おじぎから戻すとき、腰が痛むんです。

2009年08月19日 | Weblog
立ち際や、おじぎの姿勢から上半身を起こす際に腰の付け根が痛い

と来院されたAさん

諸々お身体を調べてみても、捻挫や神経の故障はないようです。

しかし、膝を内に向けてお尻を後ろに突き出した姿勢が気にかかります。

この姿勢は経験上、骨盤の関節の不安定性(グラつき)による故障を生じやすいようです。

ためしにAさんの骨盤を両サイドからしっかりと支えて、

ぐらつきを抑えてから痛む動作をしてもらうと

Aさん「あれ?痛くない

とおっしゃいます。

『やっぱり!』と、私

これで痛みの原因が骨盤の関節の支えの悪さにあることが判りました。


私たちの骨盤は両サイドの寛骨という腿の骨と股関節を作っている骨と

その間に挟まる仙骨という骨で構成されます。(あとシッポの骨の尾椎)



Aさんのお尻を後ろに突き出した姿勢では、

仙骨を後ろから支えている大臀筋(↓左の図)が上手に働きません。


プリンシプルズ オブ マニュアルスポーツメディシン「ペルビックガードル」より 

結果として寛骨とのあいだから仙骨が後ろに押し出されるように納まりが悪くなります。

仙骨という骨は腰を反らせるとき、

始めに少し前へ倒れこむように動くのが正常な運動とされます。

Aさんの場合、仙骨の後ろ側からの支えが弱い分

動き出しの「仙骨のおじぎ」ができなくなっていたようです。

こうなると、腰を丸めるときには痛まないのに

反らせるときにだけ仙骨周囲の関節にズレや衝突を生んでしまい痛む

なんて事が起こります。


この仮説が当たっているかの見極めは、

正しい位置に仙骨を支えて問題の動作で痛みが和らぐか

をみることになります。


そういったわけで、前出の骨盤を押さえて痛みが治まるか?

といったやり取りになったわけです。



Aさんの治療としては、

正しい位置に各関節が納まることを邪魔する強張りを

手技による治療でとることからはじめます。


しかし、固さをとるだけでは解決になりません。

支えが失われた結果の痛みですから、

ゆるめただけではかえって痛みが強くなることさえあるのです。(腰に限らず臨床上良くあることです。)

これを何とか収めるには、関節の支えにかかわる

「筋肉の働き」

を取り戻してもらわなくてはなりません。

幸い私たちの筋肉は上手に運動すると、

その筋肉を動かしている神経の働きが促され

一時的に働きを強めることができたりします。

(これを専門的には「促通:そくつう」といいます。)

Aさんの治療では、床に仰向けにねて

踵をベッドなど床よりも高いとことろに乗せ

腿から胸までを一直線になるようお尻を持ち上げたまま

10秒保持し、10秒休む

といった運動を3セット行ってもらいました。

狙い通り、運動療法を施行した直後、Aさんの症状は納まっていました。

Aさん「あれれ???」

と不思議そうなAさん。

してやったりと、ほくそ笑む私。


基本的に運動の無理強いはしませんが、

より効率的に改善を得るために

わたしの治療では、時に運動療法をご提案させていただくことがあるのです。

一般的に治療というと、

一方的に施すものというイメージが強いようですが、

治癒というゴールに向かって治療者と患者が一緒に協力し合う

そんな治療があってもいいと思うのは私だけでしょうか!?

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【ちょっとつぶやいてみます】

今までにも腰痛に関していろいろと書いてきましたが

本当にいろんな原因があるものです。

同じような症状でも、その原因や治療プランは十人十色(ん~、十人十色は言い過ぎかな…)

患者さんの身体に合わせてその都度治療が変わることも良くあることです。

紋切り型にはならないからこそ手技治療は面白いんです。

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