新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

『寺田洋祐 俳画集  蕪村・一茶に遊ぶ』 新典社

2021年11月15日 | 本・新聞小説
あるイラスト関係のブログだったと思いますが、皿に盛られた「イワシの干物」が紹介されていました。
そのイワシの表情が干物ながらホントに温かくどこかユーモラスで、イワシに人格を感じてぐぃと心を掴まれてしまいました。紹介されているブログに飛んだら、そこがテラさんの「筆と鉛筆 気ままな旅」でした。

日展の入賞回数も多く、油彩、水彩画、デッサン、俳画など丁寧にアップされ、それを楽しみに拝見していました。
絵に添えられたひと言コメントが、テラさんの謙虚な生き方を表しておりファンになって数年。ところが3年前に惜しくも病で亡くなられたのです。

亡くなられる直前まで、一茶、蕪村の俳画を間が空くことなく精力的にアップされました。
哀愁のある場面でも、どこかクスッと笑えるような一口会話を入れたり、表情も深刻でなく人生は楽しむものだ・・・と、ずいぶん心を励まされました。

この俳画が本にまとめられたらいいのに・・・・とずっと考えていた矢先、この春に遺族の方が出版されたことを知りました。その情報を得たことも偶然で、アマゾンですぐ買い求めました。

表紙の絵も、どこかちょっとひょうきんでテラさんの人格を表しているようだし、紙も上質紙、持ち運びも気にならない小型サイズ、まさにイメージしていた通りの本でとても嬉しくなりました。巻末には近世誹諧研究者、玉城司氏の解説もあります。
パッと開いたところを見るのもいいし、季節ごとにまとめてあるので季節を選んでもいいし、とにかくクスッと笑えてほのぼのと、気分を解放してくれて楽しめます。
亡くなった後にもこんな素敵なものを残して人の心を温かくする、素晴らしいことです。

ひとつの句からイメージを広げて一枚の絵にする、それも哀愁とひょうきんさを織り混ぜて、見る人に力と喜びを与える。テラさんの人生観が表れているのだと思います。
ブログの最後の一枚まで、ひょうきんさを失わないで生きることの楽しみが感じられました。
テラさんの人生は最後まで充実していたのだと感じ入りました。

この出版を見た天上のテラさんは、はにかみながら微苦笑の俳画を描かれることでしょう。目に見えるようです。




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