外側大腿皮神経痛の治療

2018年11月02日 | 治療の話

【外側大腿皮神経痛とは】

外側大腿皮神経痛という故障は外側大腿皮神経という末梢神経の傷害です。

この神経は腰椎の2・3番から始まって、股関節の全面を鼠径靭帯という靭帯のトンネルの下をくぐって腿の外側の皮膚へ伸びる知覚をつかさどる神経です。

腰椎や鼠径靭帯部(図の〇の部分)で締め付けられることで知覚鈍麻や異常知覚(チクチクと痛む)といった症状が現れます。

鼠経靭帯直下での傷害はきつくベルトを締め続けたケースや極度の肥満を呈しているケースで生じやすいと考えられています。

治療としては神経の締め付けを開放し、傷ついた神経線維に正常な回復に導いてゆきます。

 

【症例】

5年以上左ももの外側の皮膚がチクチクと痛み続けると相談にいらっしゃった細身のAさん。

病院では心身症を疑われ、整骨院では腰椎の故障だといわれたとのこと。

しかし、なかなか改善が見られず…

そんな時にとよたま日記の「腿の外側がピリピリと痛む:外側大腿皮神経痛」の記事を見つけ

自身の症状は『まさにこれだ!』とご来院を決心されたとのこと。

もう3年も前の記事なんですが、残しておくものですね、文章に。

書いた甲斐があろうってもんですよ。

でも、ですね…

発症から5年以上続いているとなると『後遺障害なのかもなぁ…(-_-;)』と残念なケースが頭をよぎったりもます。

Aさんの期待が大きく見えるだけに、思った結果につながらなかった場合のガッカリした顔を想像すると

ちょっとだけ気が重くなったりもしますが、症状が後遺障害であるかどうかは治療してみなければ分かりません。

やることは一緒。

当たり前にできることを当たり前にやるのみです。

ということで、いつものように全身の機能評価を始めます。

まずは腰椎の故障なはないのかと診てみます

でも、脊柱をどんなに動かしても症状に変化はないようです。

腰椎部の動きもいいですし、どうやらこの部分の問題ではないようです。

つづいて鼡径部(上前腸骨棘という骨盤のでっぱりの内側あたり)との交差部位(図の〇の部分)を調べます。

するとAさん眉間にしわを寄せて痛がります。

「腿に痺れが広がったりしますか?」

と聞いてみると首を縦に振るAさん。

鼠経靭帯でのチネルサイン陽性(外側皮神経痛のサイン)です。

『なんだ、フツーの外側大腿皮神経痛か…』

と拍子抜けする私。

ここで見る限りごく教科書的な状態です。

これがなんで5年以上も見過ごされたのかどうも釈然としませんでしたが、ともあれ原因部位は特定できました。

あと問題となるのは、治療にたいして傷害された神経組織がどの程度のリアクションを返せるか、です。

後遺障害なのか、あるいは回復の余地があるのか、答え合わせに治療を掘り下げてゆきます。

まず、神経と靭帯の癒着を調べます。

『うん、いい感じにへばりついとるね。(^_^;)』

『これって、実に教科書的な大腿外側皮神経痛なんじゃない!?』

と、また拍子抜け。

さっそくDTMという手法で癒着をはがしてみたところ、どうやら症状も軽くなるようです。

5年以上続いた症状のわりに治療への反応はフレッシュなAさんの外側皮神経。

どこに行っても打つ手が見つからなかったと聞いていたので、

いささか拍子抜けな感もありましたが、回復の兆しを見出すことができてよかった。

セルフケアとしてDTMをお伝えして初回の治療は終了です。

あとは経過を追ってゆくことになるのですが、お会計の際にちょっとしたおまけを見つけました。

Aさん、タイトなジーンズを履いていたんです。

ご本人もうすうす気が付いていたのかもしれません。

「このジーンズが悪かったんでしょうか?」

とAさん。

曰く、いつもタイトなパンツをはいているのだとか。

そのズボンをはいたまま足を組んで座り続けでもすれば、確かに。

ベルトラインの締め付けを少し緩める工夫をしてもらうよう付け加え、今回の治療を終えました。

=おわり=


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