、もう一人の瓜二つの娘がその出来損ないの片割れだってこともね。
だがなぁ、まさか、黒蜥蜴一味が潜水艦で逃亡するとは思わなかったぜ。それも目的地は地図にも表記されない絶海の孤島!そこには最新のバイオテクノロジー研究施設があって、欠陥クローンの修復作業を行おうとしていた、なんて!さらに、大富豪は、なんと!私設軍隊も持っていて、ついにその島に向けて、娘と宝石奪還の急襲を掛けるんだ!そこに現れる特殊警察部隊!空からロープつたって下降!うわーぉ!これはもう、ハリウッド映画の世界そのもの、見たぜ、見たぜ!施設内で銃撃戦!お雇い軍人どもは掃討され、陣頭で指揮を執った富豪は逮捕される。そして、ついに研究所は大爆発!明智を庇って自ら銃弾を受けた黒蜥蜴を抱きかかえる明智。そのシーン、火災の残照の中の二人、風と共に去りぬのあの有名なシーンとまったく同じ!
やるもんだなぁ!そすがだなぁ!こうも自由奔放、勝手放題許すてのは、もうNHK以外にあり得ない!こんな奇想天外、驚天動地、ツッコミどころは特盛だが、そんな細かい詮索はするだけ野暮。ゲームと同じ、画面にのめり込んで楽しめばいいんだ。ホームドラマやビジネスものを、チマチマとこねくり回してる民放とは格が違う。こんなめったやたらな空想ゲーム、そんなはみ出し、突き抜けを許容する社会でありたいよな。
安倍忖度政治部への腹立ちはもう限界突破、特に岩田明子記者が画面現れたら瞬速カットオフ!だが、NHKスペシャルやこんなドラマ作るNHKなら喜んで受信料払うぜ。
ネタバラシついでに、ラストシーン、二人の少女が別々の人生に歩み出す。完成品は新しい出会いを求めて世界へ。欠陥品の娘は、なんと欠陥仲間たちの真ん中に立ち、黒蜥蜴2代目?を決意する。ふふふ、これで、続きがさらに作れる、いや、見られる!次回をお楽しみに!ってこれまた、活劇ものの、お定まりだぜ。