水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

帰ってきたヒトラー

2016年07月21日 | 演奏会・映画など

 

 アドルフ・ヒトラーが、2014年にタイムスリップしてくるという設定の作品。
 主人公が、信長や芳山和子なら定演二部のお芝居にできるが、ヒトラーではちょっと尻込みする。
 日本なら誰に該当するだろう。あえて言えば東条英機か。まさか昭和天皇に登場していただく作品はつくれまい。
 ていうか、ドイツではどう受け止められたのか。
 ヒトラー役を演じた役者さんは、大丈夫だったのか。
 主人公が、ネオナチにおそわれるシーンがあったが、実際にそんな目にあわなかったのかと心配になる。

 途中で、たぶん本当に一般人にインタビューしたり、反応をうかがったりするシーンがある。
 顔にぼかしがかかっている人は、たぶんエキストラじゃなくて、純粋な一般人なのだろう。
 実在の政治家も、そのまま登場する。無断で使われている映像ではないのなら、メルケル首相も許可を出したということだが、けっこうブラックな扱いで驚く。
 たとえばメルケル首相をさして、「今、我が国は、迫力あるデブ女の指揮下にあるようだ」と評する場面があるのだが、我が日本では、このレベルでさえ、作り手が自己規制してしまうのではないか。
 そうでなければ自民党にチェックにあうか。
 また、なんでもかんでも「差別」とか「不謹慎」とか騒ぐ、微弱な頭脳しかもたない人々が増えてきた今の日本においては … 。
 
 タイムスリップしたらしきことを自覚すると、とまどいながらも現状を分析し、自分に何ができるかを考えるヒトラー。すぐにネットやテレビの影響力にきづくところは、さすがプロパガンダの天才だ。
 もちろん、周囲の人々はモノマネ芸人さんだと理解している。
 しかし、「素」にもどることのないヒトラーの「ネタ」つまり演説を聞きながら、本気で共感していく人が増え、彼が出演するテレビ番組は驚異的な視聴率をあげる。
 何せ本物だから、発言にブレがない。
 それほど人々は簡単に熱狂する。情報のあふれた現代においてさえ。
 この時点で、東京都知事選など圧勝するだろう。
 数十年前、人々がわたしをリーダーとして選んだのだという彼の言葉は、まさのそのとおりだったのではないか。

 根本的にはコメディだ。
 今の時代に本当のヒトラーがきてしまったら、こんな騒動がおこるだろうというリアル感があり、ヒトラー本人が真面目であればあるほど、笑ってしまう。
 テレビをみながら、こんな低俗な番組をなぜ放映しているのだ! ゲッペルスをよべと怒りまくる姿に笑ってしまうものの、怒るのも当然だよねと納得する。
 ユダヤ人の血をたやさねばならないという彼の思想と、「移民は出ていけ!」と排斥する現代人の姿とが重なってくるし、アメリカの新しい指導者の言葉も、日本のある集団の姿も投影されてくる。 
 ほんとにおもしろいのだけど、おそろしい映画だ。
  こういう映画こそ、たとえば学年全員で観て、話し合ったりするのが一番の政治教育になる。

コメント
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