学年だより「学ぶ力」
学ぶ力を身につければ、学力は自然に身に付く。
というより「学ぶ力」をこそ「学力」とよぶべきであろう。
模試の偏差値が上がると「学力」がついたと判断されることも多いけれど、試験問題を解く力は、学力の一部に過ぎない。
定期考査の問題や、模試の問題を解く力そのものは、社会人になってから仕事の現場で使える力ではない。
だからと言って、今の勉強が将来役に立たないというのでは、もちろんない。
学校の勉強に一生懸命取り組むことによって身に付く、勉強への姿勢や、勉強の方法論が大切なのだ。
この世の中で自立して生きていこうとするなら、大人になっても学ぶことは求められる。
むしろ世の中に出てからの方が、いろんなことを学ばなければならないくらいだ。
自分で学ぶことのできる人間になるために、みなさんは今修行中なのだ。
~ 学ぶ力には三つの条件があります。第一は自分自身に対する不全感。自分は非力で、無知で、まだまだ多くのものが欠けている。だからこの欠如を埋めなくてはならない、という飢餓感を持つこと。
第二は、その欠如を埋めてくれる「メンター(先達)」を探し当てられる能力です。メンターは身近な人でもいいし、外国人でも。故人でも、本や映画の中の人でもいい。生涯にわたる師ではなく、ただある場所から別の場所に案内してくれるだけの「渡し守」のような人でもいいのです。自分を一歩先に連れて行ってくれる人は全て大切なメンターです。
第三が、素直な気持ち。メンターを「教える気にさせる」力です。オープンマインドと言ってもいいし、もっと平たく「愛嬌」と言ってもいい。
以上、この三つの条件をまとめると「学びたいことがあります。教えてください。お願いします」という文になります。これがマジックワードです。これをさらっと口に出せる人はどこまでも成長することができる。この言葉を惜しむ人は学ぶことができないのです。学ぶ力には年齢も社会的地位も関係がありません。みなさんも、いつまでも学ぶ力を持ち続けてください。(内田樹「キャリアの扉にドアノブはない④」朝日新聞) ~
「こんにちは」「お願いします」は、単なる儀礼的あいさつではない。
そのように元気に声に出すところから、みなさんの学びが始まっているのだ。