斜視の治療02

2016年04月05日 | 治療の話

さて、前回の続きです。

頭蓋骨への対処で仰臥位では滑らかな動きを取り戻した男性の右目。

身体を起こし立ち上がってみると、左の肩こりもなくなったといいます。

ですが、再び右目が内によります。

身体全体の動きも右への側屈回旋の易可動性(「動きすぎ」の意)も4割減といったところです。

このことから、『恐らくは腰から下の荷重関節に問題が残るんだろう』と考えました。

調べてみると、仙骨の可動性に問題が見つかりました。(左下外側角の後方変位・右腰仙関節が閉じたまま開かない=仙骨の右側屈右回旋制限)

仙骨の可動性を取り戻すと、体幹の動きもさらに改善されるとともに男性の右目は再び正面に向き、眼球運動の改善も現れました。

頭蓋と仙骨は硬膜を介して互いに連動して動きますので、こうした現象も珍しくはありません。

初期評価では頭蓋に主要な制限を感じたわけで、仙骨は頭蓋の変位の影響を受けた二次的な障害だと踏んだんですが、結果からいえば、仙骨側にも器質的な制限(拘縮)があったわけです。

このことから、長い月日の間、歪んだ位置関係で使われたために、仙骨に生じた機能障害が器質的な変化(一部の寡動による線維化)にまで発展していたという推論が成り立ちます。

私は講義で「二次的な障害も長期にわたると一時的な制限因子として振る舞う」と話してきましたが、正にそうした例でした。

こうしたケースでは、頭蓋・仙骨双方へアプローチしなくてはなりません。

どちらか一辺倒では、起こった側がまた元の状態へと導いてしまうからです。

さて、ここまで来て、次の課題は「セルフケア」です。

一般な患者さんにやれることの中で、治療効果の高いものを見つけなくてはなりません。

そこで、まだ若干残る全身の右回旋右側屈の易可動性の変化を判断基準に、ある手法を試行していただきました。

つづく


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