あた子の柿畑日記

田舎での日々の生活と趣味のレザークラフトについて

写経をする人

2007-10-23 21:41:01 | くらし

 写経の思い出その2です。


 ちょっと恥ずかしいですが、中身は乏しいわたしのお財布を、お見せします。 お金がなくても、必ずいつも真ん中に入っているもの。



 取り出してみると、こんなものです。 もうボロボロになりかけています。でも、これは外側だけ。



 さらに中身を取り出し、広げると、ほら!



 これは、平成12年11月4日に、 トヨコさんという82歳のおばあさんが書かれたものです。 
 トヨコさんは、一人で暮らしていました。 そして、珍しい切手や外国のお金などを子どもたちに見せてあげてくださいといって、たくさん寄付してくださいました。 そのお礼におうちへ伺ったとき、いただいたのがこの般若心経です。

 トヨコさんは、 小学3年生までしか学校に行っていません。 トヨコさんは学校が好きでとても行きたかったのですが、遅くに生まれた妹の世話をしなければならなかったからです。 さらに、小学校を卒業すると、大阪へ働きに出ました。そこでご主人と出会い、結婚しました。 やさしいご主人に漢字などを教えてもらったそうです。 そのご主人に先立たれ、子どもさんも独立して一人暮らしをするようになりました。でも、だんだん年を取り、自分がいつ死んでもよいように身辺整理をはじめたのだそうです。 自分は勉強したくてもできなかったけれど、今の子どもたちにはがんばって勉強して欲しい、だから、勉強に役立ちそうな物を学校に寄付したい、そう言われました。
 トヨコさんの家の中はさっぱりと片付いて、庭も草一本もなく、きれいな花が咲いていました。
 そんなトヨコさんの日課は、1日10枚の写経なのだそうです。 そして、「般若心経は、身につけていたらきっとあなたを守ってくれるから。」と言って1枚を下さったのです。勉強したくともできなかったトヨコさんが大人になって書けるようになった般若心経ー。わたしはありがたくちょうだいしました。 わたしは無信心者で、あまり神や仏にお願いはしないほうなのですが、人の真心は信じます。


 以来、わたしは5,6年生の書写の時間には必ずこの写経を見せ、トヨコさんの話をすることにしました。勉強したくてもできなかった人がいること、そしていつまでも向上心をもって学び続けていること、意欲と努力があればこんなにすばらしい字が書けるようになること、1枚の般若心経には、たくさん伝えることがありました。 


 トヨコさん、お元気でおられるのかなあ。お会いしなくなって7年がたちます。

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余談ですが・・・・お寺カフェ

2007-10-23 00:26:25 | 旅行

 昨日ぶじこのブログで、お寺カフェについて触れていましたが、タイミング良く、今日の新聞で関連する記事を見つけました。
 今、若い女性の間で写経がはやってるんだそうです。それで東京では6日間という期間限定で「高野山カフェ」というのが開かれたんだとか。 その写経体験には行列ができるほどだったそうです。 写経もしてコーヒーなんかもいただけるんでしょうかね。  


 写経で思い出したことが二つ・・・・・


 一昨年の秋、京都は西芳寺(苔寺)の特別拝観のツアーに参加しました。 ぶじこも行きたいというので母とわたしと3人で参加です。


 さて、西芳寺は「苔寺」の名の通り、庭園が苔で覆われています。 初めて行ったのは学生時代、それも春だったと思うのですが、緑したたるその庭は息をのむ美しさでした。
 「階を 攻めビロードの 春の苔」 
 これは、高校時代の恩師が作られた句ですが、まさに階も、木々も、石も攻めて占領してしまうような苔、苔、苔。 もう一度あの苔を見たいと思っていましたが、苔寺は一般には拝観できなくなり、たしか年に2度だけ特別に拝観できるのです。
 念願の苔寺。 まず、写経をして心を静めてからお庭を拝見できます。 初めてでちょっとどきどきしたけれど、意外と簡単でした。 ちゃんと薄く下書きがあって、それを筆でなぞっていくのです。 とはいうものの、筆を持ちなれないぶじこにはなかなかの作業のようでした。 が、そこは彼女のことだからちゃっちゃと片付けて、最後に自分の住所、氏名を書きます。そこでぶじこは住所を書くところに名前を書いてしまったのです。「ああ~、どうしょうか。」と言っているのが聞こえました。 次の瞬間、ぶじこは間違えた自分の名前を墨で真っ黒に塗りつぶしてしまったのです。 すがすがしい写経の用紙が黒々とー。
ちらっとそれを見た母は笑いがとまらなくなりました。 しーんと静まりかえった写経の部屋でくすくす笑いとひそひそ声。
 二人には早々に室外にでてもらい写経を続けていると、外から二人の高笑いがわたしの所まで聞こえてきました。 (はずかしい~) 二人は外に出てからもまだ墨塗りの写経用紙を思い出して笑っていたのです。


 わたしも写経を終え、 庭園を散策しました。 春の苔ほど緑が鮮やかではありませんが、 色づき始めた紅葉の赤が映え、とてもきれいでした。


 春から夏にかけてはきっと深緑で、今とはちがった美しさでしょうね。



 まだ苔の緑も残り、木々も色づいている絶妙のタイミング。ラッキーでした。



あいにくの曇り空。 遠くを写すと色がくすんで見えますね。



 このあと、バスは「スズムシ寺」へ連れて行ってくれました。 すごい人で、なが~い行列が階段下まで続き、40分ばかり待たされました。 本堂は人、人、人。 お茶とお菓子をいただいてお説法を聞くのですが、 そこではずっとスズムシが鳴いていました。 年中鳴くように飼育方法を工夫しているのだとか。 「このように、強く願えば何でもかなう。」というのが和尚さんのお説法でした。 苔寺とスズムシ寺、同じ寺でも、全く雰囲気が違うのがおもしろかったです。


 

コメント (4)
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