空手少女

2011年06月08日 | 治療の話
空手少女のAさんは高校生。

週末に大阪で行われる全日本大会を控えているそうです。

可愛らしい外見とは裏腹に

世界大会上位入賞(中学生の部)の実力者…

世の中、人は見かけによりませんね。


Aさんのご相談は、

稽古中に強い「ふくらはぎ」と「肩」の疲労に襲われるとのこと。

また、蹴りが出しにくいともおっしゃいます。


調べてみると、胸郭(アバラのカゴ)が丸まったまま動きを失っています。

また、腹筋もだいぶ固くなっているようです。


Aさんの空手はフルコンタクトルール。

お腹をバンバン叩き合いますから、

試合中ずっとお腹を引き締め続けているのでしょうね。


お腹の筋肉は肋骨に伸びていますから、

お腹の筋肉がカチコチに固まれば、肋骨を介して胸郭がおじぎし、猫背になります。




ここでちょっと脱線します。

-----------------------------------------------------------

筋肉は縮めたまま使い続けると、

その長さが短くリセットされてしまいます。


これは「短い状態が普段使いになってしまう」ということなので

縮んだ筋肉がつなぐ関節の動きも窮屈になってしまい

関節や筋肉のトラブルの元となります。

------------------------------------------------------------

さて、Aさんの話。

私は、Aさんの諸々の悩みの大元はここにあると考えました。

と、申しますのも、

猫背になると肩の位置(肩甲骨の位置)は外に滑り、

肩を突き出された状態になります。



↑正常な肩甲骨の位置



↑「猫背」の時の肩甲骨の位置:肩甲骨の間隔が上の写真より広がっています。


この状態では胴体と腕の繋がりあいが悪くなりますから

力は伝わりにくいし、なにより肩関節を傷めやすいのです。


※肩甲骨が前に突き出た位置にあると、肩甲骨の向きに対して上腕骨がくの字に向き合うことになります。
この位置関係では上腕をしっかりと肩甲骨-体幹に固定できません。

パンチの際に肩関節がクッションになってしまい、力が伝わりきれないばかりか
それでも尚、強いパンチをうとうとすれば、肩関節の故障につながってしまいます。




※肩甲骨の向きと上腕骨の向きが直列にならんが状態です。
この「肩甲骨の向き」を肩甲平面:スキャプラプレインといいます。

この位置では肩関節を取り巻く筋肉が働きやすいので、故障しにくく、非常に強い力を発揮してくれます。



また、蹴りの際には多くの場合で、支点を胸に置くことになりますから

胸郭の動きが失われると、スムースに蹴りを打つこともできなくなります。

(下段蹴りは別。多くの選手はパンチと同じく骨盤に支点をおきます。)


↑胸を開きながら支点となり、胸より下が逆方向へと回転しています。



↑共に緑の線は股関節の角度をイメージして書き込んでみました。
 青い線はフトモモの回旋する向きです。
 下段蹴りもパンチも、股関節を曲げ(屈曲し)両方のフトモモを内側へ絞り込んで(内旋させて)います。
 どちらの運動も回転中心が骨盤内にあるように見えるでしょう!?

また、背を丸めた姿勢では、踵に重心が移りやすく、

脛の筋肉への負担も増してゆきます。


以上のことから、Aさんの悩みの大きな原因を

腹筋の短縮に起因する胸郭の動きの悪さにあると考えたのです。


さて、果たしてこの推理は正しいのでしょうか?


検証に移ります。


先ずは徒手医学の技術を用いて、関節に出来上がった可動制限を取り除きます。


私「ちょっと蹴ってみて。」

Aさん「あ、蹴れる!」

結果は良好の様子。

推理も外れてはいなかったようです。


その後はコンディショニングとして

蹴り際の体幹と下肢の連動性を高めるエクササイズを行い

蹴り→パンチ

パンチ→蹴り

の連動性を高める神経系のトレーニングを行うと…


『うん、いい感じ』←手前味噌…


Aさん本来の動きが垣間見えるまでになりました。




あとは試合当日のアップに使って欲しいエクササイズと

その順序について説明し

この日の介入は終了です。


【Aさんへ】

おもっきり暴れてきてくださいね~!

おすすめ動画