水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

未来

2020年08月25日 | 学年だよりなど
  3学年だより「未来」


 シロアリやスズメバチの巣は、設計図にもとづいて作られているわけではない。
 彼らは、こんな巣を完成させたいとうイメージをもっているわけではなく、遺伝子レベルで与えられている情報に基づいて行動しているうちに、結果としてあの巨大な巣を作り上げるという。
 逆に人間は、自分の住む家の作り方情報を、遺伝子レベルではもっていない。
 人が何をどう作ることになるのかは、生まれてから身につけた知識や情報に規定される。
 決められた未来に向かって生かされるのではなく、自分で未来を作っていけるのが人間だと言うことができる。
 その人の未来は、どれくらいの知識や情報を得ることができるか、つまりどれだけ勉強することができるかにかかっていると言えるだろう。
 今も、学校で学ぶことができない子ども達が世界中にはたくさんいる。
 貧困であったり、内戦であったり、その原因は様々だが、勉強できない辛さとは、未来を描けない悲しさだ。そういう環境の子ども達からは、感染症対策で制限があるとはいえ、日本の学生は夢のようなものに見えるだろう。


~ 追い詰められた時、勉強する人と勉強しない人に分かれます。
  自分の未来を信じる人は、勉強します。
  自分の未来を信じない人は、勉強しません。
  自分に、誇りを持ち続けている人は勉強します。
  自分の誇りを、捨ててしまった人は、勉強しません。
 (中谷)塾に勉強に来ている人は、自分の未来を信じている人です。
  どんな状況でも、自分に誇りを持ち続けている人です。 (「中谷彰宏公式サイト」より) ~


 今でもときどき思い出すのは、2011年3月11日の夜だ。
 地震がおきたとき、河合塾の新宿校舎付近にいた。参加する予定だった教員研修会は中止になったが、帰宅するための交通手段はなく、河合塾さんで一晩過ごさせてもらった。
 そこには同じように帰れなくなった学生さんもいた。「明日の試験どうなるのかな」と話している生徒さんは、翌日の国立後期試験の勉強に来ていたのだった。
 結局後期試験を実施しなかった大学も多く、その場合はセンターの結果で合否が判断されることになった。センターで思うような点がとれず、後期で挽回しようとしていた受験生は、その場を与えられなかった。結果として浪人生となった子たちは、だから、自分自身の受験と震災とが不可分の経験となって体にしみつく。
 その年の夏、駿台の霜栄先生から、「今年の浪人生は、例年よりしっかりしている」というお話を伺った。
「自分の受験と震災とが、一つの経験として結びついていて、受験生として過ごせることに感謝する気持ちを持っているからではないだろうか」と。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする