このところ、ナチス時代のドイツに関心を寄せている。
本では『ヒトラーとナチス・ドイツ』石田勇治著・講談社現代新書から『ナチスの戦争1918-1949』リチャード・ベッセル著・中公新書を読み、今は『独ソ戦』大木毅・岩波新書に入っている。どの書も、ドイツが引き起こした第2次世界大戦は大きな通常戦争なんかじゃない。人種戦争であり世界観戦争だったとの見方に立っている。
狂人ヒトラー原因説に立たないことも共通する。ヒトラーさえいなかったら、って、たらればじゃ戦争の実相は見えないぜ、ってことだ。日本の戦争もそうだったように、大多数の国民の支持、熱狂あっての猪突猛進てことだ。戦争責任の追及が手抜きになったってのも同じだな。ドイツはヒトラーに騙されたで落着させ、日本は軍部の独断専行に罪を擦り付けて、おあとがよろしいようで、って次のステージに進んだ。
ドイツが東欧を、日本が満州を生命線と叫んでがむしゃらに権利を主張して侵略したのも似てるし、資源確保で南に戦線を展開したのもそっくりだ。他民族蔑視の行動も似てるって言えば、似てる。でも、劣等人種は抹殺ちまえ!って絶滅戦争に突き抜けることはなかったな、日本は。あくまで植民地の強欲支配が目標だった。これだってとても許されることじゃないが。
なぁんてことを学びながら、夜は映画でその界隈を彷徨っている。昨日、一昨日とナチス占領下のオランダ特集になっちまったなぁ。
1本目は『リプハーゲン』Netflix。
いやぁ、なんともひでぇ男がいたもんだ。ナチス親衛隊保安部SDの現地(オランダ)雇員の立場をあくどく利用し、国外逃亡を餌にユダヤ人から金品を巻き上げては収容所送りしていた男、リブハーゲンの物語だ。立場を固めるためには、脅し、暴力、罪のなすり付け、殺しさえ遠慮会釈なし。権力者を巧みに操って、追跡の手を逃れ、ついに南米に亡命しちまった、うはっ、やり切れねぇぇぇ!って、これが実話の映画化だって。
『ブラック・ブック』Amazonプライムは裏返しの話しだ。
両親、弟、知人、友人を根こそぎ虐殺され、辛うじて生き残ったユダヤ人女性が、ドイツ将校の愛人となって情報獲得、レジスタンス仲間の救出に活躍するが、・・・。うーん、手に汗握る展開だぜ。これも実話もの。
まさか、これほどまでに似通った題材とは思わなかった。ユダヤ人相手の悪行、レジスタンス内の裏切り、密告、SDの暴力、拷問、権力者への阿り協力、権力闘争・・・・。人種の抹殺を目標とした強権支配がもたらす恐怖の日常、耐えがたい非日常。どちらも、2時間強、気を散らすことなく、一気に最後まで見終わった。
さて、否応なく、敵味方に区分され、どちらかに引き込まれて、裏切りやら密告やら、死を賭した戦いやら、自己犠牲やらを強いられる日々、それが占領下の避けられぬ暮らしってことなんだ。嫌だなぁ、こんなのは。とても良心に従った行動なんてできっこないぜ、俺は。みすぼらしい裏切者とか、命乞いする臆病者がいいとこだろう。意気地ないし、苦痛に耐えられないし。
だから、そんな地獄と奈落の選択なんてのを迫られぬよう、今のうちに、危ない芽は摘んでおきたいって思うのさ。戦争とか、独裁とか、暴力とかね。あちこちで、なんか、不穏な空気が漂い始めてるの感じるだろ?