先に読んだ佐渡裕さんのエッセイが面白くて、もう2冊追加購入しました。
バーンスタイン最後の愛弟子と自他ともに認めるほどの師弟愛がホットに伝わってきます。佐渡さんはとても親しみやすい方なので、アンパンをかじりながら読んでも許してもらえそう。
音楽家のエッセイといえば、40数年前に団伊玖磨『パイプのけむり』の軽妙洒脱さにすっかり魅了されました。その後、「続パイプ…」「続々…」「又…」「又々…」と続き、27巻目の『さよならパイプのけむり』で終わったそうですが、最初の2冊ほどしか読んでいません。
友人から回ってきた本は藤田宜永『大雪物語』です。初めて見る名前でしたが直木賞受賞者でした。小池真理子さんの旦那さま。時期を違えて二人とも直木賞を受賞されていますが、2020年に肺がんで亡くなられています。
自分にはない視点で本が選ばれているので「おおっ!」というほど新鮮な感動に包まれました。
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201×年2月中旬、長野県K市に積雪99センチという記録的な大雪がもたらされました。避暑地で名高いK市ですが、冬の大雪の数日間に起こったドラマが6話つづられています。各話を点的にリンクさせているところも面白いところです。
1話「転落」:警察から追われる性悪な青年が、大雪の別荘で癌に侵された老女とひと時の穏やかな時間を過ごします。素性がばれて老女にも手をかけるか・・・と思われましたが、最後の2ページで青年の心が繋がります。
2話「墓堀り」:大雪の中で立ち往生する遺体運搬車。雪と車内に二重に閉じ込められるなか、遺体の娘と自然に本音で語り合いながら、淡々とそれぞれの人生模様をあぶりだしていきます。
3話「雪男」:大雪で起こる高校生同士の恋の終わりと、遭難から救ってくれた男性の愛の終焉を並行させています。
4話「雪の華」:かつて愛した女性が大雪で避難所に現れ再会。20年という歳月の中に生きた女性と、安定した生活を送る男性の心の襞を覗き見るような話です。
5話「わだかまり」:K町の除雪に出動した自衛隊員が、偶然生き別れの姉を見つけます。すさんだ姉と母を結び付けようとする真摯な若者の話です。大雪が少しだけ光をもたらして雪解けのきざしが。
6話「雨だれのプレリュード」:かつて雪の日にK市で出会い結婚したピアニストと画家の妻。二人の能力と人気に格差が出て離婚へ。しかし大雪が、K市でまた二人を結び付けるという雪解けの話です。
どれも切なく哀しいけど、これから先人間関係が繋がっていくだろうと想像させるところにほっとします。最後には明かりが見える小説です。
どれも切なく哀しいけど、これから先人間関係が繋がっていくだろうと想像させるところにほっとします。最後には明かりが見える小説です。