萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第58話 双壁side K2 act.8

2012-12-11 22:44:25 | side K2
「告」 いま蘇らす情熱に、



第58話 双壁side K2 act.8

カーテンを開け放った窓際、ランプを灯す。
ふわりオレンジ色の光は広がらせ、デスクの木目が艶めき光る。
その輝きの上へとケースを開いて、新しい方の山図を丁寧に広げた。

“Matterhorn North Face Route. Schmidt” 

湯上りの髪から雫こぼさぬよう、タオルを頭にかぶせ図面を眺めていく。
明日、リッフェルホルンで登攀テストを終えたら、夕方にはマッターホルン東稜ヘルンリヒュッテへ入る。
そこで警視庁遠征訓練のメンバー全員が合流して打合せ、明後日のスタート4時前に備え早い就寝に着く。
だから北壁アタック前に着実な記憶時間を取れるのは、もう今しかない。

―雅樹さん、あと33時間後にはスタートだよ?一緒に登ってくれるね

広げた山図に俤を追い、そっと古い方の山図に手を触れる。
浴室から響いてくる水音かすかに聴きながら、懐かしい筆跡の図面を光一は広げた。
鉛筆で記された端正な文字と数字は、16年の歳月を経てもなお鮮やかに青年の軌跡と夢を遺す。

氷河の段、大氷壁、大クーロアール、氷瀑サイド、そして最後の頂上岩壁。
それから欄外に復路の東稜ヘルンリルートに関する付記。

19歳だった雅樹が見つめた北壁シュミッドルートの初登が、詳細な記憶と的確な事前データで綴られていく。
そこに23歳までの4年間に調べた記録が付加されて、三次元的ルートファインディングが紙面に広がっている。
こうした「山を知る」分析能力が雅樹は優れ、この冷静で客観的な現状把握が観天望気の力にもなっていた。
そういう雅樹がザイルパートナーを務めたからこそ父の明広も、世界中の名峰で写真撮影の仕事が出来た。
そして自分も、雅樹が共に登るなら世界の名峰を踏破できると、数多の記録を樹立できると信じていた。

―でも雅樹さんはもう亡くなった、だけど俺には英二がいるね

英二は、雅樹と同等の素質と適性を持っている。
けれど経験が遥かに劣る現実が今はある、これが北壁でどう響くだろうか?

“俺の山のパートナーは宮田だろ。だから一緒に登ってもらうよ、最高峰にね”

そう自分が告げたのは11月最後の日、ツキノワグマの小十郎に逢った直後だった。
あの日は警視庁拳銃射撃大会の練習があった、その後に雲取山麓の水源林巡視路を巡回した。
そのとき小十郎に逢い、自分が雲取山頂で生まれた話をし、そして英二は綺麗な笑顔で言ってくれた。

「国村って、最高の男だよな」

その言葉に、諦めた夢が瞳を披いた。
あの輝く夏の記憶が蘇えり、大好きな人はこの心に微笑んだ。

―…光一は僕の希望と夢の光、一番大切な光だって想ったから光一なんだ…最高峰の男だから光一、そういう意味で君の名前を付けたよ

あの夏の俤が今、最高の男だと現実の声で言ってくれた。
その声に夢は眠りから目覚めて心を叩き、ずっと待ちわびていた願いは唇から声になった。

「俺の山のパートナーは宮田だろ。だから一緒に登ってもらうよ、最高峰にね」

俺のアンザイレンパートナーになってよ?
おまえなんだ、きっとそうなんだ、そう信じたい願いに声は出た。
そんな自分の祈りを静謐の情熱が見つめ、綺麗な低い声は真直ぐに告げてくれた。

「俺をトップクライマーにしてくれ。そうしたら山のパートナーを一生やるよ。俺なら大丈夫、俺が一緒に最高峰へ登るよ」

あの誓いの瞬間が、英二の山ヤとしての本当のスタートだった。
その帰り道、非番だった英二は奥多摩交番に残り後藤へと個人指導を申し出てくれた。
そして翌日には後藤のマンツーマン指導は始まり、縦走とクライミングの全てを英二に伝え出した。
その訓練内容について後藤は、光一へと真剣に笑って言った。

「光一、宮田にはな、まずビレイヤーに特化して訓練するぞ。今度の夏には北壁へと宮田を登らせたいよ、そのときリードは光一だろう?
宮田の素質だったら雅樹くんレベルの一流ビレイヤーになれるはずだ、これを全部クリア出来たらリードの技術を叩きこみたいよ。いいな?」

あの言葉たちは、英二をビレイヤー「確保者」として光一のセカンドを専属で務めるアンザイレンパートナーとして育てる意志だった。
そんな後藤の意志に、普通は卒業配置の受入れをしない青梅署に何故、山岳経験の浅い英二が配属されたのか解かった。
そして、後藤の自分に対する希望と愛情と、そして雅樹に対する深い愛惜の想いを見つめた。

―後藤のおじさんだって辛かったね、ずっと。だって吉村先生は後藤のおじさんの親友で、雅樹さん自身も大切な仲間だから

16年前、槍ヶ岳北鎌尾根で遭難死した雅樹の慰霊登山を決めたのは、後藤が中心だった。
父親の吉村医師と後藤がザイルを組み、父の明広と田中も共に四十九日の翌日から北鎌尾根の雪に踏みこんだ。
雅樹が遺した軌跡を辿り槍ヶ岳山頂へ繋いで、最期の場所へとアーモンドチョコレートとオレンジジュースを手向けてくれた。
あのとき後藤はきっと、雅樹の代わりを務めて吉村医師とザイルを組んでくれた。

―おじさんだって雅樹さんに期待していたんだ、山ヤとして、山岳レスキューの医者として頼みにしていた、ね…

慰霊登山から戻った後藤の貌は笑っていた、けれど目には腫れた痕があった。
それは父も田中も同じだった、けれど吉村医師に涙の跡は無かった。そして吉村は自身の登山靴を捨てた。
それを最後に吉村は15年間の一度も、医師の仕事以外で山に登ることは無かった。

―吉村先生は、雅樹さんが山で亡くなったことを自分の所為だって、思っちゃったんだよね…

奥多摩に生まれて山を愛し、医学を志した吉村医師だった。
そんな吉村は当時、大学附属病院のER担当教授として「神の手」を謳われていた。
こうした父親の軌跡をたどるよう山ヤの医学生となった雅樹を、吉村は宝物だと尊び愛した。
それなのに息子は山で死んだ、自分が親しませた「山」に息子を奪われたのだと吉村は自責に沈みこんだ。
その自責のままに息子の慰霊登山を終えた翌朝、大切にしていた登山靴ごと「山」を捨ててしまった。
吉村のそんな姿を後藤は黙って受けとめながら、光一に提案してくれた。

「光一も北鎌尾根に行こうな?雪が解けて春になったら、雅樹くんのアンザイレンパートナーとして慰霊登山をしよう、」

これと同じことを父の明広も言ってくれた、けれど自分はどちらに対しても黙りこんだ。
どうしても雅樹の死を認めたくなくて、雅樹は「約束」を護るため帰ってくると信じて、雅樹が愛した山桜に通い続けた。
消えた生命が蘇えるなど夢物語、そう解っていた、それでも「山」になら不可能も可能に出来ると信じて縋った。
そうして15年が過ぎ去って秋、奥多摩に「英二」は現れて、吉村医師を再び山ヤの医師へと蘇らせた。
そして3月、あのとき英二が持つ全てを懸けて光一に雅樹の慰霊登山をさせてくれた。

「…英二、あのときルートファインディングなんてまだ難しかったのに、ね?」

ひとり言そっと微笑んで、光一は古い山図を丁寧に畳んだ。
あの慰霊登山に英二は単独行でも挑もうとした、その眼差しに迷いは欠片も無かった。
そして生きる意志と山ヤの誇り高い自由が、白銀と蒼穹の世界でまばゆく輝いていた。

「雅樹さんが好きなんだ。会ったこと無いけれど、俺と同じ気持ちの人だったって解るんだよ、」

そう、はっきりと綺麗な低い声は光一に言った。
雅樹と同じ気持ちだと言ってくれた、その言葉が嬉しくて、けれど怖かった。
雅樹が死んだ場所で同じ現実が繰り返される?そんな恐怖がこみあげて必死で自分は英二を止めた。
それでも切長い目は一歩も退かないで、山ヤの誇りをこの自分に言い聞かせてくれた。

「雅樹さんが最後に歩いたところを俺も歩いてみたい、雅樹さんの想いを俺はトレースしたい。
そして受け留めたいよ。俺も山ヤだよ、国村?山ヤは自由に山を登るために努力をする、俺もその努力はしてきたつもりだよ?
この俺の努力を一番よく認めてくれているのは、国村だろ?だったら行かせて欲しい、俺は雅樹さんが見た世界に立ちたいんだ、」

―…光一、僕を行かせてくれる?あの山の世界に立ちたいんだ、いつか一緒に登りに行こう?だから僕はね、必ず光一の所に帰ってくるよ

いつもそう言って雅樹は自分を置いて、国内外の名峰へ登りに行った。
あのとき英二の低い声に、懐かしい綺麗な深い声が共鳴して自分の心を揺さぶった。
ずっと目を背け続けてきた「雅樹の死」もう二度と生きては逢えないと認める、永訣の覚悟が姿を顕わした。
あの大好きな香と温もりは二度と自分を抱きしめない、そう認めることが怖くて、涙こぼれた自分に英二は言ってくれた。

「俺と一緒に行こう、雅樹さんと一緒に北鎌尾根から槍の天辺に登ろう?15年前に雅樹さんが途中になったルートの、最後を終わらせよう」

雅樹の途中になったルートを「最後」を終わらせる。
この「最後」という言葉に気がつかされた、終らなければ次は始められない、そう気づいた。
終えて諦めることの意味と、諦めた後に向かう先への希望を見つめて、自分は英二の言葉に肯った。
そして今、この窓から16年の夢を超える頂を見上げている。

「俺を行かせてくれるね、雅樹さん?約束通り一緒に北壁、2時間で登ってよね、」

見上げる氷食鋭鋒は、黄昏の始まりに佇んで氷雪を輝かす。
夏7月の遅い日暮にアルプスの女王は聳え、アルペングリューエンの時を待っている。
あの頂点に35時間後、自分はアンザイレンパートナーと立ってアルプスの暁に笑っているだろう。
そんな想いに被ったタオルの蔭から山を見、山図へと視線を戻した向うで扉の開く音が立った。

「光一、ちゃんと湯冷めしないようにしてる?」

ふわり石鹸と森の香が頬撫でて、綺麗な低い声が笑いかける。
香と声に鼓動ひとつ跳ね、タオルの蔭で耳の裏が熱をそめだし吐息がこぼれた。
その隣から長い指がデスクに置かれ、湯上りの熱る体温が背中から近づいて楽しげな声が微笑んだ。

「この山図、本当にすごいよな。こういう技術も俺、ちゃんと1人で出来るようになるよ、」
「ん、よろしくね?ア・ダ・ム、」

さらり冗談で応えながら、けれどタオルの蔭は頬も熱い。
近い体温の熱りと香は記憶を映し、遠い幸福な瞬間を想わせて体が反応してしまう。
ほんの1秒前まで山図の記憶と想いに意識は集中していた、それなのに今もう心も体も乱されている。

―ほんと調子狂わされっぱなしだね?やっぱり惚れちゃってるんだね、オトナの初心ってカンジでさ?

そっと溜息を吐きながら山図を畳み、ケースに戻す。
そのまま立ち上がり登山ザックへと仕舞うと、光一は冷蔵庫の扉を開いた。
掴んだワインボトルの冷気が掌から凍みて、意識の熱りを少しずつ収めてくれる。
こんな自分が気恥ずかしくて、困惑とグラスも一緒に携えながら窓を開いてベランダへ出た。

―雅樹さんにはコンナに困らなかったけどさ、ませていても体はやっぱりガキだった、ってコトだね?どきどきはしてたけど、

心裡ひとりごと笑いながら、グラスとワインボトルをテラステーブルに並べる。
冷たいガラスの感触に「落着けよね?」と自分に言い聞かせて、けれどタオルは頭に被ったまんま椅子へと座りこむ。
その肩に、ふっと温もりふれて目をあげると、長い指がパーカーを着せかけながら白皙の貌が微笑んだ。

「これから冷えこむだろ?肩、冷やしたら拙いから着てて、」

綺麗な低い声は穏かで、笑いかけてくれる切長い目は心遣いに優しい。
いつもどおり自分を気遣ってくれるパートナーが嬉しくて、素直に光一は笑いかけた。

「ありがとね、英二、」
「どういたしまして、これ開けるよ、」

綺麗な笑顔が隣の椅子に座り、ワインボトルを長い指に取ってくれる。
慣れた手つきでコルクを開きグラスへ傾け、ゆるやかに酒と香を注ぐ。
あわい金いろグラス揺れて光きらめく、その色に薄紅が射しこんだ。

「夕焼けが始まるね、」

これから始まる天空の瞬間に、光一は視線を上げた。
見上げた空はブルーから淡紅に色を変え、藤の花いろに黄金の雲ひるがえり、ゆっくり夜が降りてくる。
時計は午後8時前、今7月のスイスは太陽の時間が長い。この明るい夜に、白と黒の壁は屹立して目の前にある。
もうじきアルペングリューエンは始まるだろう、そんな予想に光一は席を立ち、部屋に戻るとカメラを取りだした。
使い慣れたデジタル一眼レフは自分で選んだ、けれどレンズは11年前に父の明広が買ったものでいる。
このレンズが映した愛しさに微笑んで、そっと宝物を抱くよう光一はベランダへ戻った。

「狙うのは夕焼けのマッターホルン?」

綺麗な低い声が笑いかけてくれる、その笑顔に薔薇色の光まばゆい。
なめらかな白皙の肌理に落陽は映えてゆく、綺麗で見つめて光一は明るく笑った。

「きれいなモン全てだね、」

答えながらテーブルをまわりこみ、片膝をつきホールドを決める。
迎角に構えたレンズの向こう鋭鋒は輝きだす、その瞬間へとシャッターを切っていく。
古いレンズに添えた手を回しズームを変える、そして広角に合せたフレームに薔薇色の横顔が映りこんだ。

―綺麗だね…

奪われた心が溜息こぼし、指はシャッターボタンを押す。
レンズ越しの美貌は黄昏に輝く、艶めくダークブラウンの髪は風ゆらす。
濃やかな睫の瞳に陰翳は謎めき、けれど強靭な意志は夢を現に捉えて山頂を見据える。
真直ぐに山を射る熱情の眼差し、その耀きの彼方に宵の明星は光を顕わした。

―あ… “Lucifer” が英二に輝いたね?

“Lucifer”

天体では夕星とよばれる“Venus”美の司星。
光輝と高潔の星は、至高の天使かつ堕天使にして魔王の名前を冠する。
そして、その名の根源的な意味は「光もたらす者」と謂う。

―高潔で天使で魔王で、光もたらすなんてね、ほんと英二みたいだ?

雅樹が消えた15年目に現れた英二は、いったい幾人の「時」を動かしたのだろう?
あの笑顔が吉村医師に再び登山靴を履かせ、後藤にクライマーを育てる情熱を起こし、美代にすら恋愛を覚まさせた。
そして自分に「光」をくれた。雅樹が死んだ瞬間に眠りについた夢と約束、その全てを英二の言動が照らし目覚めさせた。
その耀きに誘われてこの唇からあふれた約束が今、この場所へ自分を連れてきた。
だからこそベースにする部屋は、約束の頂が見える窓に拘りたかった。

―解ってないんだろうけどね、おまえが俺を、ここに連れてきたんだよ?英二、

レンズ越しのアンザイレンパートナーに微笑んで、もうワンシーンのシャッターを切る。
落日まばゆい瞳は夢と現のはざま、山頂を見つめる貌は天の炎に薔薇いろ輝き陰翳の謎に縁どらす。
宵の明星に譬えられる至高の存在 “Lucifer” を光と闇に象らせた、そんな男が自分の傍にいる。
そんな想いに雅樹と全くの別人と知らされて、明るい諦念から面映ゆく恋慕が募っていく。
こんな自分に途惑いながらも幸せは切なくて、甘い傷みにも雅樹との違いが分かる。

―どうしてこんなに苦しいかね、この俺が…人間の、オトナの恋愛ってやつかね?

雅樹と生きた時間には、幸福だけがあった。
だからこそ喪った幸福の分だけ傷は大きくて、尚更に「恋愛」から心は遠のいた。
けれど今は自分のアンザイレンパートナーに恋愛している、恋愛するなら最も面倒が多い相手なのに?
それでも求めたいほど惹かれて自分でも止められない、そんな自覚が何だか可笑しくて嬉しい。
それも愉しい?タオルの蔭に笑って椅子に戻り、カメラを膝に置くとグラスに口付けた。
ガラスのなか黄昏ゆれる酒、その8年前と同じ香と味に光一は機嫌よく微笑んだ。

「良かったよね、マッターホルン見える部屋でさ?ココ泊まっても見えない部屋あるんだよね、」
「うん、本当によく見えるな、手配とかありがとうな、」

嬉しそうに笑ってくれる、その笑顔に鼓動が跳ねる。
そんな幸せそうな貌は期待に困る、また耳元の熱をタオルの蔭に隠して光一は微笑んだ。

「大したことないね、ちょっと電話しただけだしさ、」

それ位お安い御用、そう言えるのは父のお蔭だろう。
父の明広はフランス文学を愛して大学も仏文科を卒業した、そのお蔭で自分もフランス語の日常会話に支障ない。
けれど「お蔭」の影響は本当は他にもある、そのことが雅樹を困らせて、けれど自分には幸福を与えてくれた。
そう思うとオヤジには感謝しないといけないな?そんな想い笑った隣で、穏やかに英二が微笑んだ。

「七機の人は今日、着いたんだろ?そっちも見える部屋だと良いけど、」
「あの人たちはどうだろね?ま、明日の夜はヘルンリヒュッテだから、存分に見れるけど、」

もう明日の夜は、マッターホルン東稜に居る。
あと20時間後には佇んでいる瞬間を想う、そして計画が頭を廻りだす。
明日はリッフェルホルンから戻り次第に手続きをし、ヘルンリヒュッテに入り北壁の偵察に行く。
取りつきに広がる氷河の段を明るいうちに観察し、登攀スタート時の地形変化を予測しておきたい。
出来れば16時半には着きたいかな?そう考えまとめてたとき、英二が笑いかけてくれた。

「光一、今日の写真はどれがお奨め?」
「うん?ちょっと待ってね、」

笑って光一はグラスをテーブルに置き、カメラを両掌で抱えこんだ。
いつものよう操作して画像を送り、そして気に入りの再生画面を本人へ向けた。

「いちばんのオススメは、やっぱコレだね、」

笑いかけて指で画像を示す、その隣から肩が寄せられ鼓動ひとつ跳ねた。
こんなことだけで乱れる自分の心と体に途惑い、けれど愉快な気持の至近距離で綺麗な低い声が笑った。

「なに、俺の写真かよ?」

可笑しそうな笑顔が見てくれる画面を、一緒にのぞきこむ。
白銀と蒼穹に佇んだ横顔の高潔な輝きは、液晶画面の中でも目映く美しい。
やっぱりこれは良い貌だろうな?満足に光一は飄々と笑って答えた。

「イイ貌だろ?ブライトンホルンの天辺から、マッターホルンを振り向いて見上げた瞬間だよ、」
「あ、写メ撮った後か?」

数時間前の記憶と微笑んだ貌に、かすかな痛みが鼓動に奔る。
英二が写メールを撮ってあげたい相手の、優しい声と笑顔は記憶で温かく切ない。
あのひとに背中を押されて今「覚悟」を本当は見つめている、その緊張に微笑んで光一は青い花の写真を画像に呼んだ。
ブライトンホルンから此処ツェルマットまで歩いた途次に咲いていた花、その凛々しく可憐な姿に笑いかけた。

「下山してツェルマットまで歩いた時のだよ、ゲンチアナ・ブラキフィラって言ってさ、竜胆の仲間なんだ、」
「光一、この写真は田中さんにあげるんだろ?」

すぐ気がついて綺麗な低い声が言ってくれる、それが嬉しい。
親戚でもある田中老人が最後に撮ったのは、御岳山の竜胆だった。
あの花の撮影中に氷雨に降られた田中は、持病の心臓発作を起こし倒れ込んだ。
そして救助に来た英二と光一に看取られたまま、故郷の御岳山に抱かれて永い眠りについた。
あれから9ヶ月が過ぎる今、英二と光一は三大北壁の一峰を前にアルプスの竜胆を見ている。

「田中のじいさん、昔っから竜胆が好きなんだよね。帰ったら、仏壇に持って行ってやろうと思ってさ、」

答えながら頷く想いに、アマチュア写真家だった横顔が記憶に温かい。
田中は両親亡き後、光一に山ヤとしての基礎を磨かせアルパインクライミングを特に教えてくれた。
岩質を見極めて掴み蹴る強度を調整して崩落を防ぎ、氷や岩の目を読んでハーケンを素早く撃ちこみ、かつ抜く。
こうした経験則になる独特の技術を多く田中老人は熟知し、それを受け継いだお蔭で自分の登攀スピードは速い。
農業を営みながら国内の山を登りつくした田中の、土が香るような高潔が雅樹とは違う想いで大好きだった。
そんな田中は1ヶ月に満たない短期間でも、英二を心から可愛がって奥多摩の山をよく教えていた。
その記憶に田中の意志と想いへ微笑んだ隣から、穏やかな笑顔は言ってくれた。

「きっと田中さん、喜ぶよ。プリントする時、俺にも1枚くれる?周太にあげたいんだ、田中さんのこと周太も大好きだから、」
「うん、俺もそのつもりだよ?じいさんの竜胆の写真、いつも周太って持ち歩いてるし、花好きだしね、」

あのひとへ、約束の場所で咲く花を見せてあげたい。
そんな願いごと隣に笑いかける、その想いの真中で端正な笑顔は告げた。

「光一、好きだよ」

心臓が、止められる。

ほら、こんなにも自分は愛されたがっている?
名前を呼んで「好きだ」と言われる、それだけで心ごと体も奪われる感覚が熱い。
見つめ合う眼差しに切長い目は静謐と熱情まばゆい、この熱に攫われかけながらも呼吸ひとつで光一は笑った。

「ありがとね、英二。俺の別嬪パートナーは憎たらしいね?」
「どうして憎たらしいんだ?」
「いま、周太のコト話してたろ?可愛い奥さんネタの直後に口説くなんてね、浮気男の常套手段みたいだろ?嫌だねえ、」

語尾の「ねえ?」にご不満を現わしてしまう。
だって今の自分は北壁に集中したい、それなのに惑わさないで?
そう思うことは自分の勝手な都合と解かっている、けれど無意識の誘惑は強くて、本当は怖い。

―本当に惚れているから怖い、ね…溺れて、全てを忘れそうで怖い

ずっと探し求めてきた唯ひとりのアンザイレンパートナー、そして最愛と呼べるだろう相手。
そんな相手だと期待したい隣に心も体も乱される、この想いをまだ知りもしない英二が少し憎たらしい。
だから余計に困らせてやりたくなる、この我儘と見つめた真中で少し困ったよう英二は言ってくれた。

「嫌な思いさせたんなら、ごめん。周太も田中さんも気遣える光一のこと、優しくて好きだなって思ったから言ったんだ、ごめんな?」

本当にそれだけで他意は無い。
そう目でも伝えてくれる、けれど言葉ごと今は憎たらしい。
本当に天使で悪魔だね?可笑しくて笑いながら光一は指を伸ばし英二の額を小突いた。

「ありがとね、英二。でもね、状況を考えて口説いてよね?まだ訓練控えてんだからさ、俺を変な気にさせるんじゃないよ、」

本当に変な気にさせないでよ?
本音は変になってしまいたい、あのトランクにある紙袋を開けてしまいたい。
けれど今は大切な約束に全神経を集中させていたいのに?そんな想いに笑いかけた先で端正な微笑は訊いてくる。

「ごめん、だけど俺の言った事いつもと変わらないし、奥多摩でも訓練の前とか言ってると思うけど?」
「あのね?いつもは寮か車の中、後は山小屋か雪洞やテントで言ってるだろ?どこも変な気だろうが、不可能だからイイんだよ、」
「不可能?」

短く単語を反復して、英二はすこし考えこんだ。
何を言っているのか気づいたのかな?そう見た向こうで納得したよう英二は微笑んだ。

「そういえば俺、光一とホテルに泊まるの初めてだな?ホテルだと自由に風呂が使えるから、ってこと?」

いつもの登山では山小屋やテント等か四駆の車中泊、だからホテルや旅館に泊まったことはない。
そのため風呂は日帰り温泉などで済ます、そして寮では共同の大浴場だから大抵は誰か一緒になる。
いずれも風呂を自由なプライバシーの中では使えない、その為に「不可能」なことは何なのか?
その答えを言ってくれそうな唇の動きを封じたくて、光一は英二の頬を小突いた。

「解かったんならね、今は言葉にしないでくれる?今、俺は北壁の踏破に集中したいんだよね。明後日は特にスピード勝負だよ?
予定タイムで登りきるんなら集中力が必要だ、それには雑念になるモンは今、入れたくないんだよね。全部、終わってからにしてくんない?」

今日のブライトホルンはスタートに過ぎない、まだ終わりじゃない。
この自覚に欠けたら遭難に繋がって、一瞬の落ち度も赦されないまま「死」へ誘われる。
だから今この心が抱いている恋慕すら、自分自身が無視していたい。そう微笑んだ隣で綺麗な笑顔が訊いてくれた。

「解かった、しばらく自重するよ。でも光一、頂上のキスが出来ないってこと?」
「それは良いよ、でも人がいるとこは禁止ね、」

さらっと笑って答える意識は、いつもより鎮まっている。
もう感覚から登頂へと意識を集中させたい、この意志のまま明日からの予定へと微笑んだ。

「明日のロッククライミングが終ったらね、アルパインセンター行って手続したらヘルンリヒュッテ行こうね。で、明後日の朝には天辺だ」

明後日、もう32時間後には約束の場所に立っている。
そのパートナーは冷静な熱情の瞳を微笑ませ、穏やかなトーンで言ってくれた。

「おう、明日は1回で合格するよう集中するな。五日市署と高尾署の人もヘルンリヒュッテで集合だよな?」
「だよ。もし明日が不合格でも、ヘルンリヒュッテに全員集合だからね?ま、今回の面子なら合格するだろうけど、落ちたらモロばれだね?」

もし不合格なんてコトになったら、大いに恥だよね?
そう言外にふくませた笑顔に、潔く英二は笑いかけてくれた。

「俺の明日と明後日の結果は、七機と五日市、高尾でも話題になるってことだよな?」

青梅署、五日市署、高尾署、第七機動隊山岳レンジャー。この4部署で警視庁の山岳救助隊は構成される。
今回のマッターホルン北壁登攀は、この警視庁山岳救助隊における合同訓練として各部署からパートナーごとに選出された。
だから英二の言動と登山記録は、警視庁山岳救助隊の全てに知られることになる。この現実に光一は軽やかに笑った。

「だよ?おまえにとったら今回は、俺のパートナーと次期セカンドの力試しをされる、公認テストってトコだね、」

今回の合同訓練は英二にとって、その実力を公認させるためのテストでもある。
既に自分は警視庁山岳会でも実績と実力を認められ、バックが後藤と蒔田であることも納得されている。
けれど英二は違う、元は一般枠で採用された上に山の経験すらなかった、この置かれる立場を英二は改めて口にした。

「警視庁でも全国警察でも、日本の山岳会でも光一の実力は認められている。そのアンザイレンパートナーに俺が相応しいかどうか?
それを本当は、皆が危ぶんでるって解かるってるよ。三スラや滝谷とかも完登出来たけど、まだ俺は山の経験がやっと1年ってとこだ。
それに光一とふたりで登ってるから、どれも非公式な記録だよな?だから今回、他の部署の人に俺の完登を見せて公認される必要があるな?」

経験年数は無くても実力は有る、それを英二が示す場として後藤副隊長と蒔田地域部長は遠征訓練の参加を決めた。
警視庁山岳会の2トップであり両親の友人が決めた意図に、光一は愉しい気分と答えた。

「だね、今回は俺たちだけマッターホルンとアイガーの北壁を連登する。他のヤツは北壁アタックは片方だけだ、北壁はキツイからね?
だから宮田の連続アタックは無謀だ、そう皆は言ってるらしいけどさ。でも、後藤のおじさんも蒔田さんも無謀だなんざ思っちゃいない、
青梅署の皆も宮田なら出来るって信じてるよ、おまえの実力と努力を知ってるやつは皆そう思ってる。たぶん富士吉田署も思ってるだろね?」

まだ山岳経験1年に満たない英二、それでも信望は厚くなり始めている。
この事実が嬉しくて笑った隣から、本人は不思議そうに訊いてきた。

「富士吉田署も?どうして?」

どうして山梨県警の所轄が自分を認めてくれるのだろう?
そんな貌が可笑しくて、笑って光一は英二の額を小突いた。

「おまえ、冬富士で遭難救助したよね?あの学生のこと忘れてんの?」
「あ、それか、」

もう半年前の記憶に笑った英二の貌は、本質の恬淡とした無欲が明るい。
こういう面も好きだと見つめながら光一は、明確なトーンで信頼を告げた。

「おまえの山の姿をいちばん見てるのは、俺だ。英二の実力と運は誰より俺がよく知ってるよ?だから世界で一番に俺がおまえを信じてる、
信じているから明日も明後日も、俺は本気を出させてもらうよ?英二にはお初の山だけどね、だからこそ、本気の俺についてきて欲しいね、」

初めての山、それも三大北壁に数えられるマッターホルン北壁。
そこで本気で登攀する自分のペースに着いていくことは、簡単な事じゃない。
その「簡単な事じゃない」を要求する意図へと英二は微笑んでくれた。

「光一のペースに着いて北壁を登れたら、簡単じゃないアタックを俺が出来たことになるな?そうしたら公認せざるを得ない、その為だろ?」
「そ、このテストに完勝するんならね、いちばん手っ取り早い方法だろ?」

これが一番に影響力が大きく、英二のバックアップになるだろう。
その決断への真摯を真直ぐ見つめて光一は、はっきりアンザイレンパートナーへ告げた。

「でも約束してよね?無理だと思ったら必ず、すぐ俺に言え、」

この事だけは約束してほしい、無理は山でのリスクを肥大化させるから。
どうか無事に共に完登したい、瞬間をずっと共に歩き続けたい、この願いに光一は口を開いた。

「無理は事故に繋がる、それは却ってマイナスだ。絶対に無理するな、必ず自己申告しろ。それが出来ないなら俺は、最初から手加減する。
英二は正確に自分の調子を把握して、無理のないクライミングが出来る。そう信じているから俺は、本気だして登ろうって決められるね、
だから約束してよね?少しでも無理があったら、ヤバいって判断したら、必ず自己申告しろ。その判断を信じて俺は、挑戦したいからね、」

英二の判断を信じている、だから本気で挑戦をすることが出来る。
この信頼を告げたザイルパートナーは、嬉しそうに微笑んでくれた。

「うん、無理って思ったら必ず言うよ。必ず無事に帰るって周太とも約束してるから、信じて大丈夫。光一との約束だってあるだろ?」
「だね、俺との約束キッチリ果たしてもらうからね?そのためには自己申告の約束も、ずっと守り続けろよ?」

これなら大丈夫かな?嬉しく笑って光一はグラスに口付けた。
ゆれる白ワインに黄昏きらめき朱がとけて、あわい赤に酒は色彩を変える。
酒も空気も染める最後の陽光に、岩壁は黒と赤に耀いて深紅の薔薇を想わす。
壮麗な山に咲き誇る落陽の華、その儚く眩しい瞬間を見つめる隣から綺麗な低い声が尋ねた。

「明後日の北壁、目標タイムは?」
「それ、言っちゃってイイ?」

笑って振向いた隣、切長い目は真直ぐ受けとめてくれる。
大好きな懐かしい俤と似て安らぐ、けれど熱情まばゆい眼差しに鼓動が舞う。
この昂揚は待ち続けた約束たちの喜び、その幸せを見つめた先でアンザイレンパートナーは静かに微笑んだ。

「うん、言っちゃって良いよ?その方が俺も心構えが出来るから、」
「よし、別嬪パートナーのお許しが出たね?」

この答えを待っていた、幸せで笑って光一は英二を見た。
そして呼吸ひとつ微笑んで、ずっと待ち続けた約束の夢を明後日に懸ける現実に変えた。

「シュミッドルートを2時間だ。ヘルンリヒュッテを4時に出て、俺をトップにコンティニュアスでいく。ヤってイイ?」

マッターホルン北壁・シュミッドルートは標高差1124m、完登の世界最短記録は1時間56分40秒。
そこへの近似値へ挑戦しようという誘いは、本当は未だ英二には厳しいかもしれない。
それでも今この時に登っておきたい、この今「23歳」である英二に夢を駈けさせたい。
この申し出への信頼と祈りの向こうから、英二は綺麗に笑って応えてくれた。

「いいよ。速く登った方がマッターホルンは安全だし、とにかく着いていくよ、」

本当に片道2時間で登攀すれば頂上に6時、日の出の頃に到達できる。
それならヘルンリヒュッテに午前中に充分戻れる、この「午前中」がマッターホルンでは安全に繋がらす。
後は天候さえ恵まれたら大丈夫だろう、そんな考えの正確さも嬉しくて光一は愉快に笑った。

「よし、決まりだね、」







(to be continued)

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soliloquy 建申月act.4 Venus―another,side story「陽はまた昇る」

2012-12-11 04:17:57 | soliloquy 陽はまた昇る
夕星、道しるべに輝いて
第58話「双璧」7と8の幕間です



soliloquy 建申月act.4 Venus―another,side story「陽はまた昇る」

From :宮田英二
subject:北壁2
添付ファイル:アイガー山頂とメンヒの銀嶺
本 文 :アイガー北壁、3時間かからず登れました。無事にクライネシャデックのBCまで戻ったよ。
     今11時前、ふたりとも元気です。これからBCを回収してグリンデルワルトに戻ります。
     そしたら風呂入って昼飯だよ。スイスの食事も旨いけど、周太の飯が恋しい。


開いたメールの文面は、アルプスの光映す青と白がまばゆい。
薄暮に沈む街路樹の木蔭、輝かしい写真と文章に周太は微笑んだ。

「…よかった、」

そっとこぼれた想いに、瞳の底から熱あふれ零れる。
ひとすじ頬伝う涙に笑顔ひろがって、指先は「返信」を押した。
携帯電話のボタンを操作しながら考え、まとめた想いを言葉に変えていく。


T o  :宮田英二
subject :ありがとう
本 文 :アイガー北壁おめでとう、そしてお疲れさまでした。ご飯ちゃんと食べてね。
     俺もこれから飲みに行ってきます、手塚が誘ってくれたんだ。美代さんと先生も一緒です。
    

書いて読み直し、すこし考えてしまう。
英二の「周太の飯が恋しい」が嬉しい、けれど作ってあげるタイミングがあるのか解らない。
それでも、求めてくれるのなら応えたくて考えて、まとめた答えを付け加えた。

T o  :宮田英二
subject :ありがとう
本 文 :アイガー北壁おめでとう、そしてお疲れさまでした。ご飯ちゃんと食べてね。
     俺もこれから飲みに行ってきます、手塚が誘ってくれたんだ。美代さんと先生も一緒です。
     明日は家に帰るね、御惣菜の作り置きもしておきます。

出来上がった短い便りに微笑んで、そっと送信ボタンを押す。
送信されていく画面を見つめながら遠い名峰を想い、8時間の時差を心は超えていく。
いま真昼の光にある婚約者の横顔は、どんなふうに笑ってくれているだろう?

…どうか幸せでいてね、昼も夜も、朝も

スイスの日没は今21時、あと10時間で夜は英二の許に訪れる。
そして恋人達に初めての瞬間が微笑むだろう、その幸せを自分はここから祈りたい。
この心は泣けない涙に濡れても良い、だからどうか今宵ふたり、幸せであってほしい。
そんな祈りに微笑んで携帯を閉じ、ポケットにしまうと街路樹の下から通りへ歩き出す。
梢の香から排気ガスの匂いへ変る空気を歩く、その道にふと上げた視線へと一点の輝きが映りこんだ。

「あ、…宵の明星?」

きらめく一番星が、残照の空に光る。
あの星は10時間後にアルプスへ輝くだろう、それを恋人は見るだろうか?
もし見るのなら幸せな笑顔で見つめてほしい、そんな祈りに夕星へと周太は微笑んだ。


夕星“Venus” 金星または“Lucifer”
光輝と高潔の星は唯一神に仕える至高の天使、かつ堕天使の総帥たる魔王。
そして、光もたらす者。





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