見た映画の感想書くのって、気使うんだよね。別に批評でも紹介記事でもないから、じゃんじゃか内容に踏み込んで書きゃあいいんだ、とは思うものの、あらかじめネタばらされちゃ、よしっ見よう!って意欲失われちまうもの、ネタバレはできるだけ避けよう、とは思ってるんだ。
でも、そうもいかんのよ。特に、役者がどうの、演出がどうのってことより、ストーリーやエピソードが気になる身としちゃね。この映画の魅力は、この筋立てが魅力、とか、この仕掛けが効いてる、とか、この設定は生かしきれてない、とか。どうしても中身に立ち入ってぐだぐだ考えちまうのさ。
特に、異能力ものの中には、その桁外れの力の内容とそれを使いこなす構造が見透かせてしまうと、とたんに魅力を失ってしまうってものも少なくない。まぁ、駄作ってことなんだが、でも、全体が見え始めるまでは、スリル満点、先行き興味津々、見せるねぇ!って作品もあって、それはそれで楽しんでもらいたいとは思うんだ。事実、5回とか6回まではどっぷり引きずり込まれてたわけなんだから。
こういう見え始めたら、なぁんだ、って作品が2本続いた。『ロック&キー』と『ラグナロク』の2本だ。
父親が不可解に殺されたのを機に、敢えて古い旧居館でやり直そうとする一家の話しだ。鍵となるのは、キー!って、駄洒落みたいだが、屋敷には不思議な鍵が隠されていて、それを見つけ出す子供たちが、邪悪な力との戦いを強いられていく。これが『ロック&キー』だ。最初のキーは、どこでもドア!って、おいおい、ドラえもんのパクリかよ。でも、このあたりの魔力の使い方はなかなか洒落ているし、映像処理も見事で楽しめる。
が、超能力は一つにとどまらない、次々と新しい鍵が見つけ出されて、縦横に力を発揮していくってのが、この映画のみそなんだ。ネタバレついでに書くなら、他人の行動を自由に操れる鍵、人間の脳内を追体験できる鍵、幽霊になれる鍵、他人に入れ替われる鍵、そして、究極は、地獄?奈落?の扉を開く鍵。そう、不思議な鍵のオンパレード、魔力のインフレーションだぜ。
こうまでいろんな夢を実現させちまうと、もはや、何でもあり!の世界に突入してしまうわけで、そりゃ、どうにでも物語つくれるでしょ!って、最初の魅力も色あせてきちまうってことなのさ。悪魔が主人公の友人に乗り移ったらしいところで、シーズン2へどうぞ、って誘われても、もういいよ、もうたくさんだってお断りした。
もう一方は北欧神話を今に生かした題材だ。ノルウェーのフィヨルドにある小さな町が舞台だ。フィヨルドの映像てのは、これまでも様々見てきているんだが、街とそこに暮らす人たちの物語ってのは、大いに興味をそそられる。ただ、その景観の描写は、ちょっと残念。アイスランド映画『凍れる死体』のひりつく存在感は見られない。それでも、荒ぶる怪物の末裔と理不尽にも神々の力を授かってしまった青年との対立という設定は、面白い。その種明かしに至るミステリアスなシーンの連続にも、ぐぐっと引っ張っていかれた。
が、怪物の一家はすでに数世紀にもわたって人間として生きながらえ、今では街ただ一つの企業の主となって、街の人たちを支配している。あっ、ここで、余談。その会社名、これがなんと「ヨツール」!知る人ぞ知るノルウェーの世界的鋳物ストーブメーカーと同名!実は我が家のストーブもここのものだぜ。よくぞ、名前の使用を許可したもんだよな!だってなぁ、映画のヨツールは悪徳企業で、有害廃棄物を垂れ流しているって設定なんだから。
この有害廃棄物の在りかと処置をめぐって一家と青年が戦うわけなんだ。魔物族と神々の戦い、そして、激闘の消滅・神々の黄昏「ラグナロク」の由来だ。かつての神話世界が今に甦る!たしかに壮大な物語を探り当てたものだと思う。でもなぁ、神々の時代が一気に現在につなげるには、いろんな障害があると思うのさ。例えば、何世紀も生き延びてきて、普通の人たちと一緒に暮らしてるって無理あり過ぎだろ。そこらがほぼ無視されてしまってる。企業城下町に暮らす人たちの扱いも底が浅い。企業犯罪を気候変動に結びつける語り口もあまりにマンガ的で、まったくリアリティなし。登場人物も、サブキャストがまったく生かされていない。しかも、音楽が、信じられないほど魅力がない。・・・
筋立てそのものは、壮大かつ奇想天外、惹きつけられるものなんだが、いざ、構造が見通せてしまうと、あらばかり見えて来ちまうんだぜ。で、だんだん興味が失われ、最後は、あっそう、そういうの、マンガによくあるよね、でお終い。せっかくのノルウェーの自然と暮らしに入り込んだのに、なにもったいないことしてんのさ。
と、行きは良いよい、終わりがっかり!の2本をやり玉に上げて、そこから、映画を楽しむ身として、物語を紡ぐ立場として、学ぶべきことはこうだ。
魅力的で斬新な設定を見つけ出すのは大切だ。そこが一つの勝負!で、それをどう生かすかがもっと大切な決め手だぜぇ!これに尽きるな。