【ネガティブ(後ろ向き)パワー炸裂!】中島義道の名言集~Nakajima Yoshimichi Quotations of~
人生を降りる、99%降りてしまったけど
哲学者の中島義道先生が書いた「人生を半分降りる」という本は、現役時代に買った。本の題名に惹かれたからだった。そして、いくつか中島先生の本を買ってあちこちと読んでいた。
ただし、現役時代はこれはこれで言いたい事はよくわかるが、ちょっと仕事人間としてはいかがなものかと思っていた。だから読書ノートもつけなかった。
ところがである。
昨日、古書店チェーンに本を20冊ほどウリに行って、その査定があるからちょっと店内でうろうろしていたのである。
そしたら、この本が目に飛び込んできた。いつもそうだ。欲しい本があるのではなく、向こうから飛び込んでくるのである。「買ってぇ~」って。
笑ってしまう。ホントの縁である。本の方から、飛び込んでくるのである。
あ、これ読んだっけなと思って、ちょっとだけ手にした。そしたらもうダメである。
そうなのだ。「人生を半分降りる」どころか、アタシャ「人生をほとんど降りた」という状態であるからだ。現役時代は考えもしなかった「半分降りる」ということが、事実「降りてしまった」のだから、受け取りかたが半端ではない。身に迫ってくるからだ。マジに。
「あなたはまもなく死んでしまう。だから『自分のための時間を確保せよ』。時間がいかに大切か」というようなことから書き始まっている。
これはこれは。なんという毒を持った書き出しであろうか。私も現役時代には、こういうことをチラと考えはしたが、今は、まるっきり「自分の時間だらけ」である。しかも、死んでしまうのだからという理由がサラッと書かれていて、それが書き出しになっているのだ。
また、「一花咲かせたい」とも思わないことだとも書かれている。人生を半分降りて、「何をすべきか?」ではなくて「何をすべきでないか?」の問いの方が大事だとも。こちらも切実な問題である。一花咲かせようとしたからだ。大学院博士後期課程に入って、学位を取ってみたいと思ったのが大間違いであったからである。笑ってしまうけれども。まったくまったくその通りである。
仕事なんて、その人でなくてもいっこうに構わないものだとも続けて書かれていた。確かにそうである。オレがいないと会社は組織は動かないとか、考えないことだとも書かれていた。その人が会社や組織から降りたら、誰か他のヒトがやるだけであるとも。
つまり、そんな誰でもできるような雑事に追われて、人生の無駄遣いをしちゃならんというわけだ。中島先生なら新学科のプランだとか(そうなのだ、大学の先生だから)、学会の編集委員会とかの雑事を捨てることだとのたもう。学者だから。中島先生は。
なにが成果主義だ?という中島先生のせせら笑いが聞こえてきそうだよん。
もっとずきりとなったのが、「公職から離れよ」という文章である。昨日、副区長になってくれないかと言われて即座にお断りしたが、断っておいて良かった。権力から、公職から離れて生活して、なるべく遠くにいればいいと言うのである。確かに一理ある。
今の現役時代の地位というのは、生活のため、能力発揮のため、他人を支配する道具、他人から尊敬される場としてある。そうも書いてある。組織にとって、あなたは絶体に必要な人間では無いのであるとも。これもまた然りである。
「もうじき死んじゃう」のに、なにを血迷っているのだろうという警告であろう。80,90の老人たちが、20年後の大学問題や、人口減少を憂いているのと一緒である。今、目の前に展開していることが永遠に続くと思っているからだ。大問題だけ論じていてもそんなことはなんの価値もない。現実に立脚していないのだから、話にならない。日常生活から目を離して、さも大学者ぶって大問題だけ考え論じていたら、それで終わりである。人間が終わってしまう。
それに、学者先生たちの書いている論文についても大笑いをした。
論文なんて誰も読まないだろうに、と書かれていたからである。
これはこれはなるほどである。さらに自己満足でしかないとも書かれている。つまり「理性の自己批判」をやめたらアカンということである。
偉い学者や芸術家というのは、ハラの底から、自分だけ優れていると思っておられる。間違いない。体験上。「センセ、センセ」と言われるから、言い続けられるから、自己評価が高くなってしまう。
しかし、一見謙虚そうに見える輩もいる。世界の偉人や、大哲学者と比較したら、アタクシなんぞまだまだだとのたもう方々である。そこに「向上心」を持つのだろうが、決してそんなことを信じちゃいけない。
遠藤周作だって、のろまで、醜男で、要領が悪くて、ナマケモノでと書いている。ユーモアエッセイで。しかし、正直に受け取ってはならない。あくびをしているフリをしながら、じっと他人のすること・考えることを観察しているのかもしれないからだ。
どんな学者も自分のやっていることの「虚しさ」を考えていないという中島先生の指摘にも思わず賛成してしまった。
専門バカと揶揄されるように、学者というのは一つのことにこだわって、人生を終わる。そういうのを専門バカというのであるが、気がついていないことがある。それは、一生をかけた研究は、ゴミのようなものだということである。死ぬや否や、忽ち忘れられてしまうものでしかない。小説だってそうだったではないか。残っている作家とか、作品は実に乏しい。あれだけ売れた松本清張だって、今はなかなか売れない。あるいは丹羽文雄にいたっては、誰も読まないだろう。そういう作家は多い。
ただの名だけである。しかも誰も読まない。生きているうちには、師匠だから、弟子だからということで仕方無しに読む可能性はある。誰も読まない膨大な論文を必死になって生産していることこそ虚しいものである。
本人にとってはとても大切な論文も、ほとんど誰も読まないのである。これは私もそうだ。いくら書いても家族すら読んでくれない。あ、そう。それで終わりである。ご苦労様もない。言ってもらえない。
もっとも先人たちの書いた膨大な論文を隅から隅まで入手して読んでいたら、それこそそれだけで一生が終わってしまう。
さらに、論文を書くためだけの読書はアタマを悪くする。
「~~~について」というような、あるいは「妖怪の~~~について」なんていうような大論文を書くために、参考資料として読書すると、論文はたいてい二流・三流の論文であって、ゴミである。しかも、オノレの論文は大論文であるという自負があるから、次から次へと読まなくちゃならない。
殆どの論文というのは、「まとめ仕事」にすぎない。これは大学や大学院での学習もそうだろう。自分だけが発見した真理だとは間違っても言えないだろうから。いろいろな参考文献や、他人の書いた論文を読んで「まとめ仕事」をしているだけである。そういうのを虚しいと中島先生は言っているのである。
しかも、有名にも金持ちにもなれない。世間的には大学の教授と言っても無名である。一部ブランド大学の教授を除いては(こっちも最近はかなり怪しいけど)。だから、世間的には無名であるからこそ、名誉を求めるわけである。そして壮絶なる戦いをすることになる。この戦いは、自分が狭い仲間たちの中でいかにエライかということを示す実に簡単な戦いである。自分がいかにいい仕事をしているか、自分が狭い業界でいかに認められているか、他人を貶めてそれでもって自分を引き上げることが最重要課題になるわけである。そういえば、学部時代も修士のときにもそういうのがいたっけな。学生や院生で。私の得点をやたら聞き出したがるのが。比較するわけだ。そして一人悦に入っているわけだ。なにしろ、こっちは出来が悪いことにかけては天下一品であるからだ。だったら私なんか相手にしないで、自分だけエライと思っていればいいのにと思うケドねぇ。マジに。
ま、どうでもいいような話ではある。こっちは、99%人生を降りてしまったからだ。
こっちは惚け防止のためにこのブログの記事を書いているだけだから。惚けを比較して、あっちのジジよりも、こっちのババよりもオレの方がまだ惚けてねぇ~ぞ!なんてやっていたって、虚しいだけだからなぁ・・・・トホホ。
じゃ、これにて(^_^)ノ""""
作家論がおもしろくないのは、作品そのものに迫らないからだ。作家のいちばんいいものは作品の中にある。作家自身がどんな人間であろうが、作品に結実したものに価値がある。それを知らない人は、作品そのものを読まずに、作家の周辺へと目を拡散していく。そこから得られるものは常に二次的なものだ。
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