つくづく思うのは、
『私たち治療家は患者さんの身体を通じて学ばせていただいているのだなぁ』
ということ。
いきなりどうした!?
と言われそうですが、ま、そんな感じな出来事があったんです。
数か月に一度、本当に困ったときか気合のこもったレースの前にいらっしゃるAさん。
今回は膝のお皿の上の痛みのご相談でした。
なんでも、10㎞ほど走った翌々日から膝が痛みだしたとのこと。
調べてみると、膝のお皿と腿の骨(膝蓋大腿関節といいます)の間に問題があるようです。
お皿を圧して上下にずらすとゴリゴリというかザラザラといった雑音がきかれます。
このことから膝蓋骨の裏面か大腿骨側の関節面に傷跡ができていることが判ります。
私「これ、痛みますか?」
と伺うと、Aさんは痛み方はさほど激しくはないものの、痛みが感じられるといいます。
軟骨のように血流が極端に少ない部分に傷ができると、腫れて痛みだすまでにタイムラグができたりするんです。
このことは痛みを誘発するエピソードから実際に痛むまでの経過とも合致します。
どうやらAさんの痛みの正体は「膝蓋軟骨軟化症」という関節症のようです。
でも、テストでの痛みが小さいことから幸いなことに治りかけの状態でもあることが判りました。
四頭筋の緊張を落とし、脛骨の変位を正す通常の処置をした後、Aさんの膝は痛まず滑らかに動かせるようになりました。
あとは実際に走ってみて、痛みなく走れる距離を伸ばしてゆくことになりますが、
Aさん、まだ浮かない顔をしています。
私「どうされました?」
Aさん「膝の奥がゴリゴリいうのは治らないのでしょうか?」
なるほど…
残念ながら、雑音の出所が膝蓋骨の軟骨面が傷つきできた傷跡の凹凸から生じるものなので、「音を消す」のはなかなか難しい相談なんですですが、「できる限りのことを」と探した一手で面白い結果が待っていたんです。
場所は膝蓋骨の上縁、内外側広筋の切れ間の大腿直筋の下層。
恐らくは中間広筋遠位だと思われますが、痛みをさほど伴わない硬結が見つかりました。
この硬結にポジショナルリリースを施したところ、膝蓋大腿関節の雑音が大幅に減少したのです。
当然これだけでは『この硬結が雑音の犯人だ!』とも『これで雑音が減らせる!』とも言えません。
私自身この時点では『偶然か!?』とも考えました。
さて、そうとなったら検証しない手はありません。
痛みのない側の膝を調べてみると、症状こそないもののこちらもゴリゴリザラザラ雑音が聞かれます。
渡りに船とはこのことです。
こちらの側にも同様の処置をしたところ、やはり雑音が小さくなる。
中間広筋は膝のお皿を関節に安定させる作用を持つ筋ですから、ここが円滑にコントロールでるようになることで関節の摩擦も低減させることができるのでしょう。
いままで雑音は構造的な問題なので仕方のないものと考えていた節があったので、考えを改めさせられた出来事でした。