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認知症サポート講座コント台本『リスペク爺さん』アップ

2016-07-02 09:16:26 | コント

 町から依頼の認知症サポート講座コント、まだまだ続いてる。っ7月の公演し20日と22日の2回。菜の花座プラザシニア団公演直前だって言うのに、もう!って役者の恨み節が聞こえてきそう。でも、引き受けた以上、やるっきゃない!今回はまた新しいメンバーが配役に加わることになりそう。層が厚くなったもんだ、菜の花座。

 と、いうことで、コントの台本を全部アップしておこう。

 

リスペクト!爺さん

  =認知症だからって馬鹿にすんでね!=

 

登場人物

爺さん                      

婆さん                      

娘                        

 

 

            中央に電話を置いた台。電話が鳴る。爺さん、登場し、受話器をとる。

爺さん   ああ、ほだ。わしだ。あんた、誰や?娘?ああ、娘な、娘。久しぶりだことなぁ。うんうん。ほんで、どこの娘だ?・・なにぃぃぃ?わしの娘だぁぁぁ?てんつこくでねぇ。わしゃ娘なんどおらん。・・なにぃぃ、変われ、だぁ?そんなことできん。できるわけなかろうが。どうやって変われっていうなだ。わしゃ、へんし~~~ん!(変身動作)などできんぞ。・・はぁぁぁぁ?婆さんに変われ、だとぉぉぉぉ!し、し、失敬な、わしゃ男だ。あるものはあるぞ。婆になどなれん。なれたとしても、せいぜい、マツコデラックスよぉ。・・なにぃぃ、電話口に婆さんを出せだぁぁぁ?

            婆さん、聞きつけてやってくる。

婆さん   なんだい?誰から電話?

            爺さん、受話器を渡しながら、

爺さん   わけわからん女からじゃ。男のわしに向かって、婆に変われ婆に変われ、って無理な注文出しおって、、まったく、うるさい!

            婆さん、受話器を受け取り、

婆さん   はい。・・ああ、あんたか。・・なに、こっち来てくれんな?そりゃ助かるなぁ。爺ちゃんもきっと喜ぶと思うよ。・・えっ、なに?お土産なにがいいか?って。待ってな、今、聞いてみっから。

            爺さんに向かって、

婆さん   土産物持っていくけど、何がいいかって。

爺さん   ローソンの高級中華フカヒレ饅!

婆さん   な、な、なんだって?

爺さん   ローソンのたっぷりモッツァレラと濃厚ベーコンの旨み際立つ極上ピザ饅。

婆さん   さっきのと違うでねえの。ほら、自分で言って。

            婆さん、受話器を受話器を突き出し

爺さん    長崎名物トンボーローの豚角煮饅、byローソン。

婆さん    (受話器に向かって)だと。わかった?(爺さんに聞こえないように)いいな、いいな。適当に買ってくれば。どうせ、言ったこと覚えちゃいないんだから。・・はい。はい。そんじゃ待ってるよ。

             セブンの袋を持った娘、登場。

娘      お待たせ。

婆さん    早っ!

娘      そりゃそうよ。お後に先生の講演控えてるんだし、コントなんかさっさと終わらせなくっちゃ。はい。平牧三元豚の豚饅とエビとイカたっぷり海鮮饅。セブンだけど。

婆さん    いいのいいの、なんだっていいの。わかりゃしないんだから。(爺さんに)ほら、買ってきてけっちゃよ。コンビニの特製中華饅。

爺さん    なんだ中華饅だと?

娘      そうよ。わざわざ買ってきたんだから。

爺さん    わしゃ、オムカレーが食いたかったんじゃ。

娘      もう!

婆さん    ほらな。

爺さん    が、まあいい。よし、飯にしよう。

婆さん    ちょっと、お昼食べたばかりでしょが。後でいただくべね。

爺さん    食っとらん。昼も朝も食っとらん。

婆さん    食べたでしょうが、昼も朝も。

爺さん    食っとらん。

婆さん    食べました。

爺さん    食っとらん。

婆さん    食べました。

            と、二人、中華まんの袋を奪い合う。

爺さん    ほんじゃ、朝は何食うた?

婆さん    えっ、朝食で食べたもの?えー、と、ごはんでしょ、・・・

爺さん    ごはんと?

婆さん    それと、味噌汁と・・・

爺さん    味噌汁の具は?

婆さん    なんだっけ、えー、なんだっけねえ、えー。(娘に)ほ、ほらなんだっけ?

娘      知らないわよ。

爺さん    ほら、わからん。食っとらんからだ。さっ、飯だ、飯だ。ほら、寿司だ寿司。

娘      お母さんも認知症?

婆さん    ち、違うって。私のは、老人性健忘症、物忘れ。

娘      お父さん。食事は後の楽しみにとっておきましょ。

爺さん     うん?ところで、あんたさん、どなたでやった?見かけん顔じゃが。

娘      お父さん!娘よ、娘。

爺さん     ムスメ?ブスめ!

娘      違う!娘!

爺さん     ああ!

            と、爺さん、ハンカチを取り出し、娘の両手を縛る。

娘     なに、なに?なにすんの?

爺さん    結べ。

娘     結べなんて言ってない。娘。あなたの娘。娘の顔、忘れたの?

爺さん    娘?ああ、

娘     わかった?もう。

爺さん    娘時代のお友達、婆さんの。

娘     なんで、私が母さんと同い年なの!?

爺さん   す、すまん。

娘     違う!あんたの娘だ!ほんまもんの娘じゃ!

婆さん    怒っちゃダメ!腹立てちゃダメ!やさしく、やさしくしねば。

爺さん    (急にいじけて)わし、・・わし、・・

娘     ごめん。怒ったんじゃないのよ。つい、・・・

婆さん   大きな声もダメ。

娘     驚かせちゃったね。

爺さん   わし、帰る。

            と、歩き始める。

娘     帰るって!

婆さん   どこ行くな?

爺さん   家さ帰る。

娘     ここでしょ、お父さんの家は。

爺さん   帰る。母ちゃんとこさ帰る。

婆さん   母ちゃんは私でしょ。

爺さん   母ちゃん、(じっと見つめて)こんな婆じゃない。

婆さん   なにぃぃぃ!もう一度言ってみろ!

娘     お母さん!優しく、ゆとりと思いやりのある対応!

婆さん   そ、そうだったね。

爺さん   (娘に)おい、姉ちゃん、タクシー呼んでけろ。

娘     ちょっと!姉ちゃんって!

爺さん   ヘリコプターでもいいぞ。なんならドローンでも。

娘     お父さん。なに馬鹿なこと言ってんの!

爺さん   馬鹿!馬鹿!馬鹿と言ったな、馬鹿と!

娘     ち、違う。馬鹿、じゃなくて、馬鹿なって言ったのよ。

爺さん   また、言った。馬鹿だ!と言った。馬鹿だと言ったぞ。わしを馬鹿だと言ったぞ。

娘     いや、馬鹿じゃなくて、・・・

爺さん   馬鹿、馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ。馬鹿、馬鹿、・・・

            爺さん、馬鹿、馬鹿と言いながら暴れ出す。

婆さん   お爺ちゃん、落ち着いて!

娘     馬鹿じゃない!お父さん、馬鹿じゃない!

爺さん   馬鹿じゃない?馬鹿じゃない?

娘     どうして語尾上げるの?語尾下げて、語尾下げて!

爺さん   馬鹿じゃない(語頭を高く言う)!馬鹿じゃない、やっぱり馬鹿じゃない!

娘     違う!違う!頭を上げちゃダメ!

爺さん   頭を下げろと言うのか?謝れと言うのか?

婆さん   黙れ!爺い!

爺さん   は、はい!

娘     お母さん、尊敬!どこまでも.敬意をもって接する!

婆さん   そう、そうだね。

爺さん   あっ!

            と、ズボンのチャクを下し、ズボンを脱ごうとする。

婆さん   ああ!ダメ!ここ違うから!

娘     トイレ、トイレ、トイレに参りましょうね。こちらよ、ご案内するわぁ。

婆さん   お爺さん、トイレはこちら、便所はこちら、手のなる方へ。

            と、爺さんを押しやるように三人はける。が、爺さん、突如再登場、「家さ帰る!」と叫んで反対側に走り抜ける。追って来た婆さんと娘大慌て。

娘     ああ、ダメ!ここだから、お爺ちゃんの家はここだから。

婆さん   大変、大変、大変。どうしよう?どうしよう?どうしよう?徘徊だよ。放浪だよ。彷徨う爺さんだよ。

娘     慌てない!こういう時は、みんなの力を借りるの。まず、連絡、駐在さんに、町役場!

            娘、駐在所(あるいは役場の福祉課)に電話をかける。

娘     駐在(役場福祉課)さんですか?お爺ちゃんが、

            と、すぐに携帯を耳に当てた駐在さん、爺さんを連れて現れる。

駐在    はいはいはぁぁぁい。お爺ちゃん、じゃじゃぁぁぁん!ただ今ご帰宅でございまぁぁぁぁす。

娘・婆   早っ!

駐在    地域のお願い即対応!徘徊老人やさしく保護!認知症ならお助けマン・駐在さん(役場福祉課)をお忘れなく。

娘     頼もしい!(客席に)みんなも覚えた?認知症ならお助けマン・駐在さん(役場福祉課)

婆さん   よかったねぇ、お爺さん。

爺さん   (駐在または職員に)これにて、一件落着ぅぅぅぅ!皆の者、お勤め、ご苦労であった。

三人    ははぁぁぁぁぁ。

            と、平身低頭した後、顔を上げ、

三人    もう!

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