北京オリンピック

2008年07月29日 | Weblog
先日北京五輪へ出場の決まった選手から、治療の相談を受けました。

患者さんはチームの主力選手。

何とか北京で動けるようにしたいと、本人も真剣です。(←私も)


MRIでは損傷を認めていないとのことでしたが、

強い非ステロイド系の消炎鎮痛薬を飲んで練習しているとのことでした。

本人談では、鎮痛薬とストレッチで

今のところ痛みが1/2になっているといいます。



筋肉に「傷」は無い。

でも、炎症に対して切味のよい薬が出ている。

薬のほかにもストレッチをしている。


で、症状の緩和を見る。



なんか変だと思いませんか?






怪我による炎症に対して、鎮痛剤は切れよく効いてきます。

しかし、怪我でしたら「ガッツリ」ストレッチすると、怪我は悪化してしまいます。

鎮痛剤で痛みが治まっていたとしても、怪我が治っているわけではないのですから

怪我による痛みであった場合、更に大きな怪我につながるリスクを負いながらプレーする事になります。

また、この痛みが「怪我」であれば、たとえ痛みが消えてプレーすることが出来ていても

鎮痛剤が切れれば文字どうり「痛い目を見る」憂き目に会うはず。





であれば、薬が切れているであろう時間にストレッチをしてみれば、

「怪我であれば症状の悪化」となり

「痙攣や短縮であれば症状の緩和・解消」となるはずで

ある程度治療の方向性がハッキリするはずです。


※ちなみに、怪我でなければ症状の改善は「ストレッチ」によるものと考えられますから薬は飲まなくてもよいものということにもなるのです。
鎮痛剤はけっこう胃を荒らしますから、飲まずにすめば飲まないに越した事はありません。





確かめるため、朝、薬を飲む前にストレッチをしてもらって変化を見てもらいました。

本人曰く、症状が悪化したかといえばそうでもなく、

むしろ楽になっていたそうです。

ストレッチだけで「すっきり」と改善しないところを考えると

大きな傷は無いけど小さな傷(マイクロトラウマ)はあって、ちょうど「筋肉痛(び慢性の筋炎)」のような状態なのかもしれません。


軽い筋肉痛でしたら、軽い有酸素運動で血流をよくしてあげれば痛みが和らぐのは

皆さんも経験的にご存知かもしれません。

問診では、

・練習後は痛みが減少し、動きも良くなっている

とのこと。

触診では、はっきりと熱感を持っているところはありません。

ストレッチにもきちんとよい反応を示しています。


これは勘ですが、小さな傷も蓄積すると大きな炎症につながることもあるので、

このケースではその端境の状態ではないかと考えました。

こういった怪我の進み方をRSI(反復性ストレイン損傷)なんていうんです。

端境ですから、治療に対してもあるときは「怪我」寄りの反応が出てきたり

またあるときは「短縮や痙攣」を起した筋のような反応を示したりするんではないかと考えました。

こういったややこしい時も、その都度外からの刺激に対する身体の返事を聞くことで

何をすべきかハッキリしてくる事が非常に多い。



ストレッチによい反応を示すのであれば、「短縮や痙攣」となりますから

積極的な治療が出来る状態であることがわかります。

今後の練習・試合如何ではどう転ぶかわかりませんが

現時点では一先ず「治療可」の状態と判断できました。


治療後、痛みと可動範囲にはっきりと改善が見られましたので、

あとは私の付いていけない「北京」でも困らないようにと

セルフケアをお伝えしました。

具体的には、以下の手順でのウォームアップとクールダウンを提案させていただきました。

<ウォームアップ>

1、反射を利用したストレッチで、運動神経の興奮による痙攣を抑える

2、短縮した組織をジックリ「スタティック」に伸ばす

3、再び反射を利用したストレッチもしくは軽いジョグや競技動作をして

  身体を温める

<クールダウン>

1、痛みの増加が無ければ、ジックリストレッチ

2、患部のアイシング(15分冷やす⇒常温に戻す×3セット)

<注意として>
練習中や練習後の痛みの増加を認めたら(急性の炎症に発展したら)、潔く3日~6日の間アイシングのみ。

練習もお休み。(痛みの無い運動は行ってよい。患部は休ませる事が大切)


私「無理は禁物ですよ。

 といったところで、無理しなきゃなんないでしょうしね…」

A選手「(苦笑)」

私「無理しないわけにも行かないか(苦笑)」

A選手「はい(笑)」

人事は尽くしましたから、あとは天命に任せて…

というところでしょうか


A選手の無事と大会でのご活躍を切に祈っています。

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